d01サーカディアンリズム(概日リズム・体内時計)【約3分の医工連携ナレッジSeries】 動画 YouTube
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体内時計
2017年ノーベル生理学・医学賞:体内時計を生み出す遺伝子機構の発見で米の3氏に 2017年10月3日 日経サイエンス
2017年のノーベル生理学・医学賞は,サーカディアン・リズム(体内時計)を生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した米ブランダイス大学のホール(Jeffrey C. Hall)博士とロスバシュ(Michael Rosbash)博士,ロックフェラー大学のヤング(Michael W. Young)博士の3氏に授与されることになりました。
人間の身体は,24時間のリズムで変化しています。活動や睡眠といった目に見える変化だけでなく,朝が来ると血圧と心拍数が上がり始め,昼には血中のヘモグロビン濃度が最も高くなります。夕方には体温が上がり,夜には尿の流出量が多くなります。真夜中には免疫を担うヘルパーT細胞の数が最大になり,成長ホルモンがさかんに分泌します。こうした周期のことを,サーカディアンリズム(概日リズム)と呼びます。一般には「体内時計」と言ったりもします。
この遺伝子を最終的に特定したのが,今回ノーベル賞を受賞するホールとロスバシュのグループと,ヤングらのグループです。1984年に両チームが独立に見いだした遺伝子は,per(period)遺伝子と名付けられました。さらにヤングらは1995年,概日リズムを生み出すもう1つの遺伝子,tim(timeless)遺伝子を発見しました。
3氏は,これらの遺伝子がどのように24時間のリズムを生み出しているのかを明らかにしました。per遺伝子が作るPERタンパク質とtim遺伝子が作るTIMタンパク質は,細胞内で複合体を作ります。この複合体は遺伝子の働きを制御する転写因子で,per遺伝子とtim遺伝子にフィードバックをかけます。そのため24時間のリズムが生まれるのです。
http://www.nikkei-science.com/?p=54610
『量子力学で生命の謎を解く - 呼吸、光合成、嗅覚、磁気感覚…。生命の秘密は、量子の世界に隠されていた!』 ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン/著、水谷淳/訳 SBクリエイティブ 2015年発行
チョウ、ショウジョウバエ、量子のコマドリ より
体内時計は、我々が夜は疲れて朝は目が覚める原因としても、また長時間の空の旅でリズムが狂う時差ぼけの原因として馴染み深い。ここ20年ほど、体内時計のしくみについて興味深い発見が次々にあった。なかでももっと驚くべき発見の1つが、つねに光の変化から隔離されている被験者でも、外部のきっかけが何もないのにおよそ24時間で活動と休息のサイクルを示すことだ。ヒトの体内時計は本能に組み込まれているらしい。この内臓時時計、いわば身体の「ペースメーカー」、すなわち概日感覚は、脳の奥深くの視床下部に位置している。しかし、一定の光の環境に置かれた被験者でもおよそ24時間のサイクルを維持するものの、その体内時計は徐々に実際の時間からずれていくため、その覚醒と睡眠の周期は外界の人と一致しない。それでもひとたび自然光を浴びれば、「エントレインメント」(同調)と呼ばれるプロセスによって、すぐに実際の明暗のサイクルに合わせて体内時計が調節される。
オオカバマダラの太陽コンパスは、太陽高度と時刻とを比較することで作動するが、その関係性は緯度と経度の両方によって変化する。したがって、オオカバマダラの持つ体内時計もヒトのものと同じく、光によって調整され、長い渡りのあいだに日の出と日没の時刻が変化するのに合わせて補正されているはずだ。しかしオオカバマダラは、どの部位に概日感覚を持っているのだろうか?
アーカート夫妻が身にしみて感じたように、チョウは簡単に扱える動物ではない。迷路の道を嗅ぎ分けたショウジョウバエのほうが、とても速く繁殖して容易に変異するため、実験用の昆虫としてははるかに便利だ。ショウジョウバエもヒトと同じく、概日リズムを明暗のサイクルに合わせて調整する。1998年、概日リズムが光に左右されないような変異体のショウジョウバエが見つかった。その変異は、クリプトクロム(Cryptochrome, Cry)という目のたんぱく質をコードしている遺伝子に起きていた。