じじぃの「科学・芸術_21_カラー印刷・美しい本」

サロメ
(s-media-cache-ak0.pinimg.com HPより)

The Yellow Book 世界じゅうのおしゃれアイデアまとめ
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『世界の美しい本』 海野弘/解説・監修 三芳書房 2016年発行
19世紀末 出版文化の高まり 世紀末の本 (一部抜粋しています)
ウィリアム・モリスの<美しい本>という造本革命は19世紀末に大きな花を咲かせた。1900年前後は、本をつくる技術、そして美術の両面において大きな変換期であった。写真技術、製版技術の発達によって、カラー印刷が可能となり、色鮮やかな本がつくられるようになった。
本を読む人たちも大きく変化した。女性と子どもという新しい読者があらわれた。子どもの絵本、女性のファッションの本などがにぎやかに登場する。
挿絵などの視覚的な要素が印刷しやすくなり、挿絵の黄金時代が世紀末からはじまる。世紀末に登場するのはアール・ヌーヴォー・スタイルである。女性的、植物的な曲線が時代をあらわしている。
世紀末は、挿絵と写真の葛藤があり、挿絵が最後のにぎわいを見せていた。20世紀の半ばになると写真が支配的になってしまう。世紀末の本では挿絵が写真という新しいライヴァルの登場に対抗して、その表現を見せつけようとしている。
オ−ブリー・ビアズリーの挿絵はその最もいい例である。それまでの表現をこえるデカダンスでスキャンダラスなイメージは時代を切り裂いた。
英国では出版文化は世紀末に最高潮に達した。プライヴェート・プレスの<美しい本>の刺激で、一般の本のデザインもよくなった。フランスでは、ロートレックからアルフォンス・ミュシャにいたる、より絵画性の強い本が出されたが、英国のような、きちんとした活字のレイアウトによる、すぐれたデザインの本は少なかった。
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世紀末は、ぜいたくな<美しい本>のための<ベル・エポック(よき時代)>であった。手の仕事と印刷技術が絶妙のバランスを保っていた。第一次世界大戦は、その時代を終らせる。