じじぃの「科学・芸術_386_ライプニッツの風車小屋」

Are you surrounded by Zombies? - Philosophy Spring 2016 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=07JM_8AQ6WA
Leibniz of windmill

哲学的ゾンビ ウィキペディアWikipedia) より
哲学的ゾンビ(Philosophical zombie、略: p-zombie)とは、心の哲学で使われる言葉である。「物理的化学的電気的反応としては、普通の人間と全く同じであるが、意識(クオリア)を全く持っていない人間」と定義される。
17世紀のドイツの哲学者ライプニッツが著書『モナドジー』の中で、風車小屋(windmill)を引き合いに出して行った次のような論証がある。
  ものを考えたり、感じたり、知覚したりできる仕掛けの機械があるとする。その機械全体をおなじ割合で拡大し、風車小屋のなかにでもはいるように、そのなかにはいってみたとする。だがその場合、機械の内部を探って、目に映るものといえば、部分部分がたがいに動かしあっている姿だけで、表象について説明するにたりるものは、けっして発見できはしない。
  ―― ライプニッツモナドジー』(1714年) 第17節、清水・竹田訳

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『あなたの脳のはなし』 デイヴィッド・イーグルマン/著、大田直子/訳 早川書房 2017年発行
私たちは何ものになるのか? より
人類はこれまで10万年にわたって長い旅をしてきた。動物の食べ残しで生き延びる原始的狩猟採集民から、地球を征服して互いに密につながり合い、みずからの運命をみずから決定する種へと発展した。現代人は祖先が夢にも思わなかったことを日常的に経験している。もしそう望むなら、洞窟は美しく飾られ、そこにきれいな川を引き込むことができる。小石サイズの装置に世界中の知識が入っている。定期的に宇宙から雲や地球の局面を見下ろす。地球の反対側に80ミリ秒でメッセージを送り、宙に浮かぶ宇宙ステーションに毎秒60メガビットでファイルをアップロードする。ただ職場へ車を走らせという日常的な場面でさえ、私たちはチーターのような生物界の最高傑作を超えるスピードで移動する。人類が圧倒的な成功を収めているのは、頭蓋骨の内側に納まっている1300グラムの物質の特別な性質のおかげだ。
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1714年、ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツが、物質だけでは心をつくり出すことはできないと主張した。ライプニッツはドイツの哲学者であり、数学者であり、科学者であり、「最後の万能の天才」と呼ばれることがある。ライプニッツにとって、脳組織だけでは内面生活はありえない。そして現在ライプニッツの風車小屋」と呼ばれる思考実験を提示した。大きな風車小屋を想像してほしい。あなたがその内部を歩きまわったとしたら、歯車の歯や支柱やレバーがすべて動いているのが見えるが、風車小屋が考えているとか、感じているとか、知覚していると言うのはばかげている。どうして風車小屋が恋に落ちたり、夕焼けを楽しんだりできるだろう? 風車小屋はピースとパーツでできているにすぎない。脳もそうなのだと、ライプニッツは主張した。脳を風車小屋の大きさに拡大して、その中を歩きまわったら、ピースとパーツが見えるだけだろう。明らかに知覚と符号するものは何もない。すべてがほかのものに作用しているだけだ。相互作用をすべて書き出しても、思考や感情や知覚がどこにあるかはわからないだろう。
脳の内部を見ると、ニューロンシナプス、化学伝達物質、電気的活動が見える。何十億という活動的でにぎやかな細胞が見える。あなたはどこだろう? あなたの思考はどこだろう? あなたの感情は? 幸福やインディゴブルーの色は? あなたが単なる物質でできていることがあろうか? ライプニッツにとって、心は機械的な原因では説明できないように思えた。
ライプニッツがその論法で何かを見落としていた可能性があるだろうか? 脳の個別のピースとパーツに気を取られるあまり、トリックを見逃していたかもしれない。風車小屋のなかを歩きまわることについて考えるのは、意識の問題へのアプローチとしてまちがっているかもしれない。