じじぃの「人の死にざま_1540_ピエール=シモン・ラプラス(数学者)」

KCL Physics Skills and Culture Podcast: Laplace's Demon 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=vedZ9rNV29c
微分方程式

ピエール=シモン・ラプラス ウィキペディアWikipedia)より
ピエール=シモン・ラプラス(Pierre-Simon Laplace, 1749年3月23日 - 1827年3月5日)は、フランスの自然科学者、数学者、物理学者、天文学者
「天体力学概論」(traite intitule Mecanique Celeste)と「確率論の解析理論」という名著を残した。 1789年にロンドン王立協会のフェローに選出された。

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『新・進化論が変わる』佐川峻/中原英臣/著 ブルーバックス 2008年発行
進化は連続的な出来事か不連続な出来事か より
西洋の自然科学を支えている根本的な原理は、連続的な因果律である。地球を含めた宇宙におけるすべての自然現象は結果であり、その結果には必ず原因が存在すると考える。因果律とは、この原因と結果の間には一定の関係があるという思想である。
フランスの自然科学者デカルト(1596〜1650年)以来、多くの科学者は、自然は巨大で複雑な精密機械であり、それは数学的原理と自然の法則によって動いていると考えてきた。そこから導かれる理論は「決定論」と呼ばれ、自然界で起きているすべての出来事は、それに先立つさまざまな原因によって決定されると信じられてきた。
こうした原理はイギリスのニュートン(1642〜1727年)とドイツのライプニッツ(1646〜1716年)によって確立された。この2人の偉大な科学者が発明した微分方程式は、多くの科学者の、自然が単なる機械であるという考えを強化し、さらに決定論を究極の心理と信じ込ませる魔法の道具でもあった。
たとえば、ある天体に作用している力がわかっていれば、微分方程式によってその天体の軌道を計算することができる。さらに、その天体のある瞬間の位置とそのときの運動の速さがわかれば、過去ばかりか未来の天体の位置さえ計算できる。
こうしたことから、微積分を用いれば、どんな物体の未来における状態も予想できるという考えが発生する。この考えを推し進めたフランスの数学者ラプラス(1749〜1827年)は、あらゆる未来は厳密に決定されていると主張した。
ラプラスはいう。
宇宙の現在の状態は、過去の結果か、未来の原因である。ある与えられた瞬間に作用するすべての力と、物質を構成するあらゆるものの相互の位置を知ることができる知性があり、しかも、その知性がこうしたすべてのデータを解析できる能力をもっていれば、宇宙に存在しているすべての物質の動きをたったひとつの公式にしてしまえるだろう。このような知性にとって、不確実なものは何もなく、未来も過去もまたたむ間に私たちの目の前に提示されるだろう」
このような知性を当時の人たちは「ラプラスの魔物」と呼んだ。西洋の自然科学は、こうした知性の存在を信じたうえで、21世紀の今日まで、あらゆる分野で驚くほどの科学的成功と限りない技術的進歩を遂げてきた。
そもそも微積分とは、ある物体が無限に小さい時間に無限に小さな距離だけ進むというような無限小の量を基本とした原理である。したがって微積分は明らかに連続的な概念である。このことから西洋科学は、宇宙におけるあらゆる自然現象を連続したものとしてとらえることによって、はじめて成立する体系である。
西洋の自然科学は、ガリレイニュートンが発見した物理学における運動法則のあまりにも見事な成功によって、こうした連続概念の虜になってしまった。当然のことながら、西洋の自然科学が万能と信じられていた19世紀に誕生したダーウイン進化論が、こうした自然を連続的にとらえるという立場をとったのは自然な成り行きといえる。
しかし、西洋の近代科学が「知性」と呼ぶこのような決定論に必要不可欠とされてきた道具である微積分的な思考法が、果たして絶対的な原理なのだろうか。宇宙に存在するすべての物質の振る舞いを、微分方程式で何から何まで記述することができるのだろうか。