じじぃの「科学・芸術_415_暗い太陽のパラドックス」

Sad Piano Music - Dark Sun 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=UN9U4gvGAmc
Moon Earth And Sun On Dark Background

『地球進化 46億年の物語』 ロバート・ヘイゼン/著、円城寺守、渡会圭子/訳 ブルーバックス 2014年発行
青い地球 海洋の形成 より
地球の海がいつごろできたのか正確にはわからないが、地球最古の結晶に興味深い証拠があった。西オーストリア人の乾燥した牧草地域に、ジャック・ヒルズとして知られる30億年前の堆積層がある。この層をつくっている砂上の鉱物や石の断片は、もっと古い時代にあった岩石層が浸食されてできたものだろう。この砂粒の中に、ごくわずかな(せいぜい100万分の1程度)ジルコンが含まれている。ジルコンとはケイ酸ジルコニウム(ZrSiO4)で、自然に存在する物質の中でも屈指の硬度を持つ。
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ジルコン形成過程の最終結果がどうあれ、大衝突からたった1億年ほどで、地球は深さ数キロメートルの海が取り巻く、鮮やかな青い世界になっていた。宇宙からは群青色の球体に見えただろう。ところどころに白い雲が渦を巻いているが、全体は息をのむような青だ(海がなぜあの色に見えるかは簡単な物理学で説明できる。地表に降り注いでいる日光には、虹の色すべて――赤、黄、緑、青――が含まれているが、水はスペクトルの赤い側をよく吸収するため、私たちの目は、ほとんど反射して散乱する青い波長の光を感知する)。
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地球最初の海についてはいくつもの詳細な仮説があり、相互に矛盾するするものもある。そこにもう1つ、考えなければならない大きな問題がある。高度化を続ける天体観測技術や天体物理学の計算によると、太陽のような恒星は寿命を迎えるときまで、ゆっくりだが確実に輝きの強度を増していく。その推測では、44億年前の若い太陽は、現在より25パーセントから30パーセントも暗かったという。さらにそれから短くとも15億年間は暗いままだった。もし現在、太陽が当然、当時と同じくらい暗くなったら、地球はあっという間に冷凍庫のような状態になり、海は極から赤道まで凍り、地球上の大半は死んでしまうだろう。そのような激変する機構のなかでは、とくに生命力の強い地下奥深くに棲む微生物や、火山に近い熱水帯に棲む生物だけが生き残ることができる。
生れてまもない地球がそれほど寒かったとすれば、すぐに凍ってしまっていたはずだ。しかし少なくとも40億年前には地表水が豊富に存在していた。地質学的な証拠がある。浅瀬や深層水で堆積したと思われる地形も珍しくない。その時代に生命体が生まれ、順調に成長していた。当時の海は、なぜ凍らなかったのだろう。
太陽の明るさが少ないことで起こる熱不足が、地球の熱で補われていた部分もあった。原始マグマが固まって地殻ができてからも、暑い溶岩や火山活動で地表は温められていたそのような惑星の海は常に下から熱せられ、黒い地殻はゆっくりと厚くなり冷えていった。
暗い太陽のパラドックスを説明しようとする仮説は主に、大気中の二酸化炭素濃度が極端に高くなって引き起こされる。温室効果による過度の温暖化を指摘している。二酸化炭素濃度は現在の大気のおそらく10倍以上だった(二酸化炭素濃度が高いために海も酸性化し、塩分濃度も高くなったかもしれない)。
第2のシナリオは、初期の黒い地球、そして青い地球は、現在の地表よりもはるかに高い割合で、太陽エネルギーを吸収していたことに注目している。現在、海は陸地より多くの日光を吸収している。大昔の初期の海洋では鉄の濃度が高かったので、この傾向がさらに強かったと思われる。当時、日光の吸収率が高かったのは、おそらく光を散乱させる雲が少なかったからだろう。現在、雲を凝集させるのに大きな役割を果たしているのが、工場から出る煙の粒子や化学物質だ。しかし数十億年前には雲の形成を誘発する工場はなかった。