じじぃの「人の生きざま_631_早石・修(生化学者)」

体内時計からみた食と健康 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SMdwaOAcbFU

訃報 早石修さん95歳=京大名誉教授、酸素添加酵素研究 2015年12月19日 毎日新聞
「酸素添加酵素」の発見と研究によって文化勲章を受章した生化学者で京都大名誉教授の早石修(はやいし・おさむ)さんが17日、亡くなった。95歳。
1920年、米カリフォルニア州生まれ。医師だった父に伴い、乳児期を米独で過ごし、42年大阪帝国大(現大阪大)医学部を卒業。米国留学後、米国立衛生研究所(NIH)の毒物学部長に就任した。その後、生体内の呼吸などの活動にかかわる酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)の存在を証明して評価を高めた。
http://mainichi.jp/articles/20151219/k00/00e/040/185000c
『脳のはたらきがわかる本』 小長谷正明/著 岩波ジュニア新書 2006年発行
体内時計 (一部抜粋しています)
眠らないでいると、2日目くらいからイライラしたり記憶力が落ちるといった精神症状が出はじめ、やがて錯乱状態になったり幻覚や妄想が出てきます。実験的にラットをまったく眠らせないでおくと、エサはふだん以上にたくさん食べるにもかかわらず、どんどんやせていき、10日か20日以内には死んでしまいます。
絶食させながらも十分睡眠をとらせたラットよりも、早く死んでしまったのです。つまり、眠らないと消耗死してしまうのです。そして脳は傷ついているといいます。
徹夜で一夜漬けの猛勉強とか夜なべ仕事、友だちとの語り明かしでもりあがったりすることがなければ、ほとんどの人は毎日毎日ほぼ規則正しいリズムで眠くなります。時間がくると眠らせるタイマーがあるみたいです。
松果体(しょうかたい)という脳のまんなかにある組織や、視床下部にある視索上核とよばれるニューロン神経細胞)群で間接的に光の情報を受けており、これらが体内時計として睡眠と覚せいのリズムをつくっているといいます。しかし、太陽の光のとどかない地下室で生活をしていると、ふしぎなことに25時間リズムになるそうで、昼夜24時間の1日とはずれがあります。地球をまわっている月が完全にひとまわりするのは約24時間50分なので、これと関係があるという説がありますが、ほんとうでしょうか? 根拠がいまいちはっきりしません。
夜になると、松果体メラトニンというホルモンを日中の100倍以上も分泌し、睡眠との関係がいわれてきました。
20世紀のはじめ、日本の石森國臣博士とフランスの学者がそれぞれ独自に、ずっと眠らせなかったイヌの脳せき髄液をとり、それをほかのイヌに注射すると、注射されたイヌが眠ってしまったという実験結果を報告しました。つまり、眠らせないと眠気をもよおす物質が脳せき髄液の中に出てくるのです。脳せき髄液とは、頭がい骨やせきついの内側をみたし脳やせき髄をひたしている液です。
70年後、井上昌次郎博士らはウリジンと酸化型グルタチオンという物質が睡眠に関連することをつきとめました。両方ともニューロンの機能をサポートするグリア細胞でつくられます。酸化型グルタチオンは興奮性のニューロンのはたらきをよわめる作用が、ウリジンはほかのニューロンのはたらきを止める抑制性ニューロンの活性をつよめる作用があり、ともに結果的に脳の機能を低下させることがわかっています。
しかし、直接的に睡眠にスイッチを切りかえる物質はプロスタグランジンD2であり、これも京都大学早石修博士によってつきとめられました。この物質は脳の組織そのものでつくられるのではなく、脳室という脳の中心にある空洞部分の脳せき髄液にふんわりとただよっている脈絡叢(みゃくらくそう)という組織や、髄液にある顆粒(かりゅう)などでつくられています。これらの組織では起きているあいだにD2を徐々に分泌して、濃度が高くなると眠気をもよおすというわけです。
おもしろいことに、マラリアにかかった人は高熱を出すとともに眠くなりますが、それは感染した人の免疫機能を混乱させるために、マラリア原虫がD2を分泌させるためだとのことです。ツェツェバエが媒介するアフリカのねむり病もトリパノソーマという原虫が原因ですが、この病気になると脳せき髄液中のD2はふつうの人の100〜1000倍にもなっているそうです。
体内時計とD2の関係はどうなっているかというと、残念ながらまだわかっていません。