じじぃの「科学・芸術_804_大図鑑・火の利用」

The story of Ateret (Chastellet), a crusader fortress at Gesher Benot Yaakov in Israel

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=WILzMa-zIt0

Gesher Benot Ya’aqov.

Vestonicka venuse

『ビッグヒストリー大図鑑:宇宙と人類 138億年の物語』

デイヴィッド・クリスチャン/監修、ビッグヒストリー・インスティテュート/協力、オフィス宮崎/日本語版編集 河出書房新社 2017年発行

火の利用 より

火を使うのは人間に特有の能力であり、ヒト属の進化に欠かせない重要な原動力でもあった。しかし、人類は火を十分に制御できるようになったのは、進化も後期に入った比較的最近のことにすぎない。
火を使った最古の形跡は、南アフリカのワンダーワーク洞窟にある。約100万年前の堆積物を詳しく分析すると、洞窟の奥深くで骨や植物が焼かれたことがわかぅた。ただし、初期の人類は、例えば落雷などの自然現象による火災を利用していた可能性がある。火を上手に制御して繰り返し使用できるようになったのは約80万年前で、イスラエルのジスルバノトヤコブにその形跡が見られる。ここでは10万年にわたって何かを焼く行為が繰り返されていて、ここに住んでいたホモ・エレクトスが火をおこし、その火を絶やさないようにしていたことがわかる。
40万年前以降の遺跡では、灰や炭、焼けた骨などが何層にも重なって見つかることが多く、これは火が常用されていたことを示すものだ。そのころ、ヨーロッパではネアンデルタール人が出現し、初めて物を作るため火を使ったと見られている。イタリアのカンピテッロ遺跡(約30万年前)では、カバノキの樹皮のタールが塗られた石器が見つかったが、このタールは複数の部品からなる道具を組み立てるのに接着剤として使用されていた。
火の使い方に精通したことで、社会生活にも変化が訪れた。20万年前には住居の中心に火がたかれるようになり、この環境が言語の発達に大きな役割を果たしたと思われる。焚き火のおかげで洞窟内が明るくなり、そのそばで手作業ができるようになるが、細かい作業をするには十分な明るさではなかった。そのため、会話や物語りの機会が増えたのである、また、調理が初めて行われたのは約80万年前で、これらも火の利用の一例である。
約3万5000年前から5000年の間、東ヨーロッパでは粘土を焼いて動物や人間の小像が作られ、2万年前の中国で最古の土器が作られた。それ以降も火は多くの新技術をもたらし、特に人類が狩猟採集生活から脱するのに大きな役割を果たした。

カバノキからタールを作る

カバノキの樹皮タールは旧石器時代以降、接薬剤として使われた。最初に作ったのはネアンデルタール人で、その製法は、カバノキの樹皮を温度を管理しながら数時間「加熱」するというものだ。次に溶けたタールを集めて冷やす。すると固くなるので、複数の部品からなる道具を組み立てるとき、継ぎ目にパテのように詰めて使う。

粘土の小立象

焼き物の像として最も古いクロアチアで発見された「ドルニー・ヴェストニツェ・ヴィーナス」。約2万9000年~2万5000年前に作られたもので、作者が火の効果を試してみたことを示す証拠である。

土器

日本の縄文人が作ったこの壺のような土器は、調理や食料の保存に大いに役に立つ。農耕生活が始まると穀物やその他の食料を入れる頑丈な容器が必要になり、土器の生産は各地に普及した。