じじぃの「未解決ファイル_259_抗がん剤(P-THP)」

抗がん剤は効くの?効かないの?」4時限目 Q&A トークセッション 勝俣 範之 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=clB4IuFzy20
サイエンスZERO 「クジラ生態調査からがん治療まで! “炭素14”新時代!」 (追加) 2017年3月5日 NHK Eテレ
【司会】南沢奈央竹内薫 【ゲスト】横山祐典 (東京大学大気海洋研究所教授)
年代測定で知られる「炭素14」が、いま大進化! 測定精度が向上し、南極の巨大氷床が崩壊した年代が1万年も修正されるなど、歴史の修正が相次いでいる。
また、新たな使い方も始まった。医療の分野では、薬に炭素14を組み込むことで、体内での動きを追跡。抗がん剤治療に期待が集まっている。さらに海洋生物学の分野では、魚の体内に蓄積された炭素14を見ることで、クジラの生態調査に応用!
炭素14の活用は年代測定以外にも広がっています。それが物質の動きを追跡するトレーサーという使い方。
アメリカのがん治療の現場では、炭素14を薬に組み込むことで、体の中での動きを追跡。患者一人一人に相性のいい薬を短時間で見つけ出せるようになっています。
カリフォルニア大学デービス校。がんの治療や臨床試験を行う総合がんセンターです。
本格的な治療の前に抗がん剤の効果を見極める方法とは一体どんなものなのか。
まず、抗がん剤に含まれている炭素12を炭素14に置き換えます。そして実際の治療で使う量の僅か100分の1副作用の出ない量だけ患者に投与します。
翌日、血液を採取。つまり、抗がん剤がどれだけ効いているかを調べます。
この方法を使えば、最短2日で患者とその抗がん剤の相性が分かるのです。
まだ臨床試験の段階ですが、試験に協力した患者たちからは大きな期待が寄せられています。
抗がん剤を投与する前に効果が分かる、しかも短時間で分かるというのは夢のような技術です。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp574.html
がん治療薬投与に新手法 細胞近くで効果的放出 2015年3月11日 熊本日日新聞社
前田特任教授によると、がん細胞内にできる血管は「欠陥だらけ」という。「体内の通常の血管の壁は、ち密にできていて、血管内の大きな分子(高分子)は通り抜けられない。ところが、がん細胞内の血管の壁は大きな隙間が多く、周囲の細胞へと高分子が漏れ出す」
これは「EPR効果」と呼ばれ、高分子の抗がん剤を血管内に投与すると、がん患部に薬剤を集めることができる。前田特任教授が開発して1993年に世界初の高分子型抗がん剤として承認された「スマンクス」も、EPR効果を生かしたものだ。ただ、スマンクスは投与に高い技術が求められるなど、改良すべき点もあるという。
このため前田特任教授が取り組んだのが、EPR効果に加えて、がん細胞の近くで効果的に薬剤を放出させる仕組みだ。「がん細胞の近くは、正常細胞に比べて酸性度が高い。酸性度が高いことを利用して、薬剤の運び役の高分子『HPMA』から、薬剤である『THP』を切り離す仕組みを開発した」
HPMAから切り離されたTHPは、がん細胞の表面に特有な構造を利用して内部に入り込む。THPは、がん細胞の中でDNAを切断して死滅させ、治療するという。
http://qq.kumanichi.com/medical/2015/03/post-2454.php
文藝春秋 2015年10月号
副作用のない抗がん剤への挑戦 ノンフィクション作家 奥野修司 (一部抜粋しています)
前田教授が新薬の開発に成功したのは3年前。臨床で使ってくれる病院がどこもなく、唯一、引き受けてくれたのが旧知のD(緩和ケアが専門)医師で、現在もD医師が自由診療を実地している。自由診療とは保険が利かない診療のことで、抗がん剤の量によって料金は違うが、1回あたり7万〜10万円かかるという。
前田教授は1938年生まれで現在76歳。東北大学農学部を卒業したあと、フルブライト奨学生としてカリフォルニア大学大学院を修了。帰国後、東北大学医学部で細菌学の助手を務めたあと、68年にハーバード大学がん研究所で”がん研究のゴッドファーザー”といわれるシドニー・ファーバー教授に師事した。71年に帰国してから熊本大学に移り、97年に高松宮妃癌研究基金学術賞、2011年には、S(前立腺がんで肺にがんが転移した患者)さんに使われた抗がん剤の開発の元になる研究成果、つまり高分子型抗がん剤の発見と作用メカニズムの研究で、がんの基礎研究で国内最高の賞といわれる吉田富三賞を受賞している。
がん研究のトップランナーにもかかわらず、日本でそれほど知られていないのは、発表する論文のほとんどが英文であることと無関係ではないだろう。しかしリサーチ・ゲート社によると、その論文の引用頻度は、今年の1月から7月までの7ヵ月間で世界中から2630回と、トップクラスなのだ。
それにしても、余命2、3ヵ月といわれたSさんがなぜ完全寛解を宣告されるまで回復したのか。なぜ副作用がなかったのか。その新薬と通常の抗がん剤との違いは、「薬が腫瘍の局所だけに届く」という優れた特性にある。
世界最初の抗がん剤は毒ガスから生まれた。そのことからもわかるように、一般の抗がん剤は、がん細胞にとっても、正常な細胞にとっても猛毒である。
シャーレの上のがん細胞に直接抗がん剤を垂らせば、どんながん細胞も死滅するが、体内に抗がん剤を入れると、がん細胞だけをターゲットにできず正常細胞もズタズタにするから、最後はがんで死んだのか抗がん剤で死んだのかわからないということがしばしば起こる。
抗がん剤はいまでもがん治療の柱だが、こうした効果の限界は早くから知られており、がん組織だけを攻撃してくれる”魔法の弾丸”を開発すべくだという考え方が80年代から研究者の間に広まった。これがDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)という新しい薬の開発につながっていく。
すでにいくつかのDDS製剤がアメリカで承認されているが、副作用も報告されている。東京大学大阪大学などでも現在、実用化の研究が進んでいるという。
Sさんに投与された抗がん剤もこのDDSの流れを汲むものだ。
正式名称は「P-THP」。Pはポリマー(高分子物質)で、THPはピラルビシンという抗がん剤である。ピラルビシンは、1988年に発売された古い抗がん剤。つまりP-THPとは、ポリマーにピラルビシンを結合させたものだ。
そのポリマーに古い抗がん剤を付けただけで抗がん剤の性質が変わり、画期的な「新薬」になったのである。

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どうでもいい、じじぃの日記。
2015年10月号 『文藝春秋』に「副作用のない抗がん剤への挑戦」というのが載っていた。
「それにしても、余命2、3ヵ月といわれたSさんがなぜ完全寛解を宣告されるまで回復したのか。なぜ副作用がなかったのか。その新薬と通常の抗がん剤との違いは、『薬が腫瘍の局所だけに届く』という優れた特性にある」
この抗がん剤の薬は保険適用外なので、1回あたり7万〜10万円かかるらしい。
もう5年生きていれば、保険適用になるかもしれない。