じじぃの「人の生きざま_527_スバンテ・ペーボ(進化遺伝学)」



スバンテ・ペーボ: DNAがつなぐ私たちの内なるネアンデルタール人 動画 ted.com
遺伝学者スバンテ・ペーボ博士が、国際的な大規模研究の結果から、現代人の祖先がアフリカを旅立った後にネアンデルタール人と交配したという、遺伝的証拠を紹介します。私たちの多くはネアンデルタール人のDNAを持っているのです。また、博士は小指の小骨から新しいヒトの種を発見した経過も説明します。
http://www.ted.com/talks/svante_paeaebo_dna_clues_to_our_inner_neanderthal?language=ja
4代前にネアンデルタール人の親、初期人類で判明 2015.06.25 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
サンプルから取り出されたゲノムは不完全なものだったが、その6〜9%がネアンデルタール人に由来することを突き止めるには十分だった。現代人のゲノムの場合、この割合は最大でも4%だ。
一見たいした違いはないように見えるかもしれない。しかし、この数パーセントの差が大きな違いをもたらした。ペーボ氏らは「純粋にネアンデルタール人由来と思われる染色体の大きな破片を7つ」発見している。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/062400156/
NHKスペシャル 「生命大躍進第3集 ついに“知性”が生まれた」 2015年7月5日
【番組ナビゲーター】新垣結衣
最終回の第3回は、私たちの“知性”の誕生の謎に迫る。悠久の生命史の中にあって、文明を持ちうるほど高い“知性”を持った生き物は、私たち人間・ホモサピエンスだけだ。どのような進化の物語の末に、私たちはこの“知性”を獲得できたのだろうか?
石器の道具を比較すると、技術格差が交代劇の原因であったことがわかる。この技術格差をもたらしたさらなる原因は、種として持っている学習能力の違いであったと考えられる。
言語能力に関しては、言語能力に必要なFOXP2という遺伝子の配列がヒトとネアンデルタールでまったく同一であることから、ネアンデルタールは言語能力を持っていたと考えられている。したがって、生存か絶滅かを決定づけたのは学習能力の違いであった。
マウスにヒト型FOXP2遺伝子を導入したら、大脳基底核シナプス可塑性と樹状突起のコネクションが増えたという驚くべき論文が発表された。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2015/0705/
スバンテ・ペーボ ウィキペディアWikipedia)より
スバンテ・ペーボ(Svante Paabo、1955年4月20日 - )はスウェーデン生まれの生物学者。専門は進化遺伝学。
1955年にストックホルムノーベル賞受賞者スネ・ベリストロームと母エストリアン・カリン・ペーボの息子として生まれる。
ウプサラ大学で1986年に学位を取り、1997年からドイツのマックス・プランク進化人類学研究所で遺伝学部門のディレクターを務めている。
ペーボの部門は2002年に”言語遺伝子”FOXP2を報告した。この遺伝子は言語障害のある、ある人々で欠損している。ペーボは古代人類に遺伝学の手法を用いる分野、古遺伝学の創始者の一人として知られている。2006年にはネアンデルタール人のゲノムの復元計画を発表した。2007年にはタイム誌で、もっとも影響力のある100人に選ばれた。

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ネアンデルタール人は私たちと交配した』スヴァンテ・ペーボ 野中香方子訳 文藝春秋BOOKS
7月放送 NHKスペシャル「生命大躍進」に著者登場!
絶滅し遺伝子が絶えた筈のネアンデルタール人。だが化石から復元したそのDNAは現生人類にも残っていた! 世紀の発見の内幕。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/1639020400000000000R
ネアンデルタール人は私たちと交配した』 スヴァンテ・ペーボ/著、野中香方子/訳 文藝春秋 2015年発行
ネアンデルタール人は私たちの中に生きている (一部抜粋しています)
2009年5月、5人の現代人ゲノムの配列解析を始めた。それらの新鮮なDNAは、ネアンデルタール人のDNAとは違って、バクテリアDNAの混入や化学的なダメージが少なく、それぞれから、ネアンデルタール人の5倍ものDNA配列が得られた。1、2年前、ライプチヒでこうした作業を行うことは考えられなかったが、454社やイルミナの技術により、今ではわたしたちのような小さなグループでも、複数の完全なヒトゲノムをほんの数週間で配列決定できるようになったのだ。
エドは、ドゥブロヴニクで説明した手法によって、その5つのゲノムとヒトゲノム参照配列(リファレンスゲノム)の共通の祖先がどのくらい昔に生きていたかを推定した。ヨーロッパ人、パプア人、中国人と参照配列は、およそ50万年前に共通の祖先を持っていた。アフリカ南部のサン人を加えると、その年代はほぼ70万年前に押し上げられた。現代人の中で、サン人(および近縁のグループ)と、他の地域の人々との分岐点は、最も時代が古い。こうして見ると、ネアンデルタール人と現代人の祖先がいた83万年前という時期の意味がはっきりしてくる。サン人との共通の祖先が生きていたのが70万年前。ネアンデルタール人との共通の祖先がいたのはそれよりわずか13年前だ。ネアンデルタール人はわたしたちとは異なるが、それほど大きな隔たりはないのである。
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机をぼんやりと見つめるうちに、その結果が予想外だったのは、出アフリカ説と対立するというだけでなく、一般的な多地域進化説も支持していないからだということに思い至った。それは、ヨーロッパ人はネアンデルタール人から、アジア人は北京原人から進化したと主張するが、わたしたちが発見した結果では、ネアンデルタール人はヨーロッパ人だけでなく、中国やパプアニューギニアの人々にもDNAを伝えていた。なぜこんなことが起きたのだろう? わたしは考えが定まらないまま、机上の生理を始めた。最初はゆっくりとだったが、次第に勢いづき、古いプロジェクトのがらくたを次々に捨てていった。机上にたまっていた埃が宙に舞う。新しい章の始まりだ。机をきれいにしなければ。
家庭的な仕事は、時として思考を助ける。わたしは掃除をしながら、地図を思い描き、現世人類を表わす矢印がアフリカから出て、ヨーロッパでネアンデルタール人と出会うまでを想像した。
彼らがネアンデルタール人との間に子をもうけることも想像できた……その子どもたちは現世人類に組み込まれた。だが、ネアンデルタール人のDNAがどうやって東アジアに入ったかを想像するのは難しかった。現生人類の移動に伴って中国に入っていったとも考えられるが、もしそうなら、中国人とネアンデルタール人との一致度は、ヨーロッパ人とネアンデルタール人のそれより低くなったはずだ。
その時、わたしは気づいた。現生人類の矢印は、アフリカから出てまず中東を通過する! そこで現生人類はネアンデルタール人と出会ったのだ。彼らがネアンデルタール人と交配し、その後、アフリカの外の全人類の祖先になったのであれば、アフリカの外の人は皆、ほぼ同じ量のネアンデルタール人のDNAを持つことになる(画像参照)。おそらくこれが正解だろう。だが、これまでの経験から、わたしの直感はあてにならないとわかっている。幸い、パターソン、ライシュ、モンティがこの推測を数学的に検証してくれるだろう。そしてわたしが間違っていたら、正してくれるはずだ。