じじぃの「人の生きざま_632_ブノア・マンデルブロ(数学者・フラクタル)」

Fractal Trip 01 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=F5XwL6w6qsY&feature=related
Fractal Zoom Mandelbrot Corner 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=G_GBwuYuOOs
追悼:ブノワ・マンデルブロ(1924 - 2010) Make: Japan
Wiredなどでも報じられているが、数学者でフラクタルの父、ブノア・マンデルブロ(Benoit Mandelbrot)が86歳の誕生日を目前にして亡くなった。
http://makezine.jp/blog/2010/10/rip_benoit_mandelbrot_1924-2010.html
ミトコンドリアが進化を決めた』 ニック・レーン/著 みすず書房 2007年発行
生命のフラクタルな樹 (一部抜粋しています)
フラクタル(「分解した」を意味するラテン語 fractusに由来)とは、どの縮尺でも同じように見える幾何学図形のことだ。フラクタルをその構成する部品に分類すると、部品も同じような形になる。フラクタル幾何学創始者ブノワ・マンデルブロが言ったように、「その形は全体に似た部品でどうにかして作られている」からである。ブノワ・フラクタルは、風雨、氷、浸食、重力などの自然の力によって無作為に作り出せ、そうして山並みや雲、川、海岸線などの自然界のフラクタルが生まれる。事実、マンデルブロは、フラクタルを「自然の幾何学」と言い表しており、1967年に『サイエンス』誌に公表した斬新な論文では、そのタイトルに提起された問題――「イギリスの海岸線の長さはどれだけか?」――に取り込むにあたってこれを利用している。フラクタルは、数学的に作り出すことも可能で、それには、枝分かれの角度と密度(「フラクタル次元」)を決める反復的な幾何公式がよく用いられる。
どちらのタイプのフラクタルも、スケール不変性と呼ばれる性質をもっている。つまり、どれだけ拡大しても同じように見えるということだ。たとえば岩の形は、崖だけでなく山の形にも似ていることが多い。だから地質学者は、写真を撮るときによくハンマーをそばに置き、見る人にスケールがわかるようにしているのだ。また、河川の支流のパターンは、広大な陸地全体でどれも似ている。宇宙から見るアマゾン川流域も、丘の上から見る幾筋もの小川も、あるいは浴室の窓から見る裏庭の土の浸食さえも、同じように見えるのだ。数学的に作った反復性のフラクタルの場合は、同じ形を無限に作り出すために、繰り返しの幾何学的規則が利用されている。Tシャツやポスターを彩る非常に複雑で美しいフラクタルの図案も、幾何学的規則(多くはかなり込み入った規則)を反復し、結果の点を面に描き込んでいくことによって、作り出されるのだ。多くの人にとって、深遠な数字の美にこれほど間近に触れられる機会はそうないだろう。
自然界のフラクタルの大半は、実を言うと真のフラクタルではなく、スケール不変性が無限の範囲をもってはいない。それでも、枝に生えた小枝のパターンは、木全体の枝ぶりと似ているし、組織や臓器のなかで血管が分岐するパターンは、全身でのパターンに似ている――どのスケールなのかわかりにくいことがあるのだ。もう一段規模を広げると、ゾウの循環系はネズミのものと似ているが、全体のサイズは6桁近く違う(つまり、ゾウの循環系がネズミのものより100万倍近くも大きいということで、1のあとにゼロが6つ並ぶ倍率だ)。このようなスケールの範囲でネットワーク(網状組織)の見た目が変わらないの場合、自然はそれを記述する言葉としてフラクタル幾何学を用いている。自然界のネットワークは、真のフラクタルではないとしても、フラクタルの数学原理で正確にモデル化できる程度にはフラクタルに近いのである。