じじぃの「科学・芸術_430_清潔すぎる環境」

アレルギー性鼻炎について 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XHRiguBy3U0

数百万の「無菌室」が導く崩壊 : 「微生物との共生を拒否した日本人」たちが創り出す未来の社会は 2016年12月13日 In Deep
現在、日本の子どもたちに、かつては考えられないような率で、アレルギーや、あるいは感染症が毎年猛威をふるっていることについては、特別に例を上げるまでのことでもないと思います。
https://indeep.jp/aseptic-rooms-in-japan-cause-huge-destruction/
『図説 不潔の歴史』 キャスリン・アシェンバーグ/著、鎌田彷月/訳 原書房 2008年発行
衛生という名の信仰 より
私たちは、道を歩いていたり地下鉄に乗っていたるする人々が、生身のどんなにおいも消すべく、日々全力でシャワーを浴び、マウス・ウォッシュで口をゆすぎ、デオドラント剤をつけているものと思うようになってしまっている。そして、そういう無臭の体に、慎重に選んだ人工の香りをつけていることだろう。そういう人たちは、自分だけの音楽コレクションをiPodで聴いたり、BlackBerryでメッセージを送ったり、携帯電話で話ししたりしている。どんな菌も入る隙のない自分だけの世界にいるという幻覚があまりにも強固すぎて、逆に、まわりに人がうるのを忘れて、携帯でプライベートなことを大声でしゃべっている自分に気づかない。
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清潔すぎる環境のせいでかかると考えられる病気には、関節リウマチ、糖尿病、クローン病多発性硬化症などが挙がり、心臓疾患さえ引き起こす。ふつうに黴菌(ばいきん)だらけの環境で生きているネズミは、無菌室で育てられたラットより関節炎や糖尿病にかかりにくいと判明した。多発性硬化症クローン病や喘息がほとんどないに等しいアフリカ、アジア、ラテン・アメリカの人たちが、ヨーロッパや北アメリカに移住すると、その移民の子どもたちは、親の世代よりも清潔で進んだ環境で育つことになるが、するとヨーロッパ人や北アメリカ人の子どもたちと同じくらいこういった病気の罹患率が高くなり、白人種を上回ることさえある。
<衛生仮説>はいまだに仮設のままだが、これを支持する研究結果は増えるばかりだ。反論(イエダニとゴキブリがいるのは喘息が重くなるのと関係がある)もあるが、仮説を裏打ちする証拠はどんどん挙がっている。いまのところこの仮説をじっさいに証明してみせる論拠は出てきていないのだが、いくつかの国では実験が行われている。オーストラリアのバースでは、赤ん坊がよちよち歩きのときにあまり細菌に縁がなかったと思われる喘息の子どもたちを2つに分け、一方にはプロバイオティクス細菌と抗酸化物質入りの「不潔剤」を飲ませている。もう一方の子どもたちには、偽薬(プラセボ)を飲ませていて、両方の子どもたちの発作の頻度、運動持久力、肺活量を観察しているところだ。日本では、土壌菌と関係のある結核菌を弱くしたマイコバクテリウムを与えられた子どもたちは、与えられていない子どもたちよりもずっと喘息やアレルギー性疾患率が低い、という結果が出ている。
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衛生についての矛盾した情報を判別するのは、いまの時代を生きているからには、毎日の難問になってきた。21世紀に入ってもう10年近くを経とうとしているいま、私たちが清潔を追い求めているようすは、ときにスティーヴン・リーコック(20世紀前半に活躍したユーモア小説家)が描いてみせた、パニックに襲われてあらゆる方向にいちどきに馬を走らせようとする男のようだ。なるべくどんな人の歯も入れないようにして、実験室実験室のように清潔な環境で暮らそうとしている人もいるし、もっと放任主義的な人もいる。私たちは環境問題を心配してはいるが、自分たちが毎日膨大な量のきれいな湯を遣い、下水に洗剤の毒素を流していることを考えるのは、極力避けている。衛生のスタンダードにかなった暮らしをするのは、莫大な量のエネルギーを消費するが、清潔はあまりにも神聖なもので、「体を洗うのをほどほどにしろ」などと言われるのは、車の運転を制限するよう迫られるよりもずっと反感を買いそうだ。