じじぃの「科学・芸術_816_世界の文書・世界最初のウェブサイト」

30 Years of the World Wide Web: Is the open internet in danger? | DW News

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SAivk3Uy2kc

Tim Berners, the then CERN scientist

『図説 世界を変えた100の文書(ドキュメント):易経からウィキリークスまで』

スコット・クリスチャンソン/著、松田和也/訳 創元社 2018年発行

世界最初のウェブサイト (1991年) より

スイスにある、ヨーロッパでも有数の素粒子物理学研究所本部の務める若き英国人コンピュータ・ソフトウェア・コンサルタントとその同僚たちが、世界初の「ウェブサイト」を立ち上げた。ワールド・ワイド・ウェブという生まれたばかりのコンセプトを懐疑家たちに納得させるためだ――だが、彼らの草創期のディジタル文書を、後世のために復刻することはできるのか?

1989年、ジュネーブ郊外にある欧州原子核研究機構(CERN)に務める若き英国人コンピュータ・ソフトウェア・コンサルタントが、ENQUIREと呼ばれるプロジェクトのためのアイデア開発の許可を得た。これは全世界に散らばる研究科学者たちの間での大規模な自動データ共有を容易にするもので、「ハイパーテキスト」「ハイパーリンク」という未来的コンセプトに基づいていた。CERNの表向きの目的は、ヨーロッパの21ヵ国及びイスラエルのために世界最大の素粒子物理学研究所を運営することであったが、この世界的な研究機構はまた、データ共有技術において幾つかの画期的な活動も行なっていた。
バーナーズ=リーは自らの新たなアイデアを「ワールド・ワイド・ウェブ」すなわちW3と呼んだ。これは「広域ハイパーメディア情報取得の取り組みであり、広大な資料文書の世界へ、世界どこからでもアクセスできることを目指している」。彼とベルギー人の同僚ロバート・カイリューはNeXTコンピュータとルータを含むCERNの設備を利用し、インターネットを通じて彼らが「ウェブサイト」と呼ぶものを創り出した。CERNのウェブサイトは1991年にインターネットに接続された。そこにはウェブの基本的な特徴が記され、他のメンバーの文書にアクセスする方法と、新メンバーが自分自身のサーバを立ち上げる方法をユーザに報せていた。このオリジナルのNeXTワークステーション――は今もCERNにあり、何兆億というウェブサイトを持つワールド・ワイド・ウェブは津々浦々にある。
その先は、もはや歴史の話である。ただし、バーナーズ=リーと同僚たちはその初期のウェブページの記録を取っていなかったので、これらの興味深い歴史の数頁は失われてしまった。だがCERNのチームは、最初期のオリジナルのウェブページを初めとする記念物を復元する試みを行なっている。ウェブの誕生と関係したディジタル資産の保存の試みの一環である。「先ず手始めに」と同プロジェクトは言う――
  われわれは最初のURLを復元したい――遡りうる最初のイタレ―ションの場にあったファイルを取り戻したいのだ。それから、CERNにおける最初のウェブサーバを見て、そこから保存と共有可能な資産を見る。また、ドキュメンテーションを取捨選択し、当時のままのマシン名とIPアドレスを回復させたい。それから、われわれは http://info.cern.ch――最初のウェブアドレス――を、将来の世代のためにウェブの始まりの物語を再現する参照先としたい。
1993年、CERNは世界中のコンピュータ・ユーザーを喜ばせた。ワールド・ワイド・ウェブの発明に関わる全ての知的所有権を放棄したのだ。それによってパブリック・ドメインのソフトウェアが誰にでも無料で使えるようになった。