じじぃの「神話伝説_178_出雲大社・国譲り神話」

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古代日本の巨大建築物の比較図 (inoues.net HPより)

『学校では教えてくれない日本史の授業』 井沢元彦/著 PHP 2011年発行
「国譲り神話」が明かす”日本人らしさ”の原点 (一部抜粋しています)
かつて出雲大社は、本当に東大寺の大仏殿を凌ぐ高さを有す、日本一の巨大建築物だったのです。
では、なぜ出雲大社がもっとも大きくなければいけなかったのでしょう。
それを知るためには、出雲大社の起源である「国譲り神話」を知ることが必要です。
皆さんも「国譲り」という言葉だけは聞いたことがあると思います。でも、その内容を詳しく知る方は少ないのではないでしょうか。
実は、「国譲り神話」は、世界の神話の中でも大変珍しい神話なのです。
どういうことかというと、第1に、『日本書紀』にも『古事記』にも国譲り神話はあるのですが、どちらも「天皇家はこの国のもともとの支配者でななかった」ということが明らかにされているのです。
神話というのは、その国のルーツを伝えるものなので、基本的には自分たちがこの国のもともとの住人だったと伝えるものがほとんどなのです。そういう意味で、これはとても珍しい神話だといえます。
では、もともとの住民でないとしたら、天皇家はどこから来たのでしょう。
神話では、天孫は「高天原(たかまがはら)」から降臨したと伝えています。
高天原は、明らかに日本とは違う国です。大陸であることは間違いありませんが、そこが具体的にどの場所を指すのかということは諸説ある上、ここでは本題から外れることなので触れません。大切なのは、日本の皇室のルーツは外の世界の人々であるということが、神話に明記されているということです。
国譲り神話によると、アマテラスはその高天原という日本とは明らかに違う場所から日本を見て、その国を自分の孫(天孫)のニニギノミコトに統治させようという心を起こします。
でも問題がありました。このときすでに日本には先住民がいたのです。神話では彼らを「国津神(くにつかみ)」と呼んでいます。そして、その国津神たちを治めているのがオオクニヌシノミコトという神様でした。
アマテラスはオオクニヌシに使者を遣わし、「この国を私の孫に譲りなさい」と言います。
考えてみれば、ずいぶんひどい話です。これを現代でたとえるなら、やっと長い年月をかけてローンを支払い終わった家に、突然見ず知らずの人がやってきて、「ここが気に入ったから、ここに私の孫を住まわせたい。あんたは私の孫にこの家を譲って、どこか別のところへ行きなさい」と言われるようなものです。
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最終的にオオクニヌシが下した決断は、戦争ではなく国を譲り渡すことでした。
そして国を譲るにあたり、オオクニヌシはアマテラス側と「話し合い」を行っています。
つまり、神話では、日本という国は「話し合い」によってオオクニヌシからアマテラスの孫へ譲り渡されたとされているのです。
戦争ではなく、あくまでも話し合いで決まったというのですが、実際はやはり戦争をしたのだと思います。
というのは、出雲大社からさほど遠くない島根県簸川郡斐川町神庭西谷の小さな谷間で、大量の銅剣が発見されているからです。遺跡はその小さな谷の名前をとって「荒神谷遺跡」と名づけられました。
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ここで断っておきたいのですが、一口に「弥生人が入ってきた」と言っても、実際の渡来には、2段階あったと私は考えています。
まず第1次の「弥生人」は青銅器を持った人々で、日本海を中心に日本列島に入植した。そして1つの文明を築きあげます。これが「出雲族」です。
すると、いつの時代にも先人の成功に目をつける人はいるもので、やがて、大陸から第2次「弥生人」が日本にやってきます。恐らく、この第2次弥生人天皇家の祖先と考えていいと思います。彼らが第1次の弥生人たちと大きく違っていたのは、持っていたのが青銅器ではなく鉄器だったことです。
青銅器を持った文化に鉄器を持った文化が侵入してくる。実は、こうしたことは世界史ではよく起こっていることなのです。
そして、銅器を持った文化は鉄器を持った文化に滅ぼされてしまいます。なぜなら鉄器は武器としてはもちろん、農具としてもすぐれていたからです。
鉄には「錆びる」という致命的な欠陥がありますが、錆びないようにきちんとケアしていれば大きな問題になりません。鉄の刃物は青銅でつくった刃物よりはるかに強靭なので、青銅器では太刀打ちできなかったような大木を切り倒したり、今まで開墾できなかったような荒地も耕すことができます。そういう意味で、敵機を持った弥生人は、青銅器しか持たなかった第1次弥生人より遥かに高い生産性を持った民族だと言えます。
この鉄器を持った弥生人が、「大和族」のルーツで、そしてこの大和族が、鉄器の力で出雲を征服して、さらにははっきりと言えば、そこに住む出雲族の人々を征服してしまったのだと思います。
恐らくは、これが「国譲り」の実態だったと思われます。
国譲りの実態は、優れた武器を持った侵入者による侵略戦争だった、ということです。