じじぃの「科学・芸術_423_共生進化・蝶(チョウ)」

Amazing Life Cycle of a Monarch Butterfly 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7AUeM8MbaIk
 内部共生論


少年シニア 55歳から学ぶ理科
先カンブリア時代のタフな主役達について
生命の基本単位は細胞で、あたかも意志をもっているかのごとくにふるまう。
時に、全体の命を優先する為に自らの細胞を分解して殺していくのだ。
また、ひとつの細胞には数十のミトコンドリアが存在する。
ミトコンドリアは、酸素をエネルギーに変えてくれる貴重な細胞小器官だ、
ミトコンドリアの祖先はバクテリアで、酸素を嫌う古細菌共生関係を結んだ。
酸素を引き受けて酸素をエネルギーに変換することで古細菌に利益をもたらした。
マーギュリスは、生命は自然淘汰という競争による進化のみならず、共生という協調関係により生命は発展し多様化するというモデルを提唱した。
http://tkbkun.hatenablog.com/?page=1418033488
『地球進化 46億年の物語』 ロバート・ヘイゼン/著、円城寺守、渡会圭子/訳 ブルーバックス 2014年発行
動物の出現 より
新原生代(先カンブリア時代の最後の3紀、10億〜5億万年にあたる代)に動物が出現したことを理解するには、まず10億年以上さかのぼって、退屈な10億年以前に目を向ける必要がある、わずかな化石の証拠から、およそ20億年前にまったく新しい種類の単細胞生物が生まれたことが示される。それ以前、細胞はすべて物理的に分離された(相互依存していても)生物だった。しかしマサチューセッツ大学アマースト校の生物学者であるリン・マーギュリスが、1つの細胞が別の細胞を丸ごと取り込むという、革新的なアイデアを始めて提唱した。取り込んだ細胞は消化されず、大きい細胞が小さいものを吸収して共生関係を築いたのだ。それによって地上の生物は永久に変わった。
マーギュリスは想像力にあふれた、精力的かつ知的好奇心旺盛な人物だ。彼女はもっぱら生物の集団がどのように相互に作用し、共進化しているのかを理解することに取り組んだ。彼女は共生的な関係と生物学的な発明を、生物の歴史の広範にわたるテーマと見なした。彼女の主張が少なからず人びとを動揺させたのは、進化は基本的に突然変異と選択によって起こるという、正統なダーウイニズムの見解から逸脱しているからだ。異論はあるにしろ、マーギュリスの内部共生論には説得力があり、現在では広く受け入れられている。現代の植物、動物、菌類をつくっている細胞には数多くの内部構造がある。小さな発電所のような働きを持つミトコンドリア光合成をする生物の中で太陽エネルギーを活用する葉緑体、遺伝分子であるDNAが入っている細胞核、これらと他の細胞小器官には、それぞれ細胞膜が、場合によっては独自のDNAがある。マーギュリスはこれらの小器官はそれぞれ、もっと前に単純な細胞から進化し、取り込まれ、やがて吸収されて、特別な生化学的作業を行なうようになったと主張している。今、最も有力な説によると、変化はおよそ20億年前に始まり、はるかに複雑な多細胞生物出現のための準備が整った。
マーギュリスは生物の進化を、異なった生物の共生と特徴の共有によって促されるものと考えていた。このアイデアが内部共生を超えることは(そのために主流からはずれるときがあることも)彼女自身よくわかっていた。最近の話題の1つは、コロラド州デンバーで行われた地質学者の会合の抗議で、イギリス人生物学者のドナルド・ウィリアムソンのアイデアを擁護したことだ。2009年にウィリアムソンは、チョウの非常に異なった2種類の動物――地面をはうイモムシと羽のあるチョウ――の遺伝物質が混ざったことを示していると提唱し、物議を醸していた。マーギュリスが米国科学アカデミー会員の特権を使い、ピアレビューの過程を省いてウィリアムソンの論文を『米国科学アカデミー紀要』に掲載しようとしたため論戦が激化した。会員の中には腹を立て、その説を”ナンセンス”と切り捨て、科学雑誌よりもタブロイド紙の『ナショナル・エンクワイアラー』に乗せたほうがいいと言う者もいた。それに対してマーギュリスは、ウィリアムソンの論文は真剣に吟味して議論する価値があると反論した。「ウィリアムソンの主張を全員が受け入れるよう求めるのではなく、科学と学識に基づいて評価してほしいと思っているだけです。先入観では反射的に反論するのではなく」
その議論の結果がどうあれ、マーギュリスの内部共生理論は、今まで標準的な考え方となっている。新原生代には核を持つ複雑な細胞と、他の内部構造がしっかりできあがっていて、新しい共生の境界を越えようとしていた。6億年以上前、単細胞生物は協力したり集まったり特殊化したりすることを覚え、まとまって成長し、移動するようになっていた。それらは動物になったのだ。