じじぃの「科学・芸術_429_霊的体験・幽体離脱」

Intro to Astral Projection OBE Guided Meditation with Safety Imagery, Aura and Protection 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=G1pSpCjqKJs
  側頭頭頂接合部 (赤い部分)

『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』 ミチオ・カク/著、 斉藤隆央/訳 NHK出版 2015年発行
幽体離脱体験 より
心が肉体なしに存在するという考えは、最も古くからある迷信かもしれず、神話や言い伝え、夢、ことによるとわれわれの遺伝子にまで、深く植えつけられている。どの社会にも、幽霊や悪魔が自由に体に出入りできるという話があるようだ。
不幸にも、これまで多くの無辜(むこ)の人が、悪魔に体を乗っ取られたと見なされて、悪魔祓いのために迫害された。彼らはたぶん、統合失調症のような精神疾患に罹っていたのだろう。そうした患者は、みずからの心が生み出した声につきまとわされることが多いのだ。歴史家は、悪魔憑きだとして1692年に絞首刑になったセイラムの魔女のひとりは、手足の不随意運動を起こすハンチントン病という珍しい遺伝子疾患に罹っていたのではないかと考えている。
今日でも、昏睡状態に陥ったときに、意識が体を離れて自由に宙を飛びまわり、さらには死にかけている自分の体を見さえしたという人がいる。ヨーロッパで1万3000人を対象におこなわれた調査では、5.8パーセントが幽体離脱を体験したことがあると答えている。アメリカ人へのインタビューでも、似たような数字が出ている。
ノーベル賞受賞者のリチャード・ファインマンは、いつでも新しい現象に関心を向け、あるときは感覚遮断タンクにみずから入り、幽体離脱を試みている。その試みは成功した。のちに彼は、自分の体を離れたように感じ、宙を漂い、振り返ると自分の動かぬままの体が見えた、と書いている。だがファインマンは、その後、きっと感覚遮断がもたらした自分の想像にすぎないだろうと結論づけた。
この現象を調査した神経学者は、もっと味気ない説明をしている。スイスのオラフ・ブランケ博士らは、脳内で幽体離脱体験を生み出す場所を厳密に突き止めたらしい。彼の患者のひとりは43歳の女性で、右側頭葉に起因する消耗性の発作に苦しんでいた。そこで発作の原因となる脳領域を見つけるべく、格子状に並んだおよそ100個の電極を彼女の頭にかぶせた。そして電極が頭頂葉と側頭葉のあいだの領域(側頭頭頂接合部)を刺激したとたん、患者は自分の体から離れる感覚を覚えたのである。「私がベットに寝てる。上から見ているんだけど、腰から下しか見えない!」と彼女は声を上げた。自分の体から2メートル近く上に浮かんでいる感じがしたというのだ。
しかし、電極による刺激を止めると、すぐに幽体離脱の感覚は消えた。それどころかブランケは、その脳領域を繰り返し刺激することによって、電灯のスイッチのように幽体離脱の感覚をオンにしたりオフにしたりできることを見出した。側頭葉癇癪は、あらゆる不幸の背後に悪霊がいるという感情を引き起こしうるので、霊魂が体を離れるという考えは、われわれの神経の構造に組み込まれているのかもしれない(これで超自然的な存在も説明できる可能性がある。ブランケが難治性の痙攣に苦しむ22歳の女性を調べたところ、脳の側頭頭頂接合部の刺激により、彼女は背後に影のようなだれかがいるという感覚を味わうことがわかった。女性はその人物について、両腕をつかまれたなどと、詳細に説明することができた。人物の位置は現れるたびに変ったが、背後に現れることに変りはなかった)。
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目と内耳からの情報は、側頭葉と頭頂葉の境界で電気的に乱されることもあり、これが幽体離脱体験の原因となる。このデリケートな領域を刺激すると、脳は空間上の位置について混乱をきたす(とくに、一時的に血液や酸素が欠乏したり、血中の二酸化炭素が過剰になったりしても、側頭頭頂接合部が攪乱されて幽体離脱体験を引き起こす場合がある。事故や非常時や心臓発作などの際にこの体験が多く見られる理由も、これで説明できるかもしれない)。