じじぃの「科学・芸術_620_絵本『空の飛びかた』」

Learning to Fly 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=eXpWBNFdEC8

Lecon de vol - Sebastian Meschenmoser Le blog des livres
http://cottagetreasure.blogspot.com/2010/05/lecon-de-vol-sebastian-meschenmoser.html
空の飛びかた ゼバスティアン・メッシェンモーザー (著)、関口裕昭(訳) 2009/5 Amazon
ある日、散歩の途中、わたしは1羽のペンギンにひょっこり出くわした。
空から落っこちたんだよ、とやつは言った。でも、ペンギンが―やつはどうみてもペンギンだった―飛べないことぐらい、わたしだって知っていた。ペンギン空を飛ぶ。

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『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』 金原瑞人ひこ・田中/著 西村書店 2018年発行
『空の飛びかた』 ある日空から落ちてきたペンギンと、1人の男の話 ゼバスティアン・メッシェンモーザー (作)、関口裕昭(訳) より
ペンギンが飛べないことぐらい、小さな子どもでも知っています。でもある日男が出会ったペンギンは、自分なら飛べると信じていました。その日からペンギンと男の飛行計画が始まります。
航空力学に耐久能力のテスト、一緒に体操し、専門書で勉強し、いざ飛行練習。そして失敗、失敗、失敗……。見事に失敗の連続ですが、みすぼらしくしょげているペンギンや、頭から墜落してクッションに埋もれているペンギンの絵が妙に可愛くておかしくも感じます。
この絵本の魅力の1つは、そんな哀愁漂うペンギンの姿や大真面目にそれに付き合う男の姿の「ユーモラスさ」だと言うと、ひねくれていると思われるかもしれません。だけどこの「おかしみ」がわかるなら、かなり大人に近い感覚をお持ちだと言えるでしょう。
空を飛ぶためにあらゆる手段を試し、失敗し、挑戦してはまた失敗している、そんな彼らの姿がうっすらと感じとれることがあります。
人生はそう、失敗と試行錯誤の連続。
そしてときにはあきらめも肝心。
そう思うでしょ?
そこまで理解できるならなおいっそうこの絵本を最後まで読んでください。
そして思い出して、ペンギンが空から落ちたのは、自分はやっぱり飛ぶようにはできていない、という考えが頭をもたげたからなのです。自分を信じないものは飛べない。
常識にとらわれず、そこを超えていくこと。大人の階段も半分以上登って通りすぎたぐらい大人に近いYAに読んでほしい。この本のもう1つの魅力です。
                       (奥野菜緒子)