じじぃの「神話伝説_34_アリアドネ(ギリシャ神話)」

Theseus and the Minotaur 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=8qrZ1clEp-Y
Theseus and the Minotaur (Part 1 of 3) 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=OgLAz3HOg7I
テセウスミノタウロス

アリアドネ ウィキペディアWikipedia)より
アリアドネ(Ariadne)は、クレタ王ミノスと妃パシパエのあいだの娘である。テセウスクレタの迷宮より脱出する手助けをしたことで知られる。アリアドネという名は「とりわけて潔らかに聖い娘」を意味するので、この名からすると本来女神であったと考えられる。
【迷宮とアリアドネの糸
アリアドネテセウスに恋をし、彼女をアテネへと共に連れ帰り妻とすることを条件に援助を申し出た。テセウスはこれに同意した。アリアドネは工人ダイダロスの助言を受けて、迷宮(ラビュリントス)に入った後、無事に脱出するための方法として糸玉を彼にわたし、迷宮の入り口扉に糸を結び、糸玉を繰りつつ迷宮へと入って行くことを教えた。
テセウスは迷宮の一番端にミノタウロスを見つけ、これを殺した。糸玉からの糸を伝って彼は無事、迷宮から脱出することができた。アリアドネは彼とともにクレタを脱出した。

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『私のギリシャ神話』 阿刀田高/著 NHK出版 2000年発行
アリアドネ 私を連れて逃げて (一部抜粋しています)
ギリシャの島々へはアテネ空港から放射状に空路が伸びている。空港のロビーに座っていると、いくつもの島の名前が表示されていて、
――えーと、あの島はどこかな――
1つ1つ確認するのが楽しい。どれもみな歴史のエピソードをはらんだ風光明媚の名勝地だ。その中でももっとも多くの旅行者を集める島と言えば、やはりクレタ島だろう。ミノア文明発祥の地、ギリシャ神話との関わりも深い。
大神ゼウスがパレスチナの海岸からエウロペをさらい、この島にたどりついて交わったことはすでに伝えた。この組み合わせから生まれた子どもの1人がクレタ島の伝説的な大王ミノスで、ミノア文明の名称もここから来ている。ミノス王の妃がパシパエ、王女がアリアドネという家系図である。
ミノス王は王位継承のとき海神ポセイドンに、
「私を王位につけてくれたら、立派な雄牛を神のいけにえに捧げよう」
と約束しておきながら、王位に就いてしまうと、りっぱな雄牛を屠るのが惜しくなり、みじめな牛を捧げた。ポセイドンはおもしろくない。仕返しに王妃の心を狂わせ、王妃がこのりっぱな雄牛に激しい恋情を抱くようにしてしまった。王妃は雄牛と交わって半人半牛の子を生む。頭が牛、体が人間の男、ミノタウロスである。
――さあ、どうしよう――
ミノス王は王宮に仕える建築家ダイダロスに命じて複雑な迷路を持つラビュリントスを造らせ、その奥にミノタウロスを閉じ込めた。いったん中へ踏み込んだら簡単には外へ出られない。脱出は不可能と言ってよい。ミノタウロスはここで成長し、人間を餌として食らう凶暴な怪物となった。凶暴であればこそ迷宮の奥深くに閉じこめておかねばならなかったわけである。
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クレタ島に送られたテセウスは、その日のうちに王女アリアドネの心をつかんでしまう。「英雄色を好む」を地で行き、こっちのほうの手もすばやい。アリアドネはひとめ惚れ。エロスの金の矢に射られた、とも言われている。
――すてきな人だわ。なんとかしてあげなくちゃあ――
迷宮の設計者であるダイダロスのもとに走り、
「逃げ道を教えて」
「私にもわからんのです。設計図は王様の命令で焼いてしまいましたし、あんまり複雑に作ってしまったものだから……」
「なんとかならないの?」
「金糸」を持って入りなさい。一端を出入口に結んでおいて」
「ありがとう」
対策を知ったところでテセウスの部屋へ忍び込んで、
「たとえミノタウロスを退治しても迷宮からは逃げられませんよ」
「それが一番の問題なんだ」
テセウスも困惑していた。
「よい方策をお教えします」
「なぜ?」
「あなたが好きだから」
なべて昔話は男女の交接に関しては手っ取り早い。テセウスも憎からず思い、
「うん!」
「だから私を連れて逃げてください。あなたを助けたら、どの道、私はこの国にいられません」
「よかろう」
「私も用意しておきます」
「感謝する」
約束が成立し、テセウスアリアドネから金糸をもらい、それをほどきながらほかの犠牲者たちと一緒に迷宮の中へ入った。
ミノタウロスが恐ろしい姿で現れたが、テセウスをひるまない。
「えいっ!」
一撃で怪物の命を奪った。
「さあ、みんな来い」
仲間を連れて迷宮を逃げ出す。アリアドネが待っていた。すかさず船に乗り込み、クレタ島を離れた。