じじぃの「科学・芸術_144_ブラジル・日系移民」

Gaijin-Caminhos Da Liberdade-Tizuka Yamazaki 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=I8J7SSj5iTg
NHKスペシャル ブラジル移住:31年目の乗船名簿(前) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-W7M82iBJYs
笠戸丸

航跡―移住31年目の乗船名簿 相田洋/著 2003年 Amazon
南米の地に「楽園」を夢見た移住者たちが目の当たりにしたものは何だったのか。
1968年3月、横浜を出港した移住船「第29次航あるぜんちな丸」に乗船した136人の半生を追い続けた長編ルポルタージュ

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『ブラジルを知るための56章』 アンジェロ・イシ/著 赤石書店 2001年発行
日系人の新しいイメージ (一部抜粋しています)
  「日系人を1人殺せば、大学入試に合格する確率がそのぶん増える」
       (1970〜80年代に受験生の間で流行ったブラック・ユーモア
ブラジル発見500周年記念行事の一環として、サンパウロ大学は2000年に初めて各学科の成績1位の卒業生を表彰したが、受賞者87人中、17人が日系人学生だった。ブラジル人口に占める日系人の比率がわずが1%にも満たないことを考慮すれば、いかにこの受賞率が日系人にとって意義あるものか、容易に想像できるだろう。
ブラジルにおける日系人の数は約150万人と推定されている。この数字には、1908年6月に初の日系移民集団を乗せた「笠戸丸」がサントス港に就いて以来、ブラジルに渡った約35万人のいわゆる1世の移民と、その子孫の2世や3世が含まれている。
移民の歴史についてはすでに多数の優れた研究が発表されているので、本章ではあえて現代のブラジル社会において日系人がどう位置づけられているのか、そしてブラジル人は日系人をどうみているのかまとめてみたい。
まず、半田知雄の著書でも指摘されている通り「ブラジルには、アメリカ本土やハワイでのような『排日』がなかった」のは確かだが、ブラジル社会の中には、日系人を含めた東洋の移民に反対する声もあった。歴史学者のカルネイロ『ブラジルの歴史におけるレイシズム』によれば、1880年頃、ブラジルへの中国人移民導入に対する反対の声が上がり、「アマレーロス」(黄色人種)はブラジル社会になじまない奇妙な生活習慣を持つ「危険な人種」と形容された。また1924年には、日本からの移民の急増に危機感を抱いたインテリ層の代表であった全国医学士院が日系移民受け入れ反対を表明した。さらに、第二次世界大戦中の1042年にはヴィヴァルド・コアラシー『危険な日本人』やミヘル・コウト『社会的選択――反日本キャンペーン』という反日評論集が刊行された。コウトは1933年に黒人と黄色人種の受け入れを禁止する法案を国会に提出した議員団のリーダーでもあった。
そんな中で、日系移民を誉める者もいた。ブルーノ・ローボは「日本人を恐れる必要など何もない」といい、アゴチーニョ・フィーリョは日系移民を「東洋からの開拓者」と評し、パラナ州日系人植民地での農業生産力の高さとその勤勉さを賞賛した。この勤勉さこそ、後にブラジル社会における日系移民の肯定的なイメージ形成の柱となり、日系人の代名詞となった。
日系移民のほとんどは農業からスタートして、真面目に働くという評価を受けた。その後、都市に移動して商業や工業を手掛け、信用できる人々として認められ成功した。しかし、教育への投資と大学進学こそ、「勤勉な日系人」というイメージを決定づけた要素である。日系人は何よりも一生懸命に勉強する人々として有名になったのである。そして、どちらかといえば機械関係やコンピュータ関係」など、理科系が得意分野というイメージがいつの間にか浸透した。猛勉強を要する医学や歯学にも進出し、勤勉さを発揮した。逆に、人文科学やコミュニケーション能力を要する仕事、身体能力を要するスポーツには日本人は向いていないとされてきた。日本人は小柄でシャイで、地道な努力を要する分野以外は苦手だという「神話」が定着した。
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移民に関する総括的な書籍1冊と映画とテレビ・ドキュメンタリーをそれぞれ1本ずつ紹介したい。半田知雄『移民の生活の歴史――ブラジル日系人の歩んだ道』(サンパウロ人文科学研究所、1970)は、まさに移民史の古典である。
1980年製作のチズカ・ヤマザキ監督『ガイジン』(Gaijin)は、フィクションとはいえ、実話を土台にして初期の移民の苦労を描いている。対照的に、NHK製作のドキュメンタリー『乗船名簿』(最新作は2000年放送)は、最後の移民船(1968年)に乗り込んで撮影をした貴重な映像をはじめ、その後も10年ごとに南米を訪れて日系移民家族がどうなったのかを追った大がかりなシリーズで、必見の作品である。