じじぃの「科学・芸術_473_古代インド・バラモン教」

Ancient India 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Mw3mYH1zTvc
自然信仰 ヤクシー(女神)

バラモン教 世界史の窓
インドのアーリヤ人社会に生まれた原始的多神教。インド社会に定着し後のヒンドゥー教の母胎となる。
アーリヤ人の自然崇拝から起こった多神教で、『ヴェーダ』を聖典として成立した。アーリヤ人がインドを征服する過程で生じた身分制度であるヴァルナ制と、それを基本に形成された多数のジャーティから成るカースト社会とむすびついている。祭祀を司るバラモンの権威が強く、しだいに形式的になり、前5世紀頃から改革運動が起こり、ウパニシャッド哲学という独自のインド思想が生まれる。またバラモン教の形式化を批判して、仏教やジャイナ教がおこるが、民衆の日常生活の中ではなおもバラモンの教えは存続し、後のヒンドゥー教につながっていく。
https://www.y-history.net/appendix/wh0201-026.html
NHKスペシャル 四大文明[インダス』 近藤英夫/著 NHK出版 2000年発行
インダス文明以降の南アジア より
インダス文明は前2000年頃から前1700年頃にかけて、衰退あるいは解体していく。衰退の意味は都市が消滅する点にあり、解体の意味は急進的な都市が失われた結果、地域文化へと別れていく点にある。都市の消滅は広範な地域統合の消滅を意味し、都市文明たるインダス文明の最大の特徴が失われたことを示している。一方、地域文化の成立は、地域統合が崩壊すり一方で、各地で新たな文化の形成が活発化したことをあらわしている。
一方、インダス文明の衰退後、南アジアの動向に大きな影響を与えたと考えられてきたのが、インド・アーリア語族である。そもそもインド・アーリア語族とは、黒海からカスピ海を原郷としたインド・ヨーロッパ語族の一分派であるインド・イラン語族から、さらに分派して南アジアへ移入してきた言語集団である。北インドを中心としたサンスクリット文化や南アジア全域に影響を及ぼすヒンドゥー文化の根幹をなしており、インド文明の形成を考えるうえで欠かすことのできない存在である。
彼らはいつ南アジアに移住してきたのか。この問題に関しては、言語学歴史学・考古学を含めた諸々の観点から検討されてきた。インド・アーリア語族が残したヴェーダ文献類の中で最古に位置づけられる『リグ・ヴェーダ』の編纂年代を前1200年頃において、それに先行する前1500年頃をインド・アーリア語族の移住時期にあてる見解が一般的であったが、近年はそれをさかのぼる時期に南アジアに彼らが存在していた可能性を示唆する考古資料が得られている。さらには、インダス文明盛期の段階にすでにインダス川西側のヤン額地帯に居住していたとする考えすらある。
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それでは、北インドにおいて早くも都市化・国家形成をもたらした要因は何であったろうか。それにはさまざまな要因が絡み合っているが、1つには前1500年以降、インド・アーリア語族を含めて、人々の移住が活発化してそれまで未開発であった地域を開墾、居住地化していったことが大きな要因となっている。人々が頻繁に移住を繰り返すことによって、異なる地域の文化要素が接触し互いに影響を及ぼすようになると、1つの文化へと収斂・統合をめざすようになる。また、社会・政治あるいは経済といったさまざまな分野で統合が進むと、社会は複雑化し、秩序化へと向かう。それが都市化であり、国家形成の本質をなすものであると考えられる。
北インドは当時森林によって覆われていたが、鉄器の導入が進むことによって開発が容易になった。一方で、河川が著しく発達し、山地などの地理的障害がない北インドでは、人の移動が比較的容易であるという利点もある。開発地では小麦と稲を主体とした二期作が行なわれることによって、食料生産も増大したことであろう。こうした要因が複雑に絡み合って北インド社会派統合へと歩を進めることになったのである。
インド・アーリア語族がもたらしたヴェーダ聖典とするバラモン教は、長期間にわたって北インド土着の宗教観念と融合することにより、より広い範囲に普及していくことになる。ヤクシャ・ヤクシーといった自然崇拝から発生した神格はまさに北インド土着の宗教観念に由来するものであるが、それは仏教・ジャイナ教あるいはバラモン教(後世にヒンドゥー教として発達)に取り込まれている。そこには宗教の厳密な狭義の差異を超えたインド通有の宗教観念とでもいうべきものが通底しており、インド世界の重要な構成要素として存在している。
こうした社会・文化的な統合のプロセスは、インダス文明の解体後に生じたものであり、前1000年代の北インドの都市化の時期を通じて徐々に進行したものであった。