じじぃの「科学・芸術_332_超新星爆発」

Supernova illusion(超新星爆発 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1vWJm6snCIQ
超新星爆発の爆発前(右)と爆発後(左)
(sk.icrr.u-tokyo.ac.jp HPより)

スーパーカミオカンデ 公式ホームページ
1987年2月23日、ちょうど30年前の今日、地球から16万光年離れた大マゼラン星雲でおきた超新星爆発SN1987Aにともなうニュートリノが地球に到来しました。
スーパーカミオカンデの前身の検出器カミオカンデは、SN1987Aから放出されたニュートリノを11個検出しました。超新星爆発からのニュートリノを検出したのは世界初であり、この検出により、超新星爆発の仕組みの解明が大きく前進しました。また、2002年には小柴昌俊 東京大学特別栄誉教授がこの功績に対し、ノーベル物理学賞を授与されました。
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/news/2017/02/SN1987A.html
『輪廻する宇宙 ダークエネルギーに満ちた宇宙の将来』 横山順一/著 ブルーバックス 2015年発行
宇宙の加速膨脹の発見 より
超新星の頻度と持続時間を考えると、一度に5000個のくらいの銀河を観測できるような態勢を敷かないと、これを使って宇宙の膨張史を研究するなどということは不可能である。このような研究に果敢に取り組んだのが、アメリカローレンス・バークレー研究所のソール・パールムッターらのグループと、オーストラリア国立天文台のブライアン・シュミットらのグループであった。ハーバード大学で物理学を専攻したパールムッターは、「超新星宇宙論プロジェクト」という総勢51名のチームを率いて大がかりな観測態勢を組んでこれに取り組んだ。一方シュミットは、生粋の天文学者であり、「高赤方偏移超新星チーム」という総勢21名のグループの代表として超新星の発見に取り組んだ。
シュミットももとはパールムッターと一緒にこの研究をしようとしていたのだが、大型プロジェクトとして推進する物理学者とアットホームにこじんまりと研究を進める天文学者とでは肌合いが合わず、別のプロジェクトとして独立に観測を遂行することになったとのことである。だからといってこの2人、別に仲が悪いと言うわけではないので、特にノーベル賞を受賞してからこの2人の関係をおもしろおかしく書くマスコミには注意しなければならない。
しかし、この2つのチームの研究のやり方が、傍で見ていてもわかるほど、明らかにスタイルが違っているのはおもしろいことである。
パールムッターのチームは大プロジェクト志向で、物量作戦で一度に多数の銀河を観測し、これまでにない規模で系統的に超新星サーチを行ったのである。その結果、それまでは世界中でも1年に30個程度、しかもそのほとんどは宇宙膨脹の測定には役に立たない近傍の超新星しか見つからなかったところを、まずは7個もの遠方のIa型超新星を発見し、1997年に第1論文を報告した。しかしその時はまだ十分精度のよい観測解釈ができなかったため、当時は、スローダウン型の宇宙膨脹を予言する、通常の物質のみで満たされた宇宙モデルと矛盾がないことを結論づけていた。
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パールムッター率いる超新星宇宙論プロジェクトの論文はやや遅れて、1998年9月8日に同じく『アストロフィジカルジャーナル』に投稿され、同年12月17日に受理され、翌99年6月に出版された。このジャーナルには多数の論文が出版されるので、受理されてから実際に印刷されるまで、半年かかるのも稀ではないのである。彼らが宇宙の膨張史をたどるのに使ったのは遠方で発見された42個の超新星で、1992年の1個を除くと他は1994年から97年までに見つかったものであった。
その結果はどうだったか。
まず、観測からわかることをもう一度整理しておこう。超新星爆発の起こった銀河から来る光のスペクトル線を観測し、その波長が現在地上で同じスペクトル線を測った場合とどれだけズレているかを調べることによって、超新星からの光が地球に届くまでに宇宙が何倍膨脹したかがわかる。さらに、超新星の明るさの時間変化を詳しく調べることによって、超新星の絶対等級すなわち真の明るさが推定できる。先に述べたように、この推定法が2つのチームでは異なっているのであった。真の明るさがわかると、見かけの明るさが距離の2乗に半比例することを使って、超新星までの距離を決めることができる。距離がわかるということは、超新星爆発が起こってからの時間がわかるということなので、超新星爆発が起こってから現在までの宇宙の平均膨張速度が求められる。その値を、近くの銀河の観測などから決めた現在の宇宙の膨張速度と比較することによって、当時と現在とで宇宙膨張速度がどれくらい違うのか、言い換えると宇宙膨張の加速度がどれくらいであったか、ということがわかるのである。
2つのチームの観測によってわかったのは、驚くべきことに、宇宙は正の加速度を持ちながら、つまりスピードアップしながら膨脹している、ということである。それがなぜ驚きかというと、万有引力を及ぼし合う普通の物質や放射で満たされた宇宙は、ビッグバンによって膨張を始めたのち、物質の万有引力に引っ張られてだんだん膨張速度を減速しながら、つまりスローダウンしながら膨脹するはずである。宇宙膨脹が加速するというのは、アインシュタイン一般相対性理論に通常の物質を入れただけでは出てこないのである。