じじぃの「坊主の長生き」ぱーと2

『ヒトは今も進化している 最新生物学でたどる「人間の一生」』 ローワン・フーパー著 新潮社
6章 老化と死 (一部抜粋しています)
超越的瞑想と「しかたがない」の思想
2005年度版で報じられたように、日本の90歳以上の人口は2004年、ついに100万人を突破した。日本は世界一という記録を長いあいだ保持しつづけてきたが、政府が高齢化社会にきわめて神経質なのは、この問題が史上最低の出生率(ひとりの女性が一生に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が2004の時点で1.29人)と結びついて、深刻な経済問題を引き起こすにちがいないからだ。このままの率でいくと、21世紀の末には日本の人口は6400万人にまで減少し、その多くが高齢者となるだろう。しかし日本人はなぜ、そんなに長生きなのだろうか?
標準的な解答としてあがるのは、良質な食事、質の高いヘルスケア、生き届いた高齢者支援などだろうか。たしかにこのいずれもが、日本が世界の最長寿国になるうえで重要な役割をはたしている。しかし私は(確たる証拠があるわけではない、とお断りしなければならないが)、ほかにも理由があると思うのだ。それは、日本文化の「しかたがない」の思想である。
自分にコントロールできない事態がおきると、日本の人びとはよく「しかたがない」というセリフを口にしてその状況に甘んじ、決してフラストレーションで血管を破裂させたりなどしない。これは日本の労働界でおきている過労死の問題と矛盾するようにみえるけれども、私は「しかたがない」に代表される日本人のどうにかなるさ的な性質が、長寿を、少なくとも部分的には、説明してくれると考えている。
その理由のひとつは仏教思想にある。多くの日本人は、僧侶がやるように毎日お経をあげたり瞑想したりしない。それゆえ明瞭には見てとれないかもしれないが、その文化はどっぷりと仏教に漬かっている。英国では人口の2パーセントしか教会に行かないけれど、その文化がどっぷりとキリスト教の価値観に漬かっているのと同じことだ。もし日本の潜在的仏教文化と「しかたがない」の思想に血圧を下げる効果があるとすれば、それは長寿にもよい効果をもたらしていると考えることができる。
このアイデアを支持する証拠がある。2005年5月1日の「アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー」が報じたところによると、高血圧症の患者のなかで、超越的瞑想(TM)を行っているグループは、そうでない患者グループよりも死亡率が低く、平均余命が長くなることが示された、というのである。もちろん超越的瞑想と潜在的な仏教は等値ではないし、真言を繰り返し唱えることと、挫折した状態で「しかたがない」と呟くことも同じではありえない。でもまぁ、同じ土俵でのことといっていいのではなかろうか。
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そして2004年のはじめに発表されたジョージア医科大学の研究では、高血圧症をもつ思春期の黒人にとっても超越的瞑想が有効であること−−つまりTMを行うことで、血管を弛緩させる能力が増大することが示された。8ヵ月にわたって瞑想を行った被験者たちは血管の拡張脳を21パーセントもアップさせたのに対し、行わなかったグループでは4パーセント下落したと、ジョージア医科大学生理学者ブァーレン・バーンズはいう。「ひと晩で変化がおこるわけじゃない。瞑想や、その他のポジティブなライフスタイル−−たとえば運動をする、食事を軽めにするといった習慣が、人生の一部のようにならないとだめなんだ。歯磨きと同じようにね」
彼のことばは私たちを、仏教と「しかたがない」のライフスタイルにひきもどす。「しかたがない」は宿命的であり、人生に対するポジティブな姿勢ではないという議論はあるだろう。ときには、何かがうまくいかないときに怒り狂うのもいいかもしれない。しかし総体として私は、前にもいったように確たる証拠があるわけではないけれど、「しかたがない」はおそらくポジティブな効果を血圧やストレス・ホルモンにもたらすだろうと思うし、したがってよいことだと考える。健康的な長寿や良い意味での福祉にとっても、たしかによいことであるだろうが、しかし高齢化社会の危機を乗り切る妙案がない政府にとってはその限りではないのかもしれない。

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どうでもいい、じじぃの日記。
WHOが公表している世界193の国や地域で、2007年も日本が世界一、平均寿命が高い国になった。男女平均83歳。
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20090522-497416.html
統計をみるとサンマリノ、イタリア、アイスランドスウェーデンなどが上位に並んでいる。スイスも上位になっているが、スイスを除くと魚をよく食べている国民である。(どこにも例外がある)
アメリカなどハンバーガーばかり食べている国は上位にこない。
「坊主の長生き」というブログを書いた。
http://d.hatena.ne.jp/cool-hira/20090522/1242939762
『ヒトは今も進化している 最新生物学でたどる「人間の一生」』に坊主が出てきた。
「しかたがない」も仏教では諦念を意味する言葉だ。「坊主の長生き」をまた、立証した本でもあった。