じじぃの「科学・芸術_301_中国崩壊論の崩壊」

中国の「一帯一路」構想:クイックテイク 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jufeHqKQW1I
The Launch of Shenzhou XI Manned Spacecraft | CCTV 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=iFH-0sIEYDs


『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』 ジャック・アタリ/著、林昌宏 /訳 作品社 2008年発行
次に世界を制するのはどこか? より
経済的・政治的勢力をもつ11ヵ国が台頭している。これらの国を列挙する。日本、中国、インド、ロシア、インドネシア、韓国、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、ブラジル、メキシコである。本書では、これらの国々を(11ヵ国)と命名し、後ほど触れていく。20年から25年後には、これらの国々は市場民主主義国となるか、その途上にあるだろう。さらには、これらの国を追う、力強い経済成長をともなった(20ヵ国)が存在する。こうした「20ヵ国」のうち、将来的にも社会機構の欠如に苛まされるあろう国々は、アルゼンチン、イラン、ベトナム・・・である。
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中国の人口は2025年に13億5000万人に達し、世界第2位の経済大国になる。この調子で進むと、中国のGDPは2015年に日本を抜かし、2040年にアメリカと並ぶ。世界のGDPに占める中国の割合は、現在の4.5%から2015年には7%、2025年には15%近くにまで上昇する。中国人の平均的な生活水準は、2015年には世界の平均に追いつく。これはアメリカ人の平均的な生活水準の5分の1にあたる。2025年に、たとえ中国の年間経済成長率が半分になったとしても、中国1人当たりの年間所得は6000ドルである。こうして中国では、数億人が中産階級に、数千万が資産家の仲間入りを果たす。また、中国の経常収支バランスは相変わらず大幅に黒字のままであり、中国資本はアメリカの財政赤字を補填し続ける。中国とアメリカは、お互いに強い敵意を感じながらも、自らの利益を前提とした世界経済の成長維持のために、あたかも同盟国のように振る舞う。さらに中国は、日本とアメリカを退け、フィリピンやカンボジアといった地域で最大の投資国にのし上がる。中国の太平洋沿岸部地域は、農村部からの流民にうまく対処できるのであれば、特に世界各地に散った中国人をはじめ、世界中のクリエーター階級を迎え入れるであろう。
中国共産党の都市部の生活を組織する能力は衰退し、中国共産党は各都市部において、選挙で選ばれた人物に権力を委譲することになる。中国共産党は改革を怠り、次に掲げる山積みとなっている難題を解決することができない。すなわち、現在、中国人の90%には退職金も健康保険もなく、都市部に住む半分の人々、そして農村部に住む5分の4にあたる人々は、医療サービスを受けられない。また、中国の最大都市上位500位に入る都市の半分では、飲料水が確保できず、ゴミ処分場が不足している。よって、中国は都市部のインフラ設備を完備しなければならない。また、人民元の安定性を強化し、汚職を撲滅して公的な財政部門を持続的に健全化していくことも必要である。さらに、都市部に流入してくる数億人の人びとに職を与え、所得格差を是正しなければならない。教育システムを改善して多くの管理職を育て上げることも必要であり、旧態依然の公共部門を改革し、個人の所有権並びに知的著作権を保護するための法整備も急務である。これだけの課題を一党独裁体制でこなすことは事実上不可能である。2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権力に終止符が打たれるであろう(70年以上にわたって権力を握りつづける政権は、世界中どこにも存在しない)。
この国の過去の歴史からもわかるように、この時期に中国は混乱を極める。新たな民主主義が生まれ、1912年の「軍閥」による辛亥革命当時と似たような展開になるのではないだろうか。中国が国家統一を維持できないというシナリオは排除できない。この場合、中国は内乱状態に陥る。

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ニューズウィーク日本版 特集「中国予測はなぜ間違うのか」 2017年10月24日号
中国崩壊本の崩壊カウントダウン 【執筆者】高口康太(ジャーナリスト) より
一世を風靡した「中国崩壊本」が今、曲がり角を迎えている。
中国崩壊本とは「中国経済は数々の問題を抱えており、早晩破綻する」と主張する書籍や雑誌のことだ。いわゆる「反中本」の中でも、主に経済に論考が限定されている。アメリカにも存在するが、日本での出版数が圧倒的だ。
「世界第2位の経済大国を自称するが、統計はごまかしが横行している。実際のGDPははるかに少ない」「軍事費や治安維持費が右肩上がりに増えており、高成長を維持できなければ国家が破綻する」「中国の暴動。ストライキの数は年10万件超。成長率が下がれば国が持たない」「不動産バブルは既に限界」……といった個々の事象を基に、中国経済が立ちゆかなくなると結論付けるのが一般的だ。
05年の反日デモ、08年の中国製冷凍ギョウザ中毒事件、10年の尖閣諸島中国漁船衝突事件、12年の日本政府による尖閣国有化に伴う反日デモと、日中間で衝突が起きるたびに中国崩壊本は出版されてきた。
曲がり角を迎えている最大の理由は、10年以上前からオオカミ少年のように「間もなく崩壊する」と言い続けたのに中国経済が一向に崩壊しないからだ。「崩壊詐欺」とも批判を浴びている。
そして、本の売れ行き自体も低調になった。「あの手の本には一定の支持層がいるが、大きく売り上げを伸ばすためには中国との『事件』が必要」と、中国崩壊本を何冊も手掛けてきた日本人編集者は言う。「現在、日中関係は安定しているので、ある程度は売れるもののそれ以上の大きな伸びは見込めなくなった」
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津上俊哉と梶谷懐はその後もブログで議論を続けたが、一連のやりとりで明らかになったのは中国経済予測の困難さだ。知識が豊富な専門家でも、公式統計や報道が未成熟で、かつ急激に成長と変化を続ける中国経済の正確な予測は難しい。また、専門的な議論は一般読者にはとっつきにくい。その隙間にうまく入り込んだのが、手軽に制作できて読みやすい崩壊本なのだろう。
石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したこともない」 より
08年の北京オリンピックの前後から、「反中国本」「中国崩壊本」はまるで雨後のたけのこのように日本で出版されてきた。
『中国崩壊カウントダウン』『中国の崩壊が始まった!』『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』......。あおりにあおったタイトルの本が今も書店には並ぶ。なぜ、この種の書籍の出版は続くのか。複数の「崩壊本」を執筆してきた中国問題・日中問題評論家の石平(せきへい)にジャーナリストの高口康太が聞いた。
――いわゆる「中国崩壊論」に対する批判が最近高まっている。現実とは真逆ではないか、という指摘だ。あなたは崩壊本の代表的筆者として位置付けられている。
石平 誤解があるのではないか。私自身のコラムや単著で「崩壊」という言葉は原則的には使っていない。対談の中で触れたことはあるが。
私の主張は「崩壊」というより「持続不可能」という表現が正しい。消費拡大を伴わず、公共事業と輸出に依存した、いびつな経済成長は持続不可能という内容だ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8667.php