じじぃの「科学・芸術_48_ブラック・スワン」


ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質 ハードカバー 2009/6/19 ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (翻訳) amazon
●「ブラック・スワン(黒い白鳥)」とは何か?
むかし西洋では、白鳥と言えば白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、かの地には黒い白鳥がいることがわかった。白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。
ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。タレブによれば、「ブラック・スワン」には三つの特徴がある。一つは予測できないこと。二つ目は非常に強いインパクトをもたらすこと。そして三つ目は、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすることだ。

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『21世紀はどんな世界になるのか――国際情勢、科学技術、社会の「未来」を予測する』 眞淳平/著 岩波ジュニア新書 2014年発行
私たちはどのような未来を選択するのか (一部抜粋しています)
私たちが21世紀を生きていく中で心に留めておくべきこと、について3点紹介することにしましょう。
1点目は、「仕事」を取り巻く環境が大きく変化していくことです。
今後、人類の平均寿命は継続的に延びていきます。
それと並行して、健康で生きられる期間も急速に増えていきます。一方で、少子化傾向が収まり、出生率が急速に増えていく可能性は、今世紀全般を考えても、とても低いだろうと思われます。その結果、21世紀後半以降、80歳を越えて働くということがおそらく当たり前になるのです。
また社会における競争は、ますます激しいものとなっていきます。
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大変なことにも思えますが、自分の将来を見すえた上での努力こそが、21世紀の社会で充実した人生を送るための基礎となります。
21世紀を生きていく上で重要なことの2点目は、社会の激変に備えることです。
そこではまず、社会を変えていきそうな出来事がないか、日々の報道やインターネット上の確度の高そうな情報、周囲の人々の話などに意識を向け、これはと思うことがあれば、それに注目し続けること、が大切になります。
そしてこの作業を通して、来るべき未来の姿を予測していくのです。
その過程では、まず未来の予想を立て、それが正しいかどうかを検証しながら、予測を修正していく、という作業も必要となります。
これに関してジャーナリストの池上彰氏は、先々に起きるであろう巨大な事件や社会の変化などを予測するために、①日々、新聞などの報道をチェックすること、②その際、「あれっ」と思うことがあれば、注目してみること。③注目したことに関して、雑誌や本、テレビやインターネットなどで、よりくわしく調べてみること。④そこから自分で未来の予測を立て、それを「仮説」にして、当っているかどうかを、時間をかけて見てみること。⑤新たな報道などをもとにして、必要があれば自分の仮説を修正し、新たな予測を立ててみること、といった方法で自分の予測力が向上する、と述べています(『見直す力』)。
その際にはブラック・スワンの出現をつねに想定しておくことが、が不可欠です。
ブラック・スワンとは、評論家のナシーム・ニコラス・タレブ博士が考え出した概念で、もともとは17世紀末に、オランダ人探検家の一行が、オーストラリアで「黒い白鳥(ブラック・スワン)」を発見したことに由来します。それ以前、ヨーロッパの人々にとって「白鳥は白い」ことが常識であり、黒い白鳥は、存在しないものを指す言葉として使われるケースすらありました。
しかし、オーストラリアでの黒い白鳥の発見は、この常識を覆します。これ以降、白鳥=白いという長年の常識が、がらりと変わってしまったのです。
タレブ博士は、このブラック・スワンのケースを見ればわかるように、その後の社会を一変させてしまう出来事は、必ずどこかで起きる。その一方で、人間の知識や経験は限られていて、それを予測することが不得意だ、と述べています(『ブラック・スワン』)。
私たちの多くは、今後の予想を立てる際、「平均」とか「過去の傾向」とかいったものを参考にします。たとえば景気や先行きを予測したりする経済アナリストと呼ばれる人々も、これまでの景気はこうだったから、その延長戦上に、これとあれの要素をつけ加えて、今度はこうなるだろう、などと見通しを立ててことが一般的です。
しかしこの手法では、2008年以降、世界を襲った「世界金融危機」のような、巨大な危機をもたらす事態を事前に予測することはできません。その後の世界を大きく変える出来事は、過去二はなかった登場の仕方をすることがよくあります。過去の傾向を、単純に延長しただけでは、ブラック・スワンの出現を予知できないのです。
ここで何よりも重要なのは、「ブラック・スワン」はいつか現れること、を忘れないことです。
そして皆さんが、何かの兆しに気づいたら、もしかしたらこういうことが起きるかもしれないと、あえて、「極端な未来」を考えてみることが必要になります。