じじぃの「通説は必ずしも正しくない」

ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言』 中川 淳一郎著 光文社新書 (一部抜粋しています)
第5章 ネットはあなたの人生をなにも変えない
私はひねくれた人間であると自分でも認識しているが、それの大きなきっかけとなったのが1992年、バブル崩壊直後の予備校通学時代に小論文講師から言われた一言だ。
彼は、「日本が年功序列・終身雇用というのはウソだ。日本にはもともと年功序列・終身雇用なんてものはなかった」と言ったのである。
彼の真意としては、「日本の会社の特徴とされる年功序列・終身雇用は、あくまでも大企業のためだけのものである。こうやって国立大学へ行こうとしている君たちのお父さんは大企業の人が多く、終身雇用が約束されているだろうし、日本の企業が終身雇用だと報じるマスコミも大企業だ。でも、日本の企業の99.7%は中小企業であり、そこでは年功序列・終身雇用などはもともと存在しない。『日本企業の特徴』について語るときに年功序列・終身雇用は耳通りが良いのでよく使われるだけ」ということであった。
これに全面的に同意するわけではないが、「通説は必ずしも正しくない」ということだけは、彼のこの発言から汲み取ることができた。

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『激変する世界地図の本当の読み方』 竹村健一 青春出版社
これから伸びる企業 (一部抜粋しています)
「当たり前」のことが当たり前にできる実力
成人してから来日した外国人として、初めて日本の株式市場を果たしたソフトブレーン創業者の宋文洲氏。先に彼は会社の第一線から退くことを表明し、周囲を驚かせた。
宋氏は中国人でありながら、日本のビジネス界に身を置き、成功を収めた。その過程で、日本のビジネスのおかしいところ、不可思議な部分をたくさん経験してきたという。
外国人であるからこそ、日本人とは違った目で日本の企業風土をながめ、日本人では気づかないマイナス部分に気づくことができた。彼はそれを歯に衣着せぬ言葉ではっきりと口にするから面白い。彼の言い分には、非常に的を射たものもあるので、彼と話をした仲で私の印象に残っているものをいくつか取り上げてみよう。
まず、彼はいい企業か、そうでないかは少し話をしてみればすぐわかるという。ソフトブレーンは営業支援ソフトウエアやシステムの開発、コンサルティングなどを主要業務にしているが、その営業活動で企業の担当者と一度話をしてみれば、その企業がこれから伸びていく先端的企業か、停滞する保守的企業かわかるというのである。
たいしたことがない企業に限って、話のアラを探そうとすると彼は言い切る。たとえば、話の中にたった1割でも矛盾を見つけると、全体を信じようとしない。こういう企業はダメだという。
逆に、良い企業は決してそんなことはいわない。たとえ1割間違っていても、9割が役に立つものであれば、それを吸収したほうが得になることを知っているからだ。
そのため宋氏は、創業間もないベンチャー企業でありながら、トヨタやキャノン、全日空など、超優良企業を中心に営業をかけた。超優良企業となるからにはそうなる理由があり、役に立つことは何でも吸収しようという風土を持っているからである。
また、そうした一流企業に採用されて実績を上げることがソフトブレーンの信用を高めることにもなると考えた。その結果、ソフトブレーンは日本の名だたる企業に採用され、高い業績を上げてきた。
いい企業は、当たり前のことを当たり前のこととしてできる会社だ宋氏はという。保守的な企業、保守的な経営者は、すぐに「うちは特殊だから」と逃げ口上を口にする。しかし、宋氏にいわせれば、日本は決して特殊ではないという。自分たちが勝手に特殊だと思いこんで、当たり前のことをしていないだけだというのだ。
たとえば、「日本の営業には、人情が必要ですから」というようなことをいう経営者がいる。しかし本当にそうだろうか。中国やアメリカでも、営業に人情は必要である。
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たしかに、宋氏のいっていることには一理ある。日本は、島国という環境からか、自分たちを特殊だと思いすぎている。だから、一般化された方法論では通用しないと考えている。しかし、それは裏を返してみれば、自分たちが信じてきたものを否定さてるのが嫌なだけ、新しいことを勉強するのが嫌なだけということが少なくない。とても後ろ向きな態度である。
一流企業と呼ばれる会社は、非常に寛容な風土を持っていることが多い。役にたちそうなことには素直に耳を傾け、新しい方法論を受け入れることもいとわない。トヨタにしてもキャノンにしても、日本的経営のいいところと欧米流経営のいいところをミックスして一つの形に作り上げている。そして、それを最終形だと考えずに、常にもっといいものへ変革していこうという意識をもっている。
それは、宋氏のいうように、企業経営として当たり前のことなのだ。それができるかどうか。企業の浮沈を隔てるものは、案外こんなところにあるのかもしれない。

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どいでもいい、じじぃの日記。
ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言』の本の中に「通説は必ずしも正しくない」がある。
日本はつい最近まで、「年功序列・終身雇用」の社会だったと思っていた。「日本の企業の99.7%は中小企業であり、そこでは年功序列・終身雇用などはもともと存在しない」がある。なるほど。いつ倒産するかしれない、自転車操業の中小企業にもともと「年功序列・終身雇用」など存在しないのだ。立派なことを書く人のほとんどは、かって大企業に勤めていた人だったから、こんな人たちが書いた本を読んで「日本の会社はみんな年功序列・終身雇用の社会なのだ」と思いこんでしまっていたのだ。
ある雑誌に、ソフトブレーン創業者の宋文洲氏が書いていたことが思い出された。
「今、日本では、今後の進むべき進路についてたくさん書かれている。この中で果たして去年のリーマン・ブラザーズの破綻を予測した人が何人いたであろうか」
文藝春秋』 7月号に「エコノミストは役に立つのか 25人採点」が載っている。去年(リーマン・ブラザーズの破綻前)から今年にかけて、世界と日本について書いてきたエコノミストの人たちへの採点だ。
この記事で、慶応大学教授 金子勝氏の採点がいい。去年のリーマン・ブラザーズの破綻前に、金子勝氏はアメリカのバブル崩壊を予言していた。
「通説は必ずしも正しくない」のと同様に、「テレビ、新聞、雑誌によく出てくるからといって、言っていることが必ずしも正しいとは限らない」のである。