じじぃの「科学・芸術_476_ことわざ・毒をもって毒を制す」

Rough-skinned newt - Taricha granulosa 動画 YuTube
https://www.youtube.com/watch?v=aTeNsgcQi6Q
猛毒トカゲを食べるヘビ

『問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール』 読書猿/著 フォレスト出版 2017年発行
先延ばしの善用 より
一方で、先延ばし・ぐずぐず主義の克服を動機づけるためとはいえ、先延ばしがいかにひどい結果をもたらすかを述べ立てる強迫めいた解説は、むしろ不安を高め、先延ばし克服を先延ばしさせて、悪循環を余計に悪化させる恐れもある。
そこで、先延ばしを克服ではなく人間の「仕様」として受け入れ、利用するアプローチを紹介しよう。
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(重要な作業を先延ばしして重要度の低い別の作業をしてしまう)という習性を逆手に取ることで、仕事の生産性を高めるだけでなく、それまで着手されなかった仕事を片づけてしまうのである。
つまり最重要な仕事の先延ばしによって、それ以外の仕事の先延ばしをちゃっかり克服している。
毒をもって毒を制す方法だが、このユーモラスな逆説アプローチは、症状処方にも通じるものである。
重要なことを先延ばしにして あえて普段しないことをする人間の仕様
先延ばし≠何もしない。

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『増補 へんな毒 すごい毒』 田中真知/著 ちくま文庫 2016年発行
文庫本あとがき――なぜ、人は毒に魅せられるのか? より
「毒」という言葉には恐ろしさと同時に人を魅する響きがある。「オペラの毒にやられた」という言い方もあるように、人間でも芸術でも、適度な毒は深みや魅力につながると考えられている。芸術家の岡本太郎は「自分の中に毒を持て」といった。毒は既成の常識の枠を破壊し、世界の新しい見方を切りひらいてくれる。反対に「毒にも薬にもならない」という言葉は、刺激に欠けて、面白みのないことだ。
これは生物の世界にも、あてはまるかもしれない。酸素や紫外線に始まり、毒をいかに克服するかということが、生物を進化させ、多様化を促し、環境に変化をもたらす大きな要因の1つだったからだ。毒とは生命を脅かすものでありながら、結果的に生命の飛躍をもたらす原動力となった。
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生物にとって進化とは、生きのびる確率を高めるためのものだ。特に食物連鎖の再開にいる植物にとって毒を持つことは生きのびられるチャンスを高めるために不可欠の進化だった。ところが捕食者のほうも、生きていくためには食べないわけにはいかないので、その毒に適応するような進化を遂げる。すると、「これはたいへん」と食べられる側はさらに強力な毒をつくりだす。このようなはてしない応酬が、生物の世界に華麗なまでの多様性をもたらした。
ときには、そこからとんでもなく強い毒が生まれる。北アメリカの森林や湿地にすむサメハダイモリは1匹で人間の大人17人を殺せるほどの猛毒を持つ。マウスならば2万5000匹を殺せる計算になる。
これほどの猛毒がどうして必要なのか。それは同じ地域にニシガーターヘビという天敵がいるからである。ニシガーターヘビはありふれた無毒のヘビだが、猛毒のサメハダイモリを食べても死なない。サメハダイモリを食べたニシガーターヘビは数時間は動けなくなるが、そのあとは回復してしまうという。そこでサメハダイモリはさらに強い毒を開発する。すると、ニシガーターヘビのほうもそれに対する防御システムを開発する。そうした共進化も果てに、サメハダイモリは極端なほどの猛毒を持つようになったと考えられている。