じじぃの「人の生きざま_590_柄本・明(俳優)」

劇団東京乾電池そして誰もいなくなった 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=r3_2I79DfXw
劇団東京乾電池
http://www.tokyo-kandenchi.com/
柄本明 ウィキペディアWikipedia) より
柄本 明(えもと あきら、1948年11月3日 - )は、日本の俳優、コメディアン。愛称は、えもっちゃん。東京都中央区出身。ノックアウト所属。東京都立王子工業高等学校機械科卒業。妻は角替和枝、息子は柄本佑柄本時生

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『正直エビス』 蛭子能収/著 新宿書房 1996年発行
粗品の謎 (一部抜粋しています)
1月は東京乾電池の芝居公演で名古屋、京都、大坂、青森と行って来ました。
これらの地方には東京乾電池の芝居を楽しみにしている固定ファンというのがいます。芝居が好きというファンと役者が好きというファンがいまして、芝居が好きなファンは岩松了が描くなんともいえない物語に期待しており、役者が好きなファンはたいてい柄本明のなんとも言えない魅力にひかれているわけです。
東京乾電池のだ座長である柄本さんは芝居の本格派と申しますが、やさしく言えば芝居が好きで好きでたまらないといった人で頭の中は芝居一筋といった感じの人です。だから地方公演仲も早い時間に楽屋に入り、納得のいかない役者に稽古をつけるのであります。時に大声で怒鳴り怖くなることもありますが、うーむ、役者だなーと私は思っているのです。
大坂の公演の際、やはり4時頃から若手の役者に何べんもリハーサルをつけていた時です。楽屋にガードマンから電話が入りました。楽屋には私1人がいて、私がその電話を取ったのですが「柄本さんに面会の人が来てますが、どうします?」と言うので、その面会の人の名前を聞いて、私が舞台で稽古中の柄本さんに知られました。
そして柄本さんは「水野?」なんて首を傾けながら稽古を中断して劇場に裏口まで歩いて行くのでした。
さて、そんなことがあったことをすっかり忘れていた翌日、楽屋に私と柄本さんが2人だけになった時でした。
「蛭子さん、昨日、ほら面会に来た人、私にサインを求めてきたファンだったんですけどね、その女(ひと)、お礼にってプレゼントくれたんですが、一体何をくれたと思います?」と言うのです。
ああ、そういえば昨日そんなことがあったっけと「何です、何をくれたんです」と私は身を乗り出しました。
「ほら、これです。このショッピングバッグからよく見てて」と私に手渡された紙のバッグは割と大きく、きれいな三越デパートのものでした。それを手に持った感触は想像したより軽いので、ん? これは何か小物の変な物に違いない、もしかしたら大人のオモチャみたいなやつかなと思い胸をワクワクさせました。
大きな三越のバッグの中から出て来たものは大丸の包装紙に包まれた物でした。
ほう、ショッピングバッグが三越デパートで包装紙が大丸デパートか、これは凝っているな。で、その包みを手にした感触は、やはり軽い。なにしろ大きなバッグから、うんと小さな包みになりましたからね。ますます、これは大人のオモチャだな、と私は思いを強くして、大丸の包み紙をパシャパシャと音を立てながら開いてゆきました。
出てきた物は!! 四角い箱、茶色っぽくて安そうな紙の箱でした。そして郵便局粗品と印刷された文字がある。そして一気に箱を開けると、そこには箱に印刷された文字通りの粗品が入っているではありませんか。小さな皿です。これは、郵便局に定額貯金か、その手のものをしたときにくれる、あの粗品です。まったく文字通りの粗品だったのです。
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これはその女の人にとって十分マジな考えだったのだと私は思います。粗品の皿だって、いつかは使おうと思ってた大事な物だったんでしょうね。大阪ってとこは、こういうことが割とスンナリできる土地柄なんです。