じじぃの「人の生きざま_705_木嶋・佳苗(連続不審死事件)」


世界のドキュメンタリー 「(不)正直な私たち 〜“ウソ”を巡る“本当”の話〜」 2016年8月31日 NHK BS1
【案内人】ダン・アリエリー教授 2015年 アメリ
人はなぜウソをつくのか?この根源的な疑問に様々なケーススタディで答えるドキュメンタリー。ウソのハードルを下げる心理的、社会的なファクターをユーモラスに紹介する。
企業によるデータ改ざん、ドーピングを否定するスポーツ選手、政治家の嘘といったものから、日常的なスピード違反まで。人は日々ウソをついている。ウソの背景に社会的なルールが存在することを実証し、ウソをつく心理を分析する。また、八百長に加担した元NBA審判、長年巨額のインサイダー取引を続けたトレーダー、不倫していた一般女性などが、いかにして自分の不誠実な行動を“正当化”していたのかを正直に語る。
たとえば大学院卒と詐称する重役が、便箋のレターヘッドや名刺、履歴書、ウェブサイトなどでいつも学歴を詐称していると、そのうち経費報告書のごまかしや、ビラブルアワーの水増し、公金濫用などに走ることは、想像に難くない。
http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=160831
首都圏連続不審死事件 ウィキペディアWikipedia)より
2009年(平成21年)8月6日、埼玉県富士見市の月極駐車場内にあった車内において会社員男性C(当時41歳)の遺体が発見された。死因は練炭による一酸化炭素中毒であったが、自殺にしては不審点が多かったことから、埼玉県警察の捜査が始まった。
その結果、Cは被疑者の住所不定・無職の女性、木嶋 佳苗(きじま かなえ、1974年(昭和49年)11月27日生まれ、当時34歳)と交際していたことがわかり、捜査していくにつれて、木嶋には他にも多数の愛人がおり、その愛人の何人かも不審死を遂げていることが分かった。埼玉県警は木嶋が結婚を装った詐欺をおこなっていたと断定し、9月25日に木嶋を詐欺罪の容疑で逮捕した。また、逮捕時に同居していた千葉県出身の40代男性から450万円を受け取っていた。
検察側は、論告において、「窓の外には夜空が広がっている。夜が明けると、雪化粧になっている。雪がいつ降ったかを見ていなくても、夜中に降ったと認定できる」との比喩を使い、状況証拠の積み重ねで木嶋の犯行を十分立証できると強調した。
これに対し木嶋及び弁護側は、練炭等は被害者から譲ってくれと頼まれて木嶋が渡したものであり、被害者の死は別れ話が原因の自殺や事故死であったとして殺人罪の無罪を主張した。
さいたま地方裁判所(大熊一之裁判長)は検察側の主張を全面的に認め、木嶋に対し求刑通り死刑を言い渡した。女性被告人に対する死刑判決は裁判員裁判では初めて。木嶋側は即日控訴した。
第二審の東京高等裁判所も第一審の死刑判決を支持し、2014年3月12日に木嶋側の控訴を棄却する判決を言い渡した。木嶋側はこれを不服として即日最高裁判所に上告した。
このまま死刑が確定すれば戦後15人目、あるいは16人目の女性死刑囚となる。

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『脳はこんなに悩ましい』 池谷裕二X中村うさぎ/著 新潮社 2012年発行
ダマし合う脳と身体 (一部抜粋しています)
中村 私いま、木嶋佳苗(きじまかなえ)のことがものすごく気になっているんです(註 交際男性3人への殺人罪などの疑いで逮捕、起訴。2012年4月さいたま地裁で死刑判決。現在控訴中)。
池谷 ああ、あの結婚詐欺の……。複数の人が気の毒な被害にあっていますね。
中村 ひどい虚言癖の持ち主で。
池谷 それは、お金を騙し取るため?
中村 まずはそこですよね。海外の音楽学校の学生で学費が……なんて嘘は詐欺師の常套手段で、男からお金を引っ張ってくるための戦略だと思います。でも、そうじゃない部分でも、虚言が多い。ブログで持ち物や食事を自慢したりしていたんですが、その世界観が実際の彼女とかけ離れているんです。自分で作った理想の自分像を演じているような感じ。
池谷 現実とは別に、バーチャル世界を持っているわけですね。
中村 そう。虚言癖の人は、自分すらダマしてしまうことがあるんだろうな、と思うんです。あまり嘘をつかない人は、嘘をついているときってすごく罪悪感がありますよね。ばれたらどうしようってひやひやしながら過ごしているから、自分が嘘をついていることを忘れないじゃないですか。でも虚言癖は、自分の嘘で暗示がかけられる。私は虚言癖の女が大好きなので、ずっと定点観測をやっているんですが(笑)、総じてテンションが高い。虚言で作られる自己世界に興奮しているというか。
池谷 すごい観察力ですね。その虚言構築は防御のためでしょうか?
中村 防御というと?
池谷 嘘がバレないように、無意識のうちに自分を高めていって、興奮状態に持っていく、というような、なりきってしまえばバレないですよね。その人にとっては「真実」になりますから鉄壁な防御です。
中村 なるほど。私は陶酔だと思うんですよね。その瞬間、脳内麻薬が出そうな感じがします。ウソをついている自分の言葉が、脳にフィードバックされて、どんどん世界ができ上がってくるんじゃないかと思うんです。
池谷 となると、自分の記憶をうまく修正できないのかもしれませんね。記憶は、確度と真偽の観点から、4つのパターンに分けられるんですよ。 (1)正しい記憶だという確信が高くて、実際に正しい場合 (2)正しい記憶だという確信が高いのに、実際は誤っている場合 (3)正しい記憶だという確信が低いのに、実際は正しい場合 (4)正しい記憶だという確信が低くて、実際に誤っている場合 今うさぎさんがおっしゃったような人は(2)にあてはまりますね。
中村 (1)と(2)では、脳の活動は違っていますか?
池谷 違いますね。(1)では、海馬が活動します。海馬は記憶を司る脳部位ですから、正しい記憶の場合に活動しているのは納得できます。一方、(2)では、海馬は活躍していなくて、代わりに側頭葉と後頭葉前頭葉の中間部が活躍します。ですから、脳活動を測ると、それが正しい記憶かどうかが、本人以上によくわかるんです。木嶋佳苗の海馬を測定してみたいですね。虚言に関係した話で言うと、子供の記憶は簡単に操作できるんですよ。捜査中の刑事が、子どもに、「虐待を受けたのか」と聞くと、その質問の聞き方自体が子どもの記憶を操作してしまって、ありもしなかったのに、「虐待を受けた」と思い込んでしまうことは珍しくありません。実際、親の冤罪に至ったケースもあるのです。
中村 そうすると、虚言癖の人は、子どもっぽさが抜けきらない人なのかもしれないね。
池谷 その可能性はありますね。あと、検証は難しいんですけど、一説によれば、赤ちゃんはまだ現実と夢の世界を区別できていないようです。成長につれて区別がつくようになります。虚言癖は、バーチャルとリアルの境界認識が不得手なまま成長してしまった可能性がありますね。