じじぃの「科学・芸術_317_小説『真夜中の子供たち』」

Midnight's Children Official Movie Trailer (Canada) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IXgx6C8PHd4
Midnight’s Children

【パリ銃撃】「悪魔の詩」著者サルマン・ラシュディ氏「宗教は風刺を受け入れるべき」  2015年01月08日 huffingtonpost
フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド」の銃撃事件を受けて、サルマン・ラシュディ氏がアートとしての風刺を擁護するコメントを発表した。
「私は『シャルリー・エブド』を支持する。アートとしての風刺を守るため、我々は皆そうしなければならない。風刺は常に、自由を獲得し、 暴政や不正、愚行に対抗するための力となってきた」。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/08/salman-rushdie-charlie-hebdo_n_6435084.html
おすすめ小説『真夜中の子供たち サルマン・ラシュディ』世界中で絶賛の嵐! 狐人日記
『真夜中の子供たち』を、ぜひ先入観にとらわれず読んでほしい、と思った理由は、実は僕自身が、ほとんど内容なんかの前知識のない状態で読み、読後とてもすばらしい小説だ、と感じたからですが(あらすじさえ知りませんでした)。
http://nanatoshi.com/book-report33/
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
たったひとりの人生を理解するだけでも、世界を呑みこまなければならない 『真夜中の子供たち』(1981年)サルマン・ラシュディ より
マジックリアリズムの作家たちは、異様な現象をきわめてふつうのことのように感じさせる。物語の筋はこみ入っていることが多く、描写は過剰なほどに細部や色が強調され、物語の世界感に非現実的な複雑さを加えている。いくつかの点で、マジックリアリズムは読者に積極的な役割を担うことを要求する。小説のさまざまな要素が混乱していて、これまで読者が経験してきた現実感に衝撃を与えかねないからである。
     ・
『真夜中の子供たち』の物語が展開していくにつれ、ラシュディは話を南アジアの広い地域へと移し、登場人物の物語を語ることで、インドの歴史やパキスタンカシミールの歴史も伝える。
1962年、中国とインドの境界をめぐる緊張関係が戦争へと急転した。インドは戦いに敗れ、小説のなかで国民の志気は枯渇する。小説の主要人物サリーム・シナイの人生では、中国との紛争が激化するとともに鼻づまりが悪化し、中国軍が前進を停止する日に鼻腔の流れをよくする手術を受ける。サリームの人生における出来事がまたもや歴史の大きな出来事とからみ合う。
ところが、鼻の通りがすっかりよくなると、心を読む能力が消えてしまったことにサリームは気づく。その代わり、生まれてはじめてにおいを感じられるようになり、しかも感情と嘘も嗅ぎとることができるようになる――「新しい愛のうっとりするような、しかしすぐに消えてゆく芳香、そしてずっと根深くて長持ちする憎しみの鋭いにおい」も。
この小説はサリームの記憶の万華鏡で、真偽の境目がはっきりせず、魔術的な要素までもはいりこむ余地を生み出している。見るからにうそつきの登場人物がいる一方で、多くの場合、正確な事実より感情的な真実を伝えるために装飾を施す場合もある。
話の早い段階で、サリームは同じ時刻に生まれた赤ん坊と取りちがえられたことを打ち明ける。その赤ん坊とはシヴァのことで、サリームのほんとうの両親は、比較的裕福なイスラム教徒の育ての親はほど遠く、植民地生まれのイギリス人、ウイリアム・メスワルドと、分娩で死んだ貧しいヒンズー教徒の女であった。つまり逆説的にサリームが実現しようとする「運命」は、別の子供のものであった。それでもサリーム・シナイとして育てられたのだから、これこそが本来の自分であると見なす。サリームにとってはそれが真実である。
サリームはマハトマ・ガンディーの死去をまちがった日で記録したことに言及し、さらにはその誤りを目立たせて悦に入る。「わたしのインドではガンディーはまちがった時日に死につづけるだろう」。この小説では、真実は物事に影響されやすく主観的で、完璧にはほど遠い。
本の終わりでは現在にもどり、サリームが自分の物語を話し終える。体がばらばらに引き裂かれるというみずからの予言があるものの、サリームは31歳の誕生日――にパドマと結婚することに同意する。最後までサリームの歴史はインドの歴史と混ざり合う。
読者にとって『真夜中の子供たち』は、複雑で魅惑的な旅であり、近代インドの核心へ通じる裏街道を行く謎解きの旅でもある。時間の流れは速まったり遅くなったりし、直線的に進まないこともある。運命は頻繁に引き合いに出され、本来は予告され、予言は聞き届けられて実現することを期待される。奇抜さや魔術はごくふつうに見られるリアルなものである。ラシュディはこうしたマジックリアリズムの要素をすべて織り込み、暴力や政治や驚異に満ちた、緻密で生き生きとしたタペストリーを作りあげて、インド独立初期の話を伝えている。