じじぃの「科学・芸術_652_日本人のルーツ・ミトコンドリアDNA」

未来を創る科学者達 (6)遺伝子に隠された日本人の起源 〜篠田謙一〜 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bdLJquxFdvQ
人類の移動 (juqcho.jp HPより)

又吉直樹のヘウレーカ!「僕はどこからきたのですか?」 2018年10月31日 NHK Eテレ
【出演】又吉直樹 【解説】篠田謙一(国立科学博物館研究主幹)、坂上和弘(国立科学博物館 人類研究部)
21世紀に入り、ゲノム解析が進んだことで私たちのルーツが一気に解明されてきた。古い人骨からも一部を削ってDNAを調べるとルーツがわかるようになっている。
最近では、都内のキリシタン屋敷で見つかった人骨が、イタリア人で迫害を受けていた宣教師のものだと判明。研究にあたる篠田さんは、DNAを調べていくと、世界各地の人々は結局つながっていて、国や民族などで分けることができないと語る。
又吉の父は沖縄、母は奄美大島出身だが、祖父母や曾祖父母の出身やルーツはどこにあるのか――。今回、又吉のだ液から採取したDNAから、先祖がアフリカからどういうルートでやってきたのかがわかるというが、いったいどこを旅してきたのか?
通常の遺伝子が父母両方の性質を受け継いでいるのに対して、ミトコンドリアDNAは母親からの性質だけしか伝えない。
日本人に特徴的なミトコンドリアDNAから琉球諸島アイヌに比率が高く本州で比率が少なくなるという分布になっている。日本人はタイやチベット人のDNAを多く受け継いでいるという。
http://www4.nhk.or.jp/heureka/x/2018-10-31/31/21748/1426022/
『ゲノムが語る人類全史』 アダム・ラザフォード/著、垂水雄二/訳 文藝春秋 2017年発行
現世人類とネアンデルタール人の共通祖先 より
ネアンデルタール人の解剖的形態は、侵入者であるホモ・サピエンスと、見た目でも異なっていた。脳容量は、古人類学において重要な計測量の1つであるが、ネアンデルタール人じんはヒトよりも大きな脳をもっていた。現世人類の男の平均脳容量は1400ccで、女はそれよりほんの少し小さい。一方、ネアンデルタール人は1200〜1700ccの範囲である。この脳函の容量は、知的能力と特別に相関づけられるようなものではないが、一般的に類人猿では、大きな脳は高い知能を意味する。
     ・
遺骸の乏しさのゆえに、ホモ・ネアンデルタール人ホモ・サピエンスの進化的な関係については長らく論争が続いている。現代ヨーロッパ人の直接の祖先だという説から、現存する子孫を残さず、進化の系統樹におけるまったく異なった枝に位置するものだという説まで、ありとあらゆる仮説が長年にわたって提示されてきた。私たちと彼らのあいだの最後の共通祖先は、現在からおよそ60万年前に存在したと考えられている。
スヴァンテ・ペーポたちによるネアンデルタール人1号の腕の骨の調査は、この問いに答えるための第一歩だった。彼らは、細心に処理された骨から0.4グラム(一つまみ文の潮の重さ)の物質を抽出し、そこからミトコンドリアDNAの断片を取りだした。これは、1997年では、それまで回収されたなかではもっとも古いDNAだった。
最初の研究はもっぱら、それが可能であり、抽出されたDNAに混入物がないことを示すことに向けられていた。映画『ジュラシック・パーク』とその続編は、1990年代に記録破りの大ヒットを収め、そてによってずっと以前に絶滅した種からDNAを回収するというアイデアは、私たちの文化的な意識のなかにきわめてはっきりと刻まれた。だが、現実は、いつものことながら、映画のストーリーのような段階には達していない。DNAは、小さな断片に細切れになってはなはだしく痛んでおり、まるでよれよれになった本から回収されたボロボロの紙切れのようになっていた。これらの骨は、わずか4万年前のもので、『ジュラシック・パーク』の6500万年以上前から復活した恐竜とは比べものにならないほど新しいものだが、すでに、ものすごくいい状態とはいえなくなっていた。
ペーポたちのチームがともかくも何かを引っぱり出すことができたという事実は、ヒトゲノム計画の陰で登場しつつあった遺伝学者たちの新技術の証である。これは、まったく先例のないやり方で過去を解読し、復元することへの第一歩だった。
それが第1に語ったのは、ネアンデルタール人人から引き出したミトコンドリアDNAは、すべての現世人類のミトコンドリアDNAと異なるということだった。分析されたDNAの塩基配列の違いからかなり確実に言えるのは、彼らのゲノムのこの部分が、すべての現生人類の共通祖先が出現するずっと以前に、そこにつながる系統から分かれていたということである。DNAは時間とともに、ゆっくりと時を刻む時計のように、比較的予測可能な形で変化する。したがって、よく似てはいるが異なる2つの塩基配列をとりあげて、両者がどれくらい昔に分岐したかを推計することができる。この手法は完全ではないが、長い時間幅でみれば有効である。