じじぃの「人の死にざま_1654_アンドレ・ルヴォフ(微生物学者)」

溶原性ウイルスの生活環 (kanazawa-u.ac.jp HPより)

A‐8 溶原性ウイルスを保有する細菌細胞への交流磁界影響
2.溶原性ウイルスの性質
影響評価に用いる溶原性ウイルスの性質として図1に示すようにウイルスのDNAが大腸菌のDNAに組み込まれ共に細胞分裂を繰り返す(溶原化)とウイルスが大腸菌内で増殖し細胞を突き破り放出される(溶菌化)の二つの性質を持つ.そのどちらになるかは大腸菌の生理状態に関係し,生理状態が良好であれば溶原化,不良であれば溶菌化となる.
また,ウイルス感染時の状態が良好で溶原化した場合でも外部刺激などにより生理状態が悪化すると溶原化から溶菌化に移る(ウイルス誘導).このウイルス誘導の原因となる生理状態の悪化についてはDNAの損傷,温度変化,PH値の変化,飢餓状態などの原因が知られている.
http://magcap.w3.kanazawa-u.ac.jp/pdf/student/studentthesis2004/sunada.htm
アンドレ・ルヴォフ ウィキペディアWikipedia)より
アンドレ・ミシェル・ルヴォフ(Andre Michel Lwoff、1902年5月8日 - 1994年9月30日)はフランスのオーヴェルニュ地方アリエ県で生まれた微生物学者である。
1965年には酵素とウイルスの合成の遺伝的制御の研究によってノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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『ウィルスのしくみと不思議―人類最大の敵・病原性ウィルスのすべて』 長野敬/著 日本文芸社 1997年発行
攻撃か和解か 溶原化サイクルの不思議 (一部抜粋しています)
大腸菌に感染するもののなかでも、ラムダ(λ)ファージは特別の生活環によって研究者の注意を引いた。
ラムダファージはT系ファージのように感染したらすぐ相手細胞のなかで急速に殖えて細胞を破裂させ、子ファージを外に送り出すという膨脹政策をとらない。相手のなかに収まって鳴りを潜めるのだ。いわば和解路線といえる。ただし真の若いでなく、宿主の生存が怪しくなればいつでも見切りをつけて逃げ出すのだから獅子身中の虫が昼寝をしているともたとえられる。
細菌細胞のなかで、こうして眠っている状態を溶原化という。フランスの微生物者ルヴォフはファージの溶原化機構の研究により1965年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
ラムダファージは、形が丸い頭部と細長い尾で、遺伝物質はDNAであることなど、一見T系ファージと似ている。しかし、もっているDNAの量は、たとえばT4ファージの数割にすぎず、大きさは中型である。
ラムダファージも、感染後は定石通りに頭部のタンパク質部品を合成し、複製したDNAを詰め込んで子ファージを量産する。その経過は、結構込み入っている。たとえば頭部は、宿主から得る1種類のタンパク質も含めて1ダースくらいの部品の組み合わせだ。しかしある教科書はこういっている。「ラムダファージに対する興味の95パーセントは、宿主細胞を溶原化する能力にある」と。
溶原化という言葉は難解だが、せんじつめれば簡単なことである。ラムダファージのDNAは二重らせんの長い線状分子だ。両方の末端がうまく合致する相補的な配列になっているので、感染すると細胞内で環状になる。環状のまま、内側をなぞるようにしてDNAが複製されていくのが溶菌化の状態である。