じじぃの「人の死にざま_946_池部・良」

池部良 - あのひと検索 SPYSEE
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青い山脈 (1949) 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=bAKmKJxtWZg
軒下の仁義 池部良 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=S0wo7FWculg
『熱砂の白蘭』 指田文夫の「さすらい日乗」
池部良の追悼特集の1本、と言っても主演は池部良ではなく、キャバレーの女白蘭を演じる木暮美千代である。
1951年の東宝配給作品、製作は第一協団となっている。
第一協団とは、プロデューサー浅田健三が代表の俳優集団で、菅井一郎、河津清三郎らの多数の俳優がいた。
脚本は、新藤兼人棚田吾郎。原作はモーパッサンの『脂肪の塊』で、これは普仏戦争下で乗合馬車で逃げる人間と、そこにくる娼婦を描いた小説である。
http://blog.goo.ne.jp/goo1120_1948/e/f8662b7fbad2ded1fe9a63b42078c26f
池部良 ウィキペディアWikipedia)より
池部良(いけべりょう、1918年2月11日 - 2010年10月8日)は、日本の俳優、随筆家。芸術家の岡本太郎は従兄にあたる。
【来歴・人物】
風刺・風俗漫画家として一世を風靡した池部鈞(日本芸術院より恩賜賞を受賞)の息子として、東京市大森区(現・東京都大田区)に生まれた。母は画家・漫画家岡本一平の妹。立教大学文学部英文科に入り、富田彬などから学ぶとともに、映画監督になるのを夢見て在学中の1940年に東宝撮影所のシナリオ研究所に研究生として入る。
1946年6月まで抑留され、南方から苦労して日本に帰る。腸チフスに罹患した池部は俳優を続けるかどうか決めかねていたが、東宝高峰秀子に熱心に請われ、特に高峰には市川崑を付き添いに疎開先の茨城県の山村にまで直接訪れて説得され、俳優に戻る。映画界に復帰した池部は日本共産党とそのシンパによる東宝争議に1948年秋まで煩わされた。
175cmの身長と美貌を生かして、次々と主演作をヒットさせる。1948年に女優の羽鳥敏子と結婚したが離婚。その後も青春スターの第一人者として活躍を続けた。特に1949年の石坂洋次郎原作の『青い山脈』では、当時30代だったにもかかわらず、旧制高校の生徒をさわやかに演じ、戦後の自由な雰囲気を象徴する映画として大ヒットした。その後は1950年に新東宝の『暁の脱走』、1952年に松竹の『現代人』と他社の作品にも出演。特に『現代人』では池部がそれまでの二枚目スターから演技派俳優として最初に認められるようになった作品であった。
坊っちゃん』(1953年、岡田茉莉子共演、丸山誠治監督)、『雪国』(1957年、岸惠子共演、豊田四郎監督)、『暗夜行路』(1959年、山本富士子共演、豊田四郎監督)などの多くの文芸作品で翳のある青年を演じ、文芸路線や都会派映画に欠かせない二枚目スターとして君臨した。
1960年代に入ると徐々に脇役に転じたが、1964年に主演した『乾いた花』(篠田正浩監督)でのヤクザ役が評判となる。この頃、18歳離れた女性と再婚した。
1991年、毎日新聞連載の『そよ風ときにはつむじ風』で「日本文芸大賞」を受賞したことから多数の連載を抱えることとなり、以後は文筆業や講演が活動中心となる。
2010年10月8日午後1時55分、敗血症のため東京都内の病院で死去。92歳没。亡くなった際も、雑誌「百歳万歳」「銀座百点」ほか4誌にエッセイを連載中だった。

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『心残りは…』 池部良/著 文藝春秋 2001年発行
怪なり、左卜全さん? (一部抜粋しています)
田中友幸プロデューサーから「熱砂の白蘭」の台本を受け取って、その場で「いいじゃないですか」と出演をOKした理由は極めて短絡的なものだった。僕が演る主役の隊長は陸軍中尉。僕が復員したときの階級が同じ陸軍中尉で、しかも独立小隊の隊長というところに、これなら経験的に演れるだろうし、「暁の脱走」の三上上等兵とは違って将校だから、かっこもいいんじゃないかと思ってのことだから、俳優としてプロ意識に欠け些か忸怩(じくじ)たるものがあったけれど、商業映画に純粋芸術の核みたいなものは要らない。むしろ観て下さる方々の共鳴を待つか共感が得られるかが「映画俳優」の勝負どころだと思って引き受けたには、そんなに間違ってはいないようだと思った。
「中国大陸の寂寥(こうりょう)とした砂漠に隊長以下30名ばかりの小さな砦(とりで)がある。終戦日も過ぎたある日。奥地から十数人の邦人が砦に逃げこんできた。隊長はあらゆる条件を考えた揚げ句、一時的に保護することを決断。映画はここから問題を孕(はら)んで進行して行く」
隊長の当番兵(身の回り世話係)に左卜全さんが扮した。
卜全さんは僕より一回り上のお年のようだった。奇優、怪優と言われて、確かに怪しげな芝居をする方には違いなかったが、人に害を与えたことはないし、真面目を絵に描いたような方だとは思っていた。容貌は魁偉(かいい)。
朝、撮影所で出会ったら、両腋(わき)に突いていた松葉杖を、きちんと外して2本を揃えて抱え「お早うごぜえます」と先に挨拶される。
「卜全さん、松葉杖外して、大丈夫なの」と聞いたら、
「池部さん、何故、わしが松葉杖を突いているか、ご存知ねえとは困ったもんですな。わし等俳優は寝るときは別として、1日中、足のご厄介になっておりやす。足が悪くなったら俳優はお終(しま)いでねえですか。 さすれば松葉杖を突いて、足を労ってやっておるんでやんすよ」と言う。
「でも、僕と会って、松葉杖を外したら、その間、足が可哀そうじゃないですか」
「なんの、なんの。池部さんは主役さんでやんす。主役さんの前で、松葉杖を突いてるのは失礼でねえですか。ご挨拶する2分や3分松葉杖されたって、足は文句は言わねえですよ。主役さんは映画の大黒柱ですやな。 つまんねえ材木でも、大黒柱となってやるからには、わし等脇の柱が大切な足を、ご挨拶のために使うのは当然のことでねえですか」と言って松葉杖を腋の下に宛(あ)てがい、「お先に失礼いたしますです」と頭を下げ俳優館の方へ行った。
実に筋の通った考え方だと感心し、僕を大黒柱と言ってくれたことに感激したが、「つまんねえ材木でも大黒柱になってるからには」と言うのが気になって、隊長役を「かっこう」がいいからと引き受けた自分を咎めた。
「熱砂の白蘭」の中盤のシーン。
「邦人十数名も保護されて半月が経つ。砦内の食料は次第に欠乏する。邦人達は交渉相手を給与係(食糧係・左卜全さん)に向ける」
邦人として出演された俳優さんが凄い。
木暮美千代さん、清川虹子さん、山村聡さん、河津清三郎さん、清水将夫さん、菅井一郎さんといった錚錚(そうそう)たる顔触れ。
「邦人は雪崩(なだれ)を打って、当番兵であり、給与係の部屋に押しかける」場面の撮影。
「お前、食糧係だろう、俺たちを見殺しにするのか」
誰がどなり、誰が叫んでいるのか分からない、こんな台詞が飛び交って延々と続き、台本に書いてある台詞も言い尽くしてしまった頃、アンペラ茣蓙(ござ)に座っていた左卜全給与係一等兵が、やおら四角い赤い唇をぱっくりと開け「ねえ――ものは――ねえ――よ」と言った。
やたらと間の長い台詞の言いまわしに、一同、芝居と本気を混ぜて、がっくりと膝を折った、ところで、やっと「カット」の声。
卜全さんは「はい、お疲れさまでした」と言ってセットを出て行った。
卜全さんが座っていたアンペラ茣蓙の端から青い色の本が顔を出しているのを見た。
取り上げたら卜全さんの台本だった。
押し花を貼った栞(しおり)が挟まっているページを開ける。欄外に、横に長い筆書きの線が引かれ、赤のボールペンで「みな様に、しかられようとなぐられようとも、自分のせりふを言うまで6分ぐらい、のばすこと」とあり、卜全さんさんの台詞「ねえものはねえよ」の脇に返り点、謡曲の譜のような印が付けられ、2字か3字ごとに「20」とか「30」とかの数字が書き添えられてある。「何だろう」と首を傾げていたら、卜全さんがどたばたと飛びこんで来て、僕の手から台本を引ったくった。
「池部さん、わしの台本、見たんでやんすね」と平家の亡霊のような顔と声で言う。
「見ちゃって、ごめん」と言ったら、
「わしあ、誰にも台本は見せねえ。わしの秘密でやんすからな」と言った。
「ごめんなさい。でも卜全さん、その符牒(ふちょう)は、どういう意味なの」と聞いた。
「これはでやんすね。わしが、わしの台詞を言うまで6分も延ばしておけば、邦人のみなさん、焦(じ)れて、焦れて、この場面に緊張が出やして、いい芝居をおやりになりますですな。これ、わしのためじゃなく、みなさんのためと思うて、苦心に苦心を重ね、ひと月かけて考えましたでやんす」
「じゃ、その20、30という数字は?」
「こらあ、20秒とか30秒の間を空けるということでやんすな」と言った。
怪演、奇演の俳優と言われているが、実は緻密な計算をした上で演技をする、と気づいて驚き、且(か)つ感心した。多小、他の俳優さんに迷惑をかけるのは惜しいことだった。

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