じじぃの「科学・芸術_50_世界最古の織物機(スイス)」

最古の織物機(想定図)

湖上住居とは コトバンク
湖中に柱などを打ち,それを基礎にしてその上に建築した住居。杭上住居ともいう。
新石器時代青銅器時代のスイスの住居が著名で,19世紀中頃の大干魃のときに多数発見された。長い間水中にあったため有機物の保存がよく,動植物の遺存体が数多く発見され,当時の生活環境,生活条件の復元に多大の資料を提供し,研究の進展に寄与した。

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古代の亜麻業 日本麻紡績協会
亜麻は世界に於ける織物原料の最古のものであるとされているが舊約聖書の創世記に「パロすなはち指輪をその手より脱して之をヨセフの手にはめ之に白布(リネン)を衣せ金の鎖を其の頸にかけ之をして己のもてる次の輅(くるま)に乗らしめ下にいよと其前に呼しむ是彼をエジプト全国の家宰(つかさ)となせり」    第41章42節、43節
とあり。リネンLinenという語の最も古い記録であってその様な古代に於いて既にリネン(亜麻布)が衣服の資料として広く使用されていたことがわかる。
http://www.asabo.jp/museum/museum_sub07.html
『人間の歴史〈1〉』 M・イリーン、E・セガール/著、作袋一平/訳 岩波少年文庫 1959年発行
湖の物語 最初の織物 (一部抜粋しています)
1853年、スイスにたいへんなひでりがあった。川はかれ、湖の水は岸からひいて、底の泥をみせた。チューリヒ湖の岸にあるオーベルマイレン街の人びとは、このひでりを利用して、湖の一部を陸地にしよう、と思いついた。
それは、水のひいた地帯を、ダムで湖水からしきらなければならない。
湖で仕事がはじまった。日曜日ごとに、着かざった人びとが、青いボートやみどりのボートをだして進んでいたところ、そこにいま、ダムに土はこびする馬をしかる御者の声がひびきわたった。土は、陸地になる場所の底から堀りだされた。とつぜん土工さんのシャベルが、なかばくちたくいにぶつかった。つづいてつぎのくい、またつぎのくいがあらわれた。いつかここで、この場所で、人びとがはたらいていたことがわかった。ほとんどシャベルでひと堀りするたびに、石オノ、釣り針、つぼのかけらが、ぞくぞく出てきた。考古学者がかけつけた。湖の底から出たくいや品物を、ひとつひとつ研究して、学者たちは、チューリヒ湖上にあったくいの部落を、本のページに復元した。
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遠いむかし、人びとがまだ洞窟に住んでいたときには、火はこわくなかった。洞窟の岩の壁は火にもえなかった。
はじめて木の家に住むと同時に、はじめて火事というものがおこった。いく千年も文句をいわずに人間にしたがってきた赤いほのおのけものは、いまそのつめをみせた。
ヌーシャテル湖の底でみつけた炭の厚い層は、むかしの火事のあとである。
いや、なんとおそろしいありさまだったろう! 火からのがれようと、人びとは子どもをかかえて、水にとびこんだ。かこいのなかでは、どうしようもない家畜どもが、声をかぎりにほえたて、なきたてた。だが人びとは家畜にかまってはいられない。まるで巨大なたき火みたいに、火の粉を四方にまき散らしながら、木造部落はもえあがった。
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最初の織物ははた台で織られたのではなくて、手で編まれた。
いまもまだエスキモーは布を織らないで、編んでいる。まずたて糸を張る。つぎによこ糸を、ヒモをひとつもつかわないで、ゆびでたて糸を通していく。
糸を張りわたしたわくなどというものは、今日の織機からは想像もつかない。それでも織機の系譜は、4本の角材でできたこのかんたんなわくから、ひきだしてこなければならない。
湖の底でみつけた焼けこげだらけの黒ずんだぼろきれは、人間の生活におこったひじょうに重大なできごとを、わたしたちに語っている。それまで動物の皮を着ていた人間は、いまアマの人造皮をこしらえ、それをはたけでそだてている。
針は織物が生まれるよりも、いく千年もまえに生まれた。それがいまやっと、けものの皮ではなくて、アマ布を縫うという、その本来の仕事にとりかかったのである。