じじぃの「科学・芸術_439_禁断の医療・頭部移植」

World's first Head Transplant Animation 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aGfSlrOsdt8
 頭部移植

「世界初の人体頭部移植に成功」とイタリア人医師が中国で主張、しかし疑念の声は消えず 2017年11月20日 GIGAZINE
Canaveroは「2017年までに人体頭部移植を実施する」と公言してきており、今回の発表はそれが実施された形になっています。しかし、この発表の内容については懐疑的な声が多く挙がっています。
この発表を疑わしくしている最大の要因は、異なる体同士の神経細胞をつなぎ合わせることの難しさです。人間の脊髄の中には何万本という神経繊維が含まれており、それらを全て正確につなぎ合わせることは現時点では不可能と考えられています。2本の糸を結ぶようには神経はつなげられないため、仮に形だけ脊髄を「つなげました」という状態にしても、実際に機能するかどうかは全くの別問題となります。実際に、Canavero氏は過去にマウスを使って脊髄の再接続に成功したとしていますが、専門家からは懐疑的な見方が示されているとのこと。
https://gigazine.net/news/20171120-first-human-head-transplant/
ニューズウィーク日本版』 2018年3月6日号
特集:禁断の医療
医療 頭部移植は狂気か、革新への一歩か
https://www.newsweekjapan.jp/magazine/208702.php
2018年3月6日号 ニューズウィーク日本版 特集:禁断の医療 より
【医療 頭部移植は狂気か、革新への一歩か】
自分は人間に永遠の命を与えられる。イタリアの神経外科医セルジオ・カナベーロはそう言う。ただし、条件が1つ。最初に首をちょん切らせていただきます。
それでも結構と思う方には、いよいよ世界初の頭部移植を実施するというニュースは即報かもしれない。詳細は明らかにされていないが、要するに患者の頭部を切り離してドナーの体に移植する手術だ。ドナーに素姓や死因は明らかにされていない。
手術では頭部と胴体の脊髄や血管、筋肉のすべてをつなぐ。新しい体を得た患者は回復まで約1ヵ月間、投薬で昏睡状態におかれる。カナベーロによると、順調にいけば患者はいずれ歩けるようになるという。
17年11月、カナベーロはオーストリアのウィーンで記者会見を開き、2人分の遺体を使った頭部移植に成功したと発表した。移植に要した時間は18時間に抑えられたそうだ。「何回か実験した後、今は全行程にわたる手術の下準備を中国で行っている。私は15年に手術は36時間かかるだろうと言った。でも中国人が素晴らしい方法で時間を短縮してくれ、手術は成功した」と彼は語った(証拠は何も示していない)。
次の段階は生きている人間の移植手術だ。しかも既に多くの希望者がいるという。「あまりにも長い時間、人間は自然の摂理を押し付けられてきた」とカナベーロ。「私たちは生まれ、成長し、老いて死ぬ。人類は何百万年もかけて進化し、1000億人が死んでいった。これは大規模な集団虐殺だ。人間が自分の運命を取り戻す時が到来した。全てが変わる。あらゆるレベルで変わる」
ばかげた主張だと思われるだろうか。そう、実にばかげている。損傷した脊髄を治療する方法さえまだ見つかっていないし、カナベーロの手法の裏付けには大きな疑問がある。
それに確立されていない方法で人間の(もしかしたら2人分の)命を危険にさらすのは、倫理的に問題ではないか? しかしカナベーロは意に介さない。私たちは、彼がやらかすことを覚悟しておくべきかもしれない。
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カナベーロの理論の是非はともかく、これまでの実験はかなり不気味だ。背中に別のラットの頭が縫い付けられたラットや、首に縫い目のあるサルは科学研究として許容範囲を超えている。カナベーロは科学の名の下に怪物を作り出したフランケンシュタイン博士になりかねない。
フライブルク大学医療センターで分子医学の博士課程に在籍するダレン・オハーリンに言わせれば、ヒトの頭部移植移植はまだまだ先の話だ。カナベーロが提供しているのは「ピースのまったく異なるパズルなのに、まとまった計画のように見せ掛けている」。実際には「予備的実験の寄せ集め」にすぎない、と彼は言う。
慎重に実験を重ねることなく、カナベーロは一気に結論を引き出して「マスコミを呼び、サルの顔と体を縫い付けた写真を掲げて『成功した』と発表する」。邪道だ、とオハーリンは言う。
過去の研究は対照群を欠くだったという批判に、カナベーロは反論する。対照群がない実験は1つだけで、しかも対照群は必要がなかった、と。それは犬の脊髄を結合した実験で、その後、犬はいくらか動きを取り戻した。単一の事例だが、カナベーロの目には脊髄を再結合できる証拠と映るらしい。
カナベーロは、自分の仕事はライト兄弟による人類初飛行に似ていると考えている。「1機だけだったが、あれで空を飛ぶことが可能だと証明された」とカナベーロは言う。彼にとっては、この哀れな犬が人類初の飛行機のようなものだ。