じじぃの「科学・芸術_454_外来種・ミナミオオガシラ(ヘビ)」

Brown Tree Snake Guam 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3_dNFZOkEHA
ミナミオオガシラ

ザ!世界仰天ニュース 「東洋のガラパゴスの危機」 2011/06/01 日本テレビ
外来生物の脅威/東洋のガラパゴスの危機/人と海が起こした奇跡/消える巨大湖/食肉偽装・・・衝撃の手口/なりすまされた悲劇
東洋のガラパゴスとも呼ばれ、類いまれな生態系を持つ奄美大島。かつて島には10万匹ものハブが生息し、住民に大きな脅威を与えていた。そしてハブ対策として1979年、30匹のマングースが島に放たれた。それから10年後の1989年、この島で獣医を務めていた半田ゆかりさんは、奄美諸島に生息するルリカケスなどの野鳥の声が最近聞こえてこないことが気になっていた。
しかし、1990年1月、3人はマングースが有害獣かどうか調査するための捕獲・研究許可を環境庁にもらうことができ、独自に森の中の調査を開始した。するとマングースは肝心のハブを食べずに、昆虫、トカゲ類から鳥類、哺乳類まで、幅広い動物たちをエサにしていることが分かった。そしてマングースは生息域を広げ、原生林にまで分布を広げていたのだ。3人は会誌「チリモス」を発刊、1991年7月には記者会見を開き、「マングースによるハブの減少効果がないこと」、「マングースの分布は拡大を続け、さまざまな在来種を絶滅するまで全て食べ尽くしてしまう可能性があること」を報告した。これを受け1994年、耕作地での駆除が開始され、2000年には環境庁によって奄美大島マングース駆除事業が開始された。5年間で計1万2417匹のマングースが捕獲され、2005年には「奄美マングースバスターズ」と呼ばれる専門の集団が編成、駆除が困難だった蜜林での捕獲に着手した。その結果2011年現在、島内のマングースは1000匹以下にまで減少した。一方、これまでマングースによって絶滅寸前までに追いやられていた奄美大島の在来動物たちは、分布域が拡大。個体数が回復しつつあることが明らかになった。奄美大島の面積は720平方キロメートル。こんな大きな島で外来生物の完全駆除に成功すれば世界的にも初めてのケースになるという。
しかし元々は人間が引き起こした自然生態の破壊。それを元に戻すために、大きな労力を注いでいかなければならない。

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外来種のウソ・ホントを科学する』 ケン・トムソン/著、屋代通子/著 筑紫書館 2017年発行
ミナミオオガシラ――グアムの在来鳥類減少事件 より
1980年代の半ばには、グアムは鳥の声の聞こえない、レイチェル・カーソンがかの有名な著作のタイトルにもして警告した「沈黙の春」ばりの荒野になっていた(そして今もなっている)。だが原因は何だったのか。仮説には事欠かなかった。カーソンのいう沈黙の刈るの原因は農薬だった。するとここでもそうなのか。過去には、特に大戦中はグアムでも蚊などの虫を駆除するために殺虫剤が盛んに使われた。だが各種の動物の細胞を分析しても、格別高レベルの有機塩素系薬剤などは検出されなかった。狩猟も同様に考えにくかった。グアムに固有の鳥類はかなり以前から保護されていたうえ、軍用の土地は警備が厳重で狩猟はできない。ところが軍用地でもそれ以外の土地と変わらず、鳥の個体数は減少していた。1980年代に広く行われた調査で、病原説も排除された。
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そこで疑いの目を向けられたのがミナミオオガシラだ。オーストラリアとニューギニア減産で、グアムには1940年代の終わりか1950年代の初め頃、軍用貨物に便乗してやってきた。そして、マリアナ諸島ではグアムだけにいる、鳥を食するヘビだ。実際、もしヘビに指紋があったなら、鳥類減少事件の現場には、ミナミオオガシラの指紋がそこらじゅうにべたべた付きまくっていたことだろう。新聞記事も、野外調査の記録も、何より決定的には地元の人々の目撃談も、このヘビが1950年代の初めに島の南に姿を現し始め、1年にはほぼ2キロのスピードで北上、1980年代の初めごろ最北端に到達したという点で一致している。地元住民は農業に携わっている人が多く、かつて見たことのない大型ヘビの出現には目を光らせていた(体長は2メートルかそれ以上にもなる)。グアムには在来種のヘビは1種しかおらず、小型でほとんど人目に触れない。ミナミオオガシラの進出経路は鳥が減少していく範囲と見事に呼応していた。ミナミオオガシラが現れた地域で、鳥がいなくなる。
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グアムの鳥がほぼ全滅したのはそれだけでも大惨事だが、そのうえミナミオオガシラの訴状には、さらなる罪状がある。このヘビはペットにも目がなくて、少なからぬ数の子犬や籠の鳥も手にかけてきたのだ。またやつらのおかげで養鶏がきわめて成り立ちにくく、そのためグアムではばかにならない費用をかけて鶏卵を輸入しなければならない。ミナミオオガシラは有毒だが、実際に毒を出すわけではないので、成人ならば噛まれたとしてもヘビを引きはがしさえすれば大量の解毒剤に頼らなくてもすむ。しかし子どもだと危険は高まり、時折集中治療室に運び込まれる子が出てくる。ただし命にかかわるほどではない。ヘビは高圧電線の鉄塔にも上り、しょうちゅう電線を切ってしまい、停電を引き起こす。現にグアムでは、毎日のようにどこかしらでヘビが原因の停電が起きているので、元凶になったヘビ自身はすでに生き絶えているにしても、職場や家庭で不便を強いられる人にしてみれば大した慰めにはならないだろう。