じじぃの「科学・芸術_290_シアノバクテリア(藍藻)」

Cyanobacteria 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aSBcAZOiZeM
シアノバクテリア (朝山グループ HPより)

光合成生物の生命科学 〜遺伝子の発現制御と機能解析〜 分子遺伝学研究室 朝山グループ
地球と生命体の歴史からこの生物をとらえた場合、実に重要な位置付けにいます。原始地球の大気に酸素はほとんど存在しませんでしたが、酸素発生型の光合成を行うシアノバクテリアが30億年近く前に出現し、大繁栄したことによって酸素を放出し、還元的な地球を酸化的な環境に変えたと考えられています。
またシアノバクテリアは、細胞内共生によって真核生物に取り込まれ「葉緑体」(光合成の場)の起源となりました。光合成の明反応は、チラコイド膜と呼ばれる多重の内膜上で行われるのが特徴です。
http://asam.agr.ibaraki.ac.jp/page3/page5/page5.html
『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新科学』 ピーター・ウォード、ジョゼフ・カーシュヴィンク/著、梶山あゆみ/訳 河出書房 2016年発行
酸素の登場 より
地球の初期の生命がどういう歴史をたどったかは、堆積岩を調べることでかなりわかる。たとえば、始生代の堆積岩にはしばしば真っ赤な層が現れる。これは縞状鉄鉱床と呼ばれ、過去18億5000万年のあいだは地表中にはほとんど存在しない。先カンブリア時代の終わりに1、2度起きたスノーボールアースの最中に、例外的に見られるのみである。
縞状鉄鉱床をめぐっては積年の謎がある。広範囲に分布しているところを見ると、鉄は水に溶けていたと思われる。だとすれば、それは還元的で緑色かかった「第一鉄」という形態をとっていたはずだ。一方で、沈殿して堆積したということは、鉄が錆びて赤い「第二鉄」になったことを意味する。第二鉄はまったく水に溶けない。角砂糖とは違って、水の中に粒子として漂っているだけである。問題は酸素だ。第一鉄は遊離酸素分子とただちに反応して赤い第二鉄の状態になる。鉄であれ、鉄を含む鉱物であれ、色が鮮やかな赤色であれば鉄はそうした化学変化を確実に経ている。それを私たちは一般に「錆び」と呼び、錆びるためにはほぼ間違いなく酸素分子を必要とする。だとすれば、初めは鉄が緑の第一鉄として水に溶けていられるほど酸素濃度がひくかったのに、次の段階ではそれを錆びさせるほどの酸素が存在していたことになる。どうすればそうなるのだろうか。この謎は長らく科学者を悩ませてきた。
50年あまり前、先カンブリア時代を研究する重鎮の一人であるカリフォルニア大学サンタバーバラ校のプレストン・クラウドは、その酸素が藍藻類からもたらされたのではないかと考えた。藍藻類は光合成をする原始的な微生物で、現在ではシアノバクテリアともいう。これは酸素発生型光合成と呼ばれるもので、文字通り水分子を切断して酸素原子を解放する。いわば命を与えるプロセスであり、それを行なうことを学んだのは地球の生命の中でこの藍藻類だけである。のちにその子孫の一部がほかの生物に取り込まれ、今や植物や藻類の緑色の細胞小器官として光を集めて私たちすべての役に立っている。現存する植物がもつこの小さな「カプセル」は、どれも最初のシアノバクテリアから進化したものだ。ただし今は独立した生物としてではなく、細胞内に「内共生」として多細胞植物の命に従っている。最初に登場したシアノバクテリアは、「酸素のオアシス」として水中に浮かびながら1個1個がごく少量の酸素を吐き出し、それがやがて何億年もの時をかけて生命のあり方を根本から変えたのみならず、地球の海や大気や、地表を覆う岩石の科学的性質までをも変化させたのではないか。クラウドはそんな筋書きを思い描いた。始生代の海にわずかな酸素が解き放たれるたびに、微量の錆びのかけらが海底に沈み、ゆっくりと、だが止むことなく蓄積していって、あの縞状鉄鉱床をつくったのだと。