じじぃの「人の死にざま_1649_ジョージ・ビードル(遺伝学者)」

biografia de george wells beadle 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=H3g4Lxs-vbw
アカパンカビの栄養要求変異の研究

ジョージ・ウェルズ・ビードル ウィキペディアWikipedia)より
ジョージ・ウェルズ・ビードル(George Wells Beadle、1903年10月22日 - 1989年6月9日)は、アメリカ合衆国の遺伝学者で、遺伝子が細胞内の生化学過程を制御していることを発見し、エドワード・ローリー・テータムとともに1958年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。また同年にはジョシュア・レダーバーグも受賞している。
ビードルとテータムは、アカパンカビ(Neurospora crassa)にX線を照射し、突然変異を起こさせた。それらの仲から代謝系路上の特定の酵素が変異しているものを探し、その生理と遺伝について研究を行った。1941年の実験で遺伝子と酵素反応が直接関連していることをあきらかにし、これが後に「一遺伝子一酵素説」として知られるようになった。

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『精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』 立花隆利根川進/著 文春文庫 1993年発行
遺伝学の流れと生化学の流れ (一部抜粋しています)
――しかし遺伝学というのは、基本的に変異が親から子へどう伝わるかをいろんな交配実験で見ていくことで成立する学問ですね。メンデルのエンドウマメなら種子の色のちがいだし、モーガンショウジョウバエなら目玉の色のちがいなどの変異を見るわけですね。そういう変異は簡単に肉眼で観察できるでしょうけど、ファージとか最近といったら、目に見えないほど小さいわけでしょう。その変異の観察なんて大変じゃないですか。いくら系がシンプルだといっても、そういう面倒を考えたら、必ずしもいい研究材料にならないんじゃないですか。
「それがそうでもないんですね。ちょっとしたテクニックで変異は簡単い見わけられる。たとえば、大腸菌の中で抗生物質に耐性を持つ変異株がある。その変異株があるかどうかは、大腸菌を、抗生物質が含まれた培地で培養してみればいい。耐性がない大腸菌はみんな死んでしまい、耐性菌だけが生き残ってコロニーを作る。それは肉眼で観察できる」
生物学史上有名な実験に、アメリカのビードルとテータムによって行われたアカパンカビの栄養要求変異の研究というものがある。これは、「一遺伝子一酵素説」のもとになった実験として、いま高校の生物の教科書に必ずのっている実験である(画像参照)。
アカパンカビとは、パンをほったらかしておくとはえてくるピンク色のカビである。このカビがどういう栄養分を取って成育していくかはよくわかっている。だから、パンの上でなくとも、その栄養分を入れてやった培地の上なら、カビはどんどんふえていく。このカビにX線を照射してやると、いろいろな突然変異が起こる。そのうちのあるものは、普通の栄養分を入れた培地の上では育たなくなる。しかし、あるアミノ酸を培地に加えてやると育つようになる。いままで成育に必要ないと思われていたアミノ酸が必要になったということである。栄養要求の変異が起きたのである。
なぜそんなことが起きたのだろうか。ビードルとテータムの巧妙な実験は次のようなことを明らかにした。あとから培地に加えることになったアミノ酸(アルギニン)は、実はもともとアカパンカビの成育に必要なアミノ酸だった。しかし、もともとアカパンカビには、そのアミノ酸を自分で生合成する能力を持つ酵素があったので、外部からそれを加えてやる必要はなかった。ところが、X線の作用でアカパンカビのDNAに変異が生じ、そのアミノ酸を生合成していた酵素を作り出せなくなってしまった。だから、変異が起きたアカパンカビは、外部からアミノ酸を加えてやらないことには、成育することができなくなってしまったのである。
遺伝子を一つこわすと、酵素の産生能力が一つ失われるということがこの実験でわかり、「一遺伝子一酵素説」が唱えられることになった。
いまでは、遺伝子が合成するのは酵素にかぎらず、広く一般のタンパク質(酵素タンパク質の一種)であることがわかってきたので、「一遺伝子一酵素」といいきるのは必ずしも正しくない。しかしこれを「一遺伝子一タンパク質」と読みかえれば、この考え方は基本的には正しいわけである。
この実験は1941年に行われたものだが、遺伝子とタンパク合成の連関をはじめて明らかに示した分子生物学の実験として、高く評価されている。ビードルとテータムはこの業績によって1958年のノーベル賞を受けている。利根川さんが留学したカリフォルニア大学のサンディエゴ校の生物学部を作ったボナーは、実はこのビードル、テータムの弟子であり、この実験にも参加した人なのである。