じじぃの「科学・芸術_618_絵本『百年の家』」

Roberto Innocenti 動画 YouTube
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百年の家 (講談社の翻訳絵本) ロベルト・インノチェンティ(絵)、J.パトリック・ルイス (作)、長田弘(訳) 2010/3 Amazon
一軒の古い家が自分史を語るように1900年からの歳月を繙きます。静かにそこにある家は、人々が一日一日を紡いでいき、その月日の積み重ねが百年の歴史をつくるということを伝えます。
自然豊かななかで、作物を育てる人々と共にある家。幸せな結婚を、また家族の悲しみを見守る家。やがて訪れる大きな戦争に傷を受けながら生き延びる家。そうして、古い家と共に生きた大切な人の死の瞬間に、ただ黙って立ち会う家。ページをめくることに人間の生きる力が深く感じられる傑作絵本がここに…。人が家に命を吹き込み、家が家族を見守る。家と人が織りなす百年の歳月。

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『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』 金原瑞人ひこ・田中/著 西村書店 2018年発行
『百年の家』 同じ角度から描き続けられた家。百年は長い? 短い? ロベルト・インノチェンティ(絵)、J.パトリック・ルイス (作)、長田弘(訳) より
1656年に建てられた家がいつしか廃屋となり、約2世紀半が過ぎた1900年、たまたまキノコ狩りにきた人々に見いだされるところから、物語は始まる。
家は修繕され、そこで暮らす人々を見続ける。ブドウ畑ができ、家の娘は結婚し、新しい命が生まれる。2度の大戦、夫の戦死、子どもたちの成長。そのあいだにブドウはブドウ酒ができるほど実をつけるようになり、小麦畑もできる。家自身も何度も修繕を繰り返し、少しずつ姿を変えていく。人々の服装や交通手段が変わっていくさまも、絵から読み取ることができる。やがて、子どもたちは都会へ出ていき、その頃から、家はまた少しずつ荒れていく。ブドウは育たなくなり、かつての畑を野性の猪が走り回る。そして1999年、ブルドーザーがやってきて……。そのあとどうなったかは、ぜひ自分に目で見届けてほしい。
画家は、まったく同じ場所を同じ角度から描き続けることで、人間の暮らしぶりがどれだけ変わったのか、何を得て何を失ったのかを教えてくれる。皆さんは百年を短いと思うのだろうか、長いと思うのだろうか。
                         (三辺律子