じじぃの「科学・芸術_41_虚時間宇宙」

【宇宙】ホーキング博士ノーベル賞を取れない理由とは… 動画 Dailymotion
https://www.youtube.com/watch?v=Dv-3j9rJjs8
  宇宙の波動関数

ホーキングの虚数時間って何?
日本でも有名な車椅子の天才、ホーキングは「宇宙は、虚数の時間から生まれた」としました。
虚数の時間?そもそも虚数って何?って感じですよね。
虚数とは、例えば電卓で「-1の√」を押すと変な英語が出てきてエラーになってしまうものがあると思います。これは、そんな数字存在しませんよ〜。というメッセージ。つまり、これが虚数なんです。
http://www17.plala.or.jp/utyuu-nazo/ho-kinngu.html
『ホーキング 虚時間の宇宙―宇宙の特異点をめぐって』 竹内薫/著 ブルーバックス 2005年発行
虚時間宇宙・その後の展開 (一部抜粋しています)
ホーキングが虚時間の無境界宇宙仮説を提出してから早くも20年以上の月日が経った。(ホーキングとハートルの論文は1983年に出ている)
今、ホーキングの仮説はどのような位置づけになっているのだろう? 初期宇宙が虚時間であったことは証明されたのだろうか、それとも否定されたのだろうか?
初期宇宙がホントに虚時間だったのかどうかについては、ホーキング自身も発言を続けていた。
「境界が存在しないことは、虚時間においては、物理法則が宇宙の状態を1つに決めることを意味する。だが、もし虚時間における宇宙の状態がわかれば、実時間における宇宙の状態も計算することができる。実時間においては依然として一種のビッグバン特異点が存在すると予想される。実時間においては依然として始まりがあることになる。だが、宇宙がどうやって始まったかについて、宇宙の外の何者かの助けを借りる必要はない。どうやって宇宙がビッグバンから始まったかは虚時間における宇宙の状態により決定されるのだ。したがって、宇宙は完全に自己完結した系になる」(「時の始まり」 竹内訳)
これはホーキングの一般向けの講演録から採ってきたものだが、どうやら、虚時間の本当の意味は、境界をなくすことというよりも、むしろ時の始まりにおいて物理法則をちゃんと機能させることにより、宇宙を自己完結的にすることにあったようだ。
宇宙の始まりは実時間だったのか、虚時間だったのか、という質問はホーキングにとっては意味をなさない。どちらでもかまわないのだ。ただ、実時間では物理量が定義できない(=無限大になる…)のに対して、虚時間では物理量が通常のふるまいをするので、虚時間を使うほうが便利なのである。
それでも読者は混乱するかもしれないし、私も混乱気味であるが、このような初期宇宙の動向について、最近の物理学ではどう考えているのだろうか。
重力理論に量子効果を採り入れたものとしては超ひも理論のほかに「ループ量子重力」といわれる分野の進展が著しい。いよいよ初期宇宙の研究も本格的に量子論が組み込まれてきた感じだが、たとえば、宇宙の波動関数はこんな格好になるという計算結果がある(画像参照)。
宇宙の大きさ(の逆数)もデジタルになっていて、このような宇宙では、量子効果によって特異点が回避されることもわかっている。
つまり、ホーキングとハートルの提案では、無理矢理、宇宙の始まりに丸い虚時間のキャップをはめたような気持ち悪さがあったが、最近では、ごく自然に量子重力理論の帰結として、宇宙の始まりの特異点は消滅しているようなのだ。それはツルツルのキャップというよりは、時空が量子的にゆらいでいるための特異点が(インクがにじむように)ぼやけてしまったようなイメージなのである。不確定性が効いているといってもいいだろう。
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超ひも理論やループ量子重力理論といった「量子重力理論」の候補からは、ブラックホールのふるまいについてホーキングの結論を支持する計算結果が出ているが、初期宇宙のふるまいについては、ホーキングの結論を修正する計算結果が提出されている。
今の時点では、ホーキングの理論について、次のような暫定的な評価を与えることができるだろう。
ホーキング理論の評価 ホーキングはブラックホールについては正しかったが、初期宇宙については人工的すぎた。
どうやら、虚時間と宇宙無境界仮説は、科学史の1ページに残って、やがては忘れられる存在になりそうだ。それでもホーキングのアイデア自体は、形を変えながらも連綿と受け継がれてゆくことだろう。