じじぃの「歴史・思想_250_レイシズム・ユダヤ人の迫害」

History of Jews in 5 Minutes - Animation

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fIYHMdOr5Aw

ユダヤ人家族

なぜ、ホロコーストは起きたのか

第二次世界大戦のとき、ナチ・ドイツおよび占領下のヨーロッパで、「ユダヤ人」という理由で約600万人の人々が殺されました。
その内、約150万人が15歳以下の子どもでした。他にも、障がい者やシンティとロマ(「ジプシー」と呼ばれた人たち)も犠牲となりました。
https://www.npokokoro.com/why

レイシズム講談社学術文庫)著者 ルース・ベネディクト(著),阿部大樹(訳) honto

レイシズムは科学のふりをした迷信である。純粋な人種や民族などは存在しないことを明らかにし、国家、言語、遺伝、さらに文化による人間集団に優劣があると宣伝するレイシストたちの迷妄を糾す。
日本人論の「古典」として読み継がれる『菊と刀』の著者で、アメリカの文化人類学者、ルース・ベネディクトが、1940年に発表し、今もロングセラーとなっている RACE AND RACISMの新訳。
ヨーロッパではナチスが台頭し、ファシズムが世界に吹き荒れる中で、「人種とは何か」「レイシズム(人種差別主義)には根拠はあるのか」と鋭く問いかけ、その迷妄を明らかにしていく。「レイシズム」という語は、本書によって広く知られ、現代まで使われるようになった。
「白人」「黒人」「黄色人種」といった「人種」にとどまらず、国家や言語、宗教など、出生地や遺伝、さらに文化による「人間のまとまり」にも優劣があるかのように宣伝するレイシストたちの言説を、一つ一つ論破してみせる本書は、70年以上を経た現在の私たちへの警鐘にもなっている。
訳者は、今年30歳の精神科医で、自らの診療体験などから本書の価値を再発見し、現代の読者に広く読まれるよう、平易な言葉で新たに訳し下ろした。グローバル化が急速に進み、社会の断絶と不寛容がますます深刻になりつつある現在、あらためて読みなおすべきベネディクトの代表作。
https://honto.jp/netstore/pd-book_30200031.html

レイシズムとは何か より

ゾロアスター教ユダヤ教

対照的であったのは、1世紀より数百年さかのぼるペルシャゾロアスター教である。ゾロアスター教は国教となっていたが、ペルシャ北部への布教を目指すことはなかった。異教徒を改宗させることを重視していなかったのだ。春秋時代を生きた孔子も同じく、自分の教えを世界中に広めようとはしていない。初期キリスト教の布教戦略の背後には、多数の民族を包摂する巨大な単一コミュニケーションという観念がまずあった。そしてこれはローマ帝国の登場によってはじめて可能になったものだった。
ユダヤ教預言者ヘブライ法もキリスト教の土台になっている。紀元前1300年頃に遡るモーセの律法を見てみよう。――「汝等とともに居る他国の人をば汝らの中間に生れたる者のごとくし己のごとくに之を愛すべし汝等もエジプトの国に客たりし事あり我は汝らの神エホバなり」(レビ 19章34節)、「汝ら会衆および汝らの中に寄寓(とどま)る他国の人は同一の例にしたがふべし是は汝らが代々永く守るべき例なり他国のエホバの前に侍ることは汝等と異なるところ無るべきなり」(民数 15章15節)。アッシリア捕囚を契機に、ユダヤ教内部にも分離主義を掲げる一派が生まれた。
たとえば預言者エズラは、アモンやモアブの子種がイスラエルの子種と交わることを恥ずべきこととして、異邦からやってきた妻たちを強制送還し、さらに将来にわたって異人種間の結婚を固く禁じた。狂信的なレイシズムが古代社会にも現れていたことになる。しかしその痕跡をイエスの言行に見てとることはできない。多民族からなる大きなコミュニティを作るようにとのキリスト教の教えは、その時点でのヘブライ法に沿ったものであったし、なによりもローマ帝国が積み上げたものによってその基礎を堅牢なものとしていた。

ナチズムの土台

世界大戦が終わってワイマール共和国が倒れると、失意のどん底でドイツはレイシズムを国家体制の根本に据えるまでになる。全能の支配者の論理であったレイシズムが、打ちひしがれた国民を慰めるために転用された。いま私たちが想像するほどには、これは難しい作業ではなかったようだ。
1920年代に獄中のヒトラーが書いた『わが闘争』に、この変容の一端をすでに見てとることができる。戦前のドイツは人種という国家の基礎を、「この地での生の一切を可能にする唯一絶対の法則」を無視していた。そのせいで邪悪なユダヤが国家の乳房を吸った、戦争に負けたのは全部あいつらユダヤ人のせいだ、と。こうなると誰が北方系で誰がスラブ系であるかなど政治的にはまったく些細なこととなって、ただ敵性人種であるユダヤ人かどうかだけが問題になってくる。逆に、ユダヤ人の親や祖父母さえいなければ誰であれ真正のドイツ人とされた(話が難しくなるとナチ理論は「ドイツ人らしく振る舞うものがドイツ人だ」とチェンバレンに戻るのだとしても、これは例外的な場合である)。こうしてレイシズムは<国家社会主義>、ナチズムの土台として固めていく。

ユダヤ人の迫害

1933年に権力の座につくと、ヒトラーはプログラムの歯車となる法案を次々に通過させた。すぐに散発的なユダヤ人に対する迫害が各地で激化した。そしてわずか2年後の秋には、ニュルンベルク法として知られる一連の法案が可決される。これによってユダヤ人のすべての市民権は停止され、ユダヤ人と非ユダヤ系ドイツ人の結婚は禁止、婚外交渉には刑事罰が科せられるようになった。法が施行された月のうちに、ユダヤ人の子供全員が学校から締め出された。翌年にはユダヤ人の不動産および銀行資産がすべて政府によって剥奪される。
37年には、ユダヤ人を通商や小売業から排除するための政府による暴力がさらに組織的なものとなった。38年、各地でユダヤ人に対する収奪がほとんど日常的なものとなって、そしてベルリンではユダヤ人が一斉逮捕された。この年の11月10日にドイツ全土で行われた虐殺(ポグロム)は世界中に知れ渡る。ユダヤ人虐殺の過程で生じた損害はすべてユダヤ人が支払うべきものとされた。科せられた罰金は総計10億マルクとなった。
この頃には、ドイツやオーストリアから国境を越えて逃げ出してくる。困窮と絶望に挫かれた大量のユダヤ人難民が国際問題になっていた。それなのにベルリン警察は追い打ちをかけるように、ユダヤ人コミュニティの長老たちに毎日100人ずつユダヤ人の名前と住所のリストを送るように命令している。リストに挙げられた人間は、2週間以内に国外退去するように宣言された。1939年初めのことである。レイシズムが苦い果実を生み落としたのだ。
第三帝国レイシズム反ユダヤ主義だけが問題ではなかった。当初から汎ゲルマン主義のプログラムでもあった。

じじぃの「新型コロナ・日本ワクチン治験開始・大阪大学開発者に聞く!プライムニュース」

【ゲキ追X】“大阪の力”で日本を守れ ワクチン開発最前線

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Vq-qUI6U-u4

DNAワクチン

新型コロナワクチン、30日治験開始=大阪市立大病院で―国内初、創薬ベンチャー

2020.06.29 nippon.com
大阪大発の創薬ベンチャーの「アンジェス」(大阪府茨木市)は30日、同大と共同開発した新型コロナウイルスワクチンについて、安全性と有効性を確かめる臨床試験(治験)を始める。新型コロナワクチンの治験は国内で初めて。
ワクチン開発は各国で進められているが、欧米や中国が治験を開始するなど先行している。政府は感染拡大の「第2波」に備え、ワクチン20万人分の製造体制を整える異例の支援態勢を敷く。
https://www.nippon.com/ja/news/yjj2020062900515/

プライムニュース 「日本ワクチン治験開始 当事者に聞く勝算とは 第2波への備えと危惧」

2020年7月9日 BSフジ
【キャスター】長野美郷、反町理 【ゲスト】橋本岳(厚生労働副大臣)、増田道明(獨協医科大学医学部微生物学講座教授)、森下竜一(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座教授)
政府の「新型コロナウイルスに関する専門家会議」に代わる新たな有識者会議である「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の初会合が6日に開催された。会合では、日々発表される感染者確認数が再び増加傾向にある東京の現状を分析するとともに、検査体制の基本的な考え方やクラスターが発生した場合はPCR検査を徹底する事などが議論されたほか、10日に予定されているスポーツや集客イベントの人数制限緩和を予定通り行う事が了承された。また、今後は「ワクチン接種の在り方」などについても取り上げられる予定だ。
新たな一歩を踏み出した日本政府の“新型コロナ対策”は、「第2波」の規模と被害を軽減させる事ができるのか?
●新型コロナ感染者が再増加 ワクチン開発の現状と今後

臨床試験(治験)の段階

フェーズ1 (安全性)
フェーズ2 (数十人規模・有効性)
フェーズ3 (数百人から数千人規模・有効性)

国内のワクチン開発状況

                 取り込み状況   生産体制の見直し

                                              • -

DNAワクチン      治験中    タカラバイオが生産予定

(阪大/アンジェス/タカラバイオ) (第1/2フェーズ)

  mRNAワクチン        動物実験
(東大医科研/第一三共
  組換えタンパクワクチン   ワクチン候補作成中 塩野義が開発主体となる意向
 (感染研/UMNファーマ)    動物実験を開始予定
 ウイルスベクターワクチン    動物実験を開始予定
 (IDファーマ/感染研)
  不活性ワクチン        ウイルスが増殖するかを確認中
(KMバイオロジクス/感染研/基礎研)

DNAワクチン 治験状況

治験先  大阪市立大学病院
人数   30人
投与方法 低用量群15人+高用量群15人
     2週間感覚で2回投与 6月30から開始
反町理、「大阪市立大学で治験が始まっているが、低用量群15人と高用量群15人の違いは何なのか」
森下竜一、「濃い薬と薄い薬のことです」
長野美郷、「ワクチンを打って副作用がすぐ出るのとある程度時間を経てから出るものがあったりするのではないか」
森下竜一、「ワクチンを打って抗体ができてもなかなかわからない。効果については1~2年経過を見ている」
増田道明、「米国立衛生研究所(NIH)のアンソニー・ファウチが“注意深く楽観的に”手放しで期待しているわけではないと言っている。色々な臨床試験を経て安全性、効果を確認すると言うプロセスをルールに則った形で検証していくことは大切にしなくてはならない。薬については、理化学研究所スーパーコンピューター『富岳』を使って2000種類以上の色々な薬とコンピューターの上で作った様々なタンパク質がどう結合するかシミュレーションしている。その中からうまくいきそうな薬の候補が数10種類挙がってきている」
橋本岳、「ワクチンは1億人分急にできるかと言うと恐らくそうはならないので、我々の立場からするとまずはどんな方々から打っていくべきか考え始めていくべきだと思っている」
●新型コロナ感染者が再増加 重症化防止の新たな注目点

独・ハンブルグ大学法医学研究所(6月4日)

新型コロナウイルスにより死亡した80人の病理解剖を実地
→ 32人の患者に深部静脈血栓症を認め、死亡に影響している可能性を示唆
増田道明、「新型コロナウイルスが細胞に感染するときの入り口に相当するタンパクが血管の内側の壁紙のようになっている内皮細胞でも作られている。このウイルスは血液内に入ると血管内側の細胞にも感染するようだとヨーロッパの研究成果などから見えてきている。血管が傷つくと防御反応として血を固めて治そうとするが、大きい血管や体中の色々なところで起こると血が固まってはいけないところで血が固まって大きい血の塊が出来たりということが起こる。サイトカンストームと言われる。世界的にはこうした血栓症や塞栓症が新型コロナウイルスの症状に深く関わっているという見方がされるようになっている」

【提言】 「第2波に向けたあるべき対策」

橋本岳 「とにかく手指衛生と三密回避を!」
 新型コロナの治療薬とワクチン開発が進んでいるが、まずはかからないように手洗いをそして三密を避ける。
増田道明 「科学的リスク評価と重症化対策」
 ワクチン開発には数ヵ月かかる。それまでに年齢による基礎疾患対策とか重症化対策をする。
森下竜一 「抗体検査による陰性証明。一日も早いワクチン開発」
 新型コロナにかかっても症状に表われないことが問題になっている。もう少しきめ細かい対策をする。
https://www.fnn.jp/subcategory/BS%E3%83%95%E3%82%B8LIVE%20%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

じじぃの「歴史・思想_249_レイシズム・人種間で優劣はあるのか」

Interview with Ruth Benedict for "The Great Depression" Pilot Episode

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GtVcHxapNC8

ルース・ベネディクト:Ruth Fulton Benedict, 1887-1948

1887.06.05 ニューヨーク州シナンゴ・ヴァレーで生まれる。はしかにより片耳(どち ら?)の聴力を失う。
1940 『人種:科学と政治』Race : science and politics / by Ruth Benedict. -- Rev. ed., with The races of mankind, by Ruth Benedict and Gene Weltfish. -- Viking Press, 1945[1940](→「人種」)
1948 7月コロンビア大学教授に昇進。9月17日に冠状動脈血栓症で死去(61歳)。
1948 12月 社会思想研究会出版部より上下巻で長谷川松治訳『菊と刀』が出版される(諸訳あわせて1996年までに累計230万部販売された――角田「解説」による)。
https://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/030807benedict.html

まえがき より

現代では、人種をめぐる個々の課題への発言と、レイシズムの粗雑な言説が区別されないで一緒くたにされている。そのような現状を変えるために、わたしはこの本を書いた。右に挙げた2つを、まったく異質なものとしてはっきりと区別するために。人種についての科学的知見とレイシズムの罵詈雑言はまったくの別物である。異なる歴史があって、それを行う人々も、参照しているデータも違っている。
本書の第1部には、人種(race)に関して科学がこれまで明らかにしたことを記した。第2部ではレイシズム(racism)の歴史を概説した。そして最後の第8章は、レイシズムという社会問題に対する私なりの回答である。すなわち「レイシズムがどうして現代には蔓延しているのか?」そして「この伝染病に終止符を打つにはどうしたらいいのか?」という2つの問いに対して、一人の人類学者として答えらしいものを提示しようと思う。
私がこの本を書いた動機は、いわば重ね折りになっていた。アメリカ革命の末裔として、レイシズムの喧伝するものに反対していると明らかにしたかったし、そして同時に、文化人類学者の一員として、レイシズムの掲げている似非(えせ)人類学に反論する必要があったのだ。

どの人種が最も優れているのだろうか より

人種についての科学的研究は私たちに多くを教えてくれる。記憶も記録もないほどの大昔に起きた大規模な移民について、異民族の混交について、そして国家について。
人類学はその創成期からずっと、世界各地の先住民から、あるいはその遺跡や埋葬された骨から資料をとって研究してきた。そのうちのどれ1つとして、人種間の優劣を裏付けるものではなかった。先駆者であったテオドール・ヴァイツは1859年にこの問いを取り上げている。あるいは最近ではフランツ・ポアズも。どの研究も「優劣は無い」というエビデンスを差し出している。
それでもなお、自分が優れているか劣っているかの問いは、ひとの心から離れることがない。自分の気がかりにしていることだけでは飽き足らなくて、「優劣」という言葉のうちにこの世界のすべてを押し込んでしまう。新しく入手されたのがどんな情報であろうとも、自分の信じるところを支持してはくれないだろうかと、ためつすがめつ眺めてしまうのだ。人種だけではない。宗教、階級、性別、国籍……いずれもが宣告を下すための素材になる。19世紀中ごろ以降、世界中の民族についての知識が多く手に入るようになると、様々な論者が生来的な優劣を決定しようと頭を捻ってきた。主戦場となったのは生理学、心理学、そして歴史学である。

日本の近代化

ここまで述べたことはヨーロッパ以外の国々にもよく当てはまる。例えば日本は、人種構成という点ではヨーロッパよりもさらに安定的だった。東洋世界のうちに何百年にもわたって存在していた国が、19世紀のたった数十年間のうちに西洋世界に「回れ右」で仲間入りした。この過程には熱烈な努力があったのは確かだけれども、人種構成の大枠が替わったわけではない。
1903年に宣教師シドニー・L・ギューリックが『日本人の進化』で書き表しているのは、社会情勢の変遷に伴う日本人のメンタリティの変化である。ギューリックのこの指摘は現代にもそのまま通用する。かってル・ボンは日本人の生物学的性質を以下のように書き表しているが、あまりに早計で浅薄であるというほかない。
「黒奴を学士となし弁護士となすに難からざれども、然しながらこは単に表面上の上塗りに過ぎずして、その心的組織には何等の改変をも与へたるものにあらざるなり。泰西人士の思考の形式、論理法、就中(なかんずく)その性格は、独り遺伝によりてのみ之を造ることを得るが故に、如何なる教育も之を授かくること能(あた)はざるものとす」
しかし現在ではどうだろうか、むしろ日本人は西欧社会の精力をすっかり吸い尽くしてしまったかのように言われている。ル・ボン流に言えば「心的組織が解剖的特徴と同じように不変一定」などではないと示しているではないか。この矛盾をやり過ごすため、何十年か前には移り気で優柔不断であることが日本人の「心的組織」であるとされてきた。日本の近代化への歩みがはっきりしてからはそのような記述もほとんど見かけなくなった。そもそも1500年もの長きにわたって軍隊的社会機構を保ってきた国民に、移り気という描写が当てはまるかは疑問である。日本のかっての社会機構は、その固定性と安定性の点でヨーロッパの封建制と同等であった。日本人が生まれつきに移り気で優柔不断であると観察したのは、19世紀末にドラスティックに展開しつつあった社会になんとか適応しようとする人々の一瞬の姿を見たからであろう。

東洋精神と日本

日本人について言われたことのもう1つは、儀式や祭礼ばかりやっていて合理的な西洋人とは正反対である、ということだろう。19世紀中葉の詩人エドウィン・アーノルドは当時の日本人を「人間というよりも蝶や鳥に近い」と評している。しかし今では、日本人はむしろヨーロッパ人よりがつがつしていて貪欲ということになっている。近代日本の追求するものが西欧世界のそれと重なるようになったからこその認識だろう。
日本文化はかつて、祭礼と一体になった悠然とした生活、美しいものの尊重、そして封建制と軍隊的なカースト制があった。それが近代以降には、騒がしい貿易や帝国主義的戦争へと「回れ右」した。この転向はまったく人為的なものに違いない。排外的な政策によって西洋世界をいつまでも遠ざけておくことはできないと気づくと、日本は新たな道を取ることを決意した。学び取れるものはすべて学び取って、そうして平等な地位を得ようとしたのだ。

どうして文化はそれぞれに異なっているのか

それでもなおフランス人とドイツ人、中国人とヨーロッパ人は明らかに別物のように思えるのはどうしてだろうか? 人々の集団をそれぞれ異なったものにしているプロセスについてはっきりと理解しないでいるうちには、いつまた「人種」で何もかもを説明してしまうことの谷底に落ちでしまうかわからない。
ヒトは他の動物と比べて、ずっと広い可能性を秘めている。鳥が泥で巣を作るか、あるいは小枝で作るかは確かに遺伝によって決定されることだろう。しかし人間が何を考えてどんな行動をとるかは、遺伝よりも環境によって決められている。遺伝によって生活のすべてが枠付けされることはなくて、その点で人間の行為はすべて人工的であると言ってもいい。
「本能」を観察することは、ひとが幼年期を経て大人になった姿、そしてその大人がとる一つひとつの具体的な行為を通してのみ可能である。遺伝によって受け継がれた傾向性ももちろんあるだろうけれども、しかし鳥とか蟻とかのように生まれてから死ぬまでのすべてを運命づけられていることはない。人類がこれまで成し遂げてきたことはすべてこの事実を基礎にしている。一人ひとりが学習を重ねながら変化していくことは、ライオンの強靭さよりも、そして象の大きさよりも確かな武器となって人類全体を守るものとなった。そしてこのことが知性の発展にまさに必要なものであった。
変わりうるということこそ、人間が第1に誇りに思うべきことではないか。
    ・
遺伝は親から子に伝わっていくにしても、子供たちが実際にどう成長していくかは、その子供が置かれた環境によって決まっていく。
しかし環境が個人に与える影響は、実際には寿命の制約を受ける。旧約聖書に謳われた「人生70年」は短い。世代ごとに伝わるような特別な影響力を文明が持つまでにときに数百年かかることを考え合わせれば、なおのこと短い。

じじぃの「米中対立・どうなる自由貿易・習近平の香港戦略とは?プライムニュース」

【BSフジ】『真田×鈴置が徹底分析習近平の香港戦略とはどうなる“自由貿易”』 2020年7月8日

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=q0V2n9Qljmg

プライムニュース 鈴置高史氏

【提言】 「米中対立のはざまで日本が進むべき道」(2020年7月8日)

https://twitter.com/ychiny/status/1280845761815535617

プライムニュース 「真田×鈴置が徹底分析 習近平の香港戦略とは どうなる“自由貿易”」

2020年7月8日 BSフジ
【キャスター】竹内友佳、反町理 【ゲスト】真田幸光(愛知淑徳大学教授)、鈴置高史(元日本経済新聞編集委員
香港で施行された「香港国家安全維持法」は金融界にも衝撃を与え、香港がこれまで担ってきた国際金融センターとしての地位が危ぶまれている。
また、香港をめぐる米中対立の激化により、アメリカの同盟国である日本や韓国にも様々な影響を及ぼしそうだ。
国際金融に精通する真田幸光氏は、経済への影響をどう読むのか。また、韓国の政治・経済をウォッチしている鈴置高史氏は、米中対立の影響をどう読むのか。
●“金融センター”香港の行方

香港が金融センターとして発展した背景

自由貿易
  → すべての品目がゼロ関税(一部の品目は物品税が課税される)
・低い法人税
・通貨の安定性・信認の高さ
  → 香港ドルは100%米ドルによって裏付け
  → 為替レートは1米ドル=7.75~7.85香港ドルに維持されている
反町理、「香港が金融センターとして発展してきたこれらの要因がなくなったらどうなるのか」
鈴置高史、「関税は維持すると思う。法人税率は低いままだろう。これから問題になるのは通貨。本当に香港の通貨は安定していくのか。香港ドルの方がほんのわずかに金利が高い。米国が中国に対する嫌がらせで香港ドルを売るということになるかもしれない」
真田幸光、「通貨は国家の主権の象徴。中国から言わせると香港ドルが存在していることすら不快感があると思う。一国二制度をやめようとしているのが今の流れ。時間はかけると思うが、思ったよりも早く香港ドルをやめる可能性もある。そうした意味でも香港ドルは持っておかない方がいいかもしれない。紙切れになる危険性がある。香港ドルに対する国際社会からの信認は当然落ちる。一義的には為替レートに反映されてくる。中国は香港ドルを見捨て人民元基軸通貨にと考えているのではないか。意外と新コロナの影響で『AIIB』と『一帯一路』がガーと世界に浸透していけば人民元基軸通貨になっていくのかもしれない」
竹内友佳、「人民元での経済圏が出来上がってしまった場合の我々への影響は」
真田幸光、「日本として政治、外交、防衛など様々な意味で米国、英国の影響力を受けているが経済的には中国の影響力をすでに受けている。我々はどちらに”札”を置くかが非常に重要になってくる。日本人が苦手なコウモリ的な動きをしなければいけなくなる」
鈴置高史、「東西冷戦の間は米国ブロックのドル経済とソ連ブロックのルーブル経済があった。中国はあれに戻そうとしているのではないか」

『香港政策法』(1977年7月1日発効)

米国は香港の「一国二制度」を条件に通商・経済面で香港を中国本土と異なる地域として扱い優遇措置を認める。
ポンペオ国務長官は「香港に認めてきた優遇措置を“わずかな例外”を除き撤廃する」(先月30日声明)。
鈴置高史、「今回の事態を利用して、そもそも中国に許していた技術のパクリをさせないよということ。香港と言う名前を使って中国に対する輸出管理を強化した。日本が韓国に輸出管理をやったのと同じ、横流ししてはいけないということ」
真田幸光、「香港を通じてでなければ横流しはできないと思うかもしれない。しかしヨーロッパと米国は足並みが揃っていないのでヨーロッパから入れられるという思いが中国側にあるだろう、特にドイツとの関係、フランスもそうかもしれない。米国が止めてきても抜け道はあるという自信のようなものは中国政府は持っていると思う」
●“ポスト香港”はどこか?

2019年・在香港の外資系企業数上位5ヵ国(ジェトロ

日本1413、米国1344、英国713,シンガポール446,ドイツ420。
真田幸光、「今回の法律の施行により自由度が狭められる、これまで香港で得られたメリットは情報が色々な形で入ってくる、そのメリットが消えると香港にいる意味が薄れるので出ていく企業は増えると思う。金融は香港での資金調達や運用が事実上劣化するのですでにシンガポールなどへ動いていくなど見せている。香港から外資系企業が出ていくのは拍車がかかるのではないか」
鈴置高史、「香港にいる外国系企業は金融機関、中国との貿易、ヘッドクォーター。金融は足抜けしていくだろう。ヘッドクォーターも情報機関、新聞などは置きにくくなる。しんどかったら上海に行く人も出てくるだろう」
半導体をめぐる米中対立

中国、米国、日本、韓国、台湾の相関図。

日本は日米同盟を基に米国側についている。
韓国は中国とは通商で深い結びつきがあるが、米国とは韓米同盟でつながっている。
台湾は米国に工場建設しようとしている。
韓国のサムスン電子が中国のファーウェイに協力する可能性について。
鈴置高史、「今米国が一番嫌がっているのが、ファーウェイ内々で中国が5G通信覇権を握ろうとしている。香港の法律ができると中国はこれを使ってTSMC(台湾積体電路製造)いじめができる。米国は明らかに韓国がファーウェイに協力するのを警戒している。新しい5Gの半導体は日本か米国のレジストを使わざるを得ない。米国と日本のレジストを止めればサムスンは5Gのシステム半導体を輸出できないはず。米国は金融で韓国を締める時は日米一緒にやる。米国はファーウェイとサムスンが一緒になるのを阻止しようとしている」
日本が韓国への輸出管理を強化している3品目:フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素
鈴置高史、「レジストはやはり日本からでないと困るらしい。中国はどうしているかといるかと言うとオランダから入れているという情報がある」
真田幸光、「ファーウェイは5G関連のマーケットシェアが35%ぐらいある。韓国のサムスン電子を加えると50%ぐらいになってしまう。米国からすると中国と韓国がソフトの情報覇権を握るという組み方をすると一大事なので、徹底的に阻止する動きをしてくると思う」
反町理、「サムスンが描く世界戦略と文政権の思惑とは同じなのか」
真田幸光、「サムスンは文政権とは距離を置こうとしている。たとえばサムスングループ3代目の創業ファミリーのイ・ジェヨン総帥が下手をしたら逮捕されるかもしれないという脅しのようなものがあり、これが影響していると思う」
鈴置高史、「文政権は中国に寄りたいかと言うと違っていて北に寄りたい。北によると反米になる、自動的に中国に寄ってしまう。サムスン多国籍企業で資本は半分以上が外国の資本。米国ならサムスンのオーナー一家に米国の国籍をやるから来いという手があるだろう。しかし社員の多くは韓国人だ。やはり韓国に留まるだろう」
真田幸光、「地球規模でグローバルに考える人よりもインターナショナルに国の背番号を背負いながら動いている人のほうがビジネスの世界でも増えて来ていると思う」
●米国大統領選と米中対立
米国大統領選挙候補者の支持率(4日)バイデン前副大統領49.6%、トランプ大統領40.9%。
真田幸光、「世論調査の信憑性については今回皆が疑問を持っている。トランプ大統領に対しては経済はよくやっている方ではないかという声が米国内では強いと聞いている。バイデン前副大統領は彼に何ができるのかということ、色々な意見が出ている。バイデン前副大統領の場合は米国の国益をどれだけ守ってくれるか不安感は残っていると思う。トランプ大統領の場合は先読みがすごく難しい。マーケットの見立てはどっちもどっちということ」
反町理、「韓国から見たとき米国大統領選はどう見えるのか」
鈴置高史、「仮に米朝首脳会談ができたとしてもそこに文在寅大統領は入れてもらえないと思う。文政権は判断がつかないのでは。韓国は合理的に動いているのではなくその場的に動いている」
反町理、「韓国にカードはないと言うことか」

【提言】 「米中対立のはざまで日本が進むべき道」

真田幸光 「豪州との連携」
 豪州の資源とエネルギーに日本が技術とお金を持って投資する。英国との結びつきも強くなる。
鈴置高史 「ハラを固めよ」
 八方美人外交は皆に嫌われる。皆にいい顔はできない。覚悟を決める。
https://www.fnn.jp/subcategory/BS%E3%83%95%E3%82%B8LIVE%20%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

じじぃの「歴史・思想_248_レイシズム・ダーウインの功績」

UNITY: Anti-discrimination Video

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XWgE6D7ejtg

racial discrimination

まえがき より

現代では、人種をめぐる個々の課題への発言と、レイシズムの粗雑な言説が区別されないで一緒くたにされている。そのような現状を変えるために、わたしはこの本を書いた。右に挙げた2つを、まったく異質なものとしてはっきりと区別するために。人種についての科学的知見とレイシズムの罵詈雑言はまったくの別物である。異なる歴史があって、それを行う人々も、参照しているデータも違っている。
本書の第1部には、人種(race)に関して科学がこれまで明らかにしたことを記した。第2部ではレイシズム(racism)の歴史を概説した。そして最後の第8章は、レイシズムという社会問題に対する私なりの回答である。すなわち「レイシズムがどうして現代には蔓延しているのか?」そして「この伝染病に終止符を打つにはどうしたらいいのか?」という2つの問いに対して、一人の人類学者として答えらしいものを提示しようと思う。
私がこの本を書いた動機は、いわば重ね折りになっていた。アメリカ革命の末裔として、レイシズムの喧伝するものに反対していると明らかにしたかったし、そして同時に、文化人類学者の一員として、レイシズムの掲げている似非(えせ)人類学に反論する必要があったのだ。

人類は自らを分類する より

ダーウインの功績

人種を分類することに関して、これまで相当な努力が傾けられてきたことは確かだ。植物学や動物学についても、ビュフォンによる18世紀の粗雑な分類法から始まって、徐々に現代の洗練された体系へと進んできた。今では、分類のうちに種同士の遺伝的関連性や進化史を見てとることさえ可能になっている。
    ・
19世紀後半になってチャールズ・ダーウインの進化論が受け入れられるまで、人類学的な議論の中心は、単一起源説と複数起源説のどちらが正しいかを決めることであった。聖書に書かれていることや教会の宣伝するところによれば、すべて人類はアダム1人から生まれたものである。コロンブス以前のヨーロッパではこの伝統的な単一起源説が広く信仰されていた。
しかし大航海時代になってヨーロッパ人の視野が広がると、黄色い人間、黒い人間、赤い人間を見て、果たしてただの一度の<神の創造>でこのようなことを起きるだろうかと疑問が出るようになった(なお、この時点では例えば黄色人種の内部にどれだけ多様性があるかは考慮されていない。混交の可能性についても検討されなかった。人種は、まるで子ども向けの地理の教科書のように、国ごとに色分けされているものと考えられていた)。単一起源論者は天候の違いなどによって人種が分かれたのだろうと考えた。1748年に『法の精神』を著したモンテスキューもそのうちの一人だ。反対に複数起源論者にとっては、それぞれの変種は「神の思惟」の結果であって、互いに無関係であるとされていた。
単一起源論者のキュヴィエは、聖書の通りあらゆる人種はハムとセムヤペテから分かれたもので、すなわちその父親であるノア1人に起源をもつものと考えていた。1830年、フランス学士院を舞台に複数起源論者サンティレールがキュヴィエに議論を仕掛けた。これを伝え聞いてゲーテは、驚きを隠さず友人に伝えている。
「君は、この大事件についてどう思うかい? 火山は爆発した。すべては火中にある。もはや非公開で談判するようなときではないよ!」
ダーウイン以前にも一部の優秀な学者は、それぞれの人種は互いに全く別物であるという考えを受け入れず、反証の試みを続けていた。史上初めての偉大な人類学者と言うべきテオドール・ヴァイツは、膨大な身体計画の結果から人種が互いに独立であるという意見を否定した。
活版印刷の鉛版(ステロタイプ)のように人種を捉えるのでは整合性が取れないことを発見したのだ。例えば「黄色い人々」の中にもかなりの振れ幅があって、黄色人種内の他のグループよりもむしろヨーロッパ人とずっと多くの共通点を持っているグループもあるという観測データが主張の根拠となった。同じ時代に生きていたものの、ヴァイツがダーウイン理論に触れた形跡はないから、上に挙げた主張はダーウインの進化論とは独立に現れたものと考えるのがよさそうだ。
さて、しかしどれだけ贔屓目に見てもやはり、私たちの理解をずっと前進させたのはダーウインの功績とするべきだろう。

「純粋な人種」という幻想

計測対象がスウェーデン人であろうとアルジェリア人だろうと中国人だろうとギリシャ人だろうと同じである。どんなデータを集めてみても、これまでに大規模な人種の混交が繰り返されてきたことが明らかになるだけであって、「純粋の一系」などというものが幻想であると突きつけられておしまいである。例えばスウェーデン人とシシリア人を比べても、どちらか一方にしか存在しない形質などというものではなくて、ただその統計的な分布が異なるだけだ。鳥類の新種でも見つけるようなつもりで調査に出かけても、ハトとスズメほどの違いを示すものは人類にはないと改めて思い知らされて帰途に就くことだろう。
私たちはもうそろそろ、鳥や犬の新種でも探すようにヒトの身体的特徴を云々するのをやめなければならない。言えるのはせいぜい「世界中の色々な地域で人類は解剖学的な様々な特徴を発達させてきて、ごくおおまかにコーカソイドモンゴロイドネグロイドと言えそうだ」くらいのところである。局地的にもっと細かい特性が長じたこともあったにせよ、いずれも特別に重要なものとはならなかった。
日本の先住民族であるアイヌにみられるコーカソイド的特徴を説明するため、ボアズはコーカソイドモンゴロイドの一部として、主要なエスニック・グループを2つに減らすべきだとさえ考えた。これまでアイヌを研究してきた学者は皆が口をそろえてアイヌといわゆる「白人」が似ていることを書き残している。皮膚の色だけでなく、多毛であることやその髪色や髪質もコーカソイドに近い。アイヌはその周囲をモンゴロイドに囲まれているにもかかわらずこのような特質を持っているので、白人がその1ヵ所にだけ飛び地的に居住してきたと無理矢理に仮定するよりも、モンゴロイドの亜型としてコーカソイドが生じると考える力が自然である。
いずれの解剖学的特徴も、歴史学がやっと追えるくらいの大昔に現れたものだ。その一方で文明が高度に発達するようになったのはごく最近である。文明は世界各地で同時多発的に起きたのであって、どれか1つの人種にその功績があるのではない。大掴みな3部類であろうと、あるいはもっと細かい小分類の意味で使おうと、文明はどうやっても「人種」が作り出したものではない。世界各地の身体的特徴の現在の分布は、旧石器時代から繰り返されてきた民族の移動に原因がある。人々が大陸を横断し、海を渡り、そして通婚しながら混じり合っていくプロセスについては次章で取りあげるけれども、いずれにせよ西ヨーロッパのどこかに「純粋な人種」の中心地があるなどと主張するのは端的に誤りである。

じじぃの「麻しん(はしか)・藤原道長が行った政治手法は?池上彰のニュース検定」

麻しん(はしか)

第62回 はしか感染の本当の恐ろしさが米科学誌サイエンスの研究で明らかに

2019/12/10 薬剤師のエナジーチャージ 薬読
●歴史を動かした感染症
はしかはウイルス性の感染症であり、39度以上の高熱と、全身の赤い発疹が特徴です。
古くから知られていた感染症で、日本でも平安時代から「赤もがさ」の名で記録されています。たとえば藤原道長の娘・嬉子も、妊娠中に「赤もがさ」に感染して、皇子(後の後冷泉天皇)を出産した2日後、18歳で早逝しました。
https://yakuyomi.jp/manner_technique/etc62/

池上彰のニュース検定

2020年7月7日 テレビ朝日 【グッド!モーニング】
きょうのキーワード 「藤原道長の挫折」。

問題 「藤原道長が行った政治手法は?」

・独裁政治
摂関政治
・側近政治
正解 摂関政治
池上彰さん解説】
 はしかの日本最古の流行は998年です。藤原道長は長女・彰子を天皇に嫁がせ天皇家の親戚になり、その後、長女の息子を即位させることで天皇に代わり政治を行いました。それが摂政。道長は長男・藤原頼道にも摂政の職を与えました。頼道は天皇が成人したあとも関白となって国政を動かし、摂関政治を行いました。藤原道長は4人の娘を天皇に嫁がせ、3人の孫が天皇に即位。 「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」 は当時の藤原頼道の状況と心境をよく表しています。 「満月のように欠けたることがない」 とした道長の満ち足りた気持ちを表したものです。我が世の春を謳歌していたが、はしかの流行がきっかけで権力が衰えます。末娘・嬉子がはしかで死亡。天皇家と藤原家の関係は薄くなり、道長自身も病気になって権力は失墜したのです。

                  • -

『免疫力を強くする』

宮坂昌之/著 ブルーバックス 2019年発行

「免疫力」は強くできるか? より

免疫学者である私がもっとも自信を持って言える科学的な免疫力増強法は、本書で繰り返し取り上げた「ワクチン接種」です。現在、存在する医薬品の中では、もっとも確実に免疫力を上げる方法です。
効き目の悪いワクチンの代表格であるインフルエンザワクチンですら、有効率は30~60%前後に及びます。麻しんのワクチンの有効率は90%をはるかに超え、2回接種のはほとんどの人に免疫がつき、はしかにかからなくなります。2回ほど注射を打つだけで、きわめて感染力が高く高病原性の麻しんの艦船リストからほぼ排除されるのです。もちろん、ワクチン接種にともなう副反応が起きるリスクはありますが、そのリスクはきわめて低い水準で許容できる範囲のものです。
    ・
これらのことから、血管系やリンパ系における細胞の往来をすみやかにしてやれば、その分、免疫系全体の能力が高くなる、ということになるのです。
それでは、血流、リンパ流を良くするようなことは、そのまま免疫力のアップにつながる、と考えていいのでしょうか。答えは、条件つきでイエスです。後でストレスが免疫細胞に悪い影響を与える可能性について触れますが、できればストレスがかからないかたちで、血流、リンパ流を良くするのがいいのです。
たとえば、ウォーキングです。ランニング、ジョギングは人によっては負担が大きすぎて、物理的、心理的ストレスになる可能性がありますが、ウォーキングは、時間、速さを調節すれば、大きなストレスなしにからだ中の血流、リンパ流を上げることができます。これはストレッチングや、ヨガ、マッサージ、さらには乾布摩擦も同様です。

じじぃの「歴史・思想_247_レイシズム・人種とは何か」

The Brotherhood of Man - Post-WWII Animated Cartoon Against Prejudice and Racism (1946)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Fnrxbkajy9M

レイシズム講談社学術文庫)著者 ルース・ベネディクト(著),阿部大樹(訳) honto

レイシズムは科学のふりをした迷信である。純粋な人種や民族などは存在しないことを明らかにし、国家、言語、遺伝、さらに文化による人間集団に優劣があると宣伝するレイシストたちの迷妄を糾す。
日本人論の「古典」として読み継がれる『菊と刀』の著者で、アメリカの文化人類学者、ルース・ベネディクトが、1940年に発表し、今もロングセラーとなっている RACE AND RACISMの新訳。
ヨーロッパではナチスが台頭し、ファシズムが世界に吹き荒れる中で、「人種とは何か」「レイシズム(人種差別主義)には根拠はあるのか」と鋭く問いかけ、その迷妄を明らかにしていく。「レイシズム」という語は、本書によって広く知られ、現代まで使われるようになった。
「白人」「黒人」「黄色人種」といった「人種」にとどまらず、国家や言語、宗教など、出生地や遺伝、さらに文化による「人間のまとまり」にも優劣があるかのように宣伝するレイシストたちの言説を、一つ一つ論破してみせる本書は、70年以上を経た現在の私たちへの警鐘にもなっている。
訳者は、今年30歳の精神科医で、自らの診療体験などから本書の価値を再発見し、現代の読者に広く読まれるよう、平易な言葉で新たに訳し下ろした。グローバル化が急速に進み、社会の断絶と不寛容がますます深刻になりつつある現在、あらためて読みなおすべきベネディクトの代表作。
https://honto.jp/netstore/pd-book_30200031.html

まえがき より

現代では、人種をめぐる個々の課題への発言と、レイシズムの粗雑な言説が区別されないで一緒くたにされている。そのような現状を変えるために、わたしはこの本を書いた。右に挙げた2つを、まったく異質なものとしてはっきりと区別するために。人種についての科学的知見とレイシズムの罵詈雑言はまったくの別物である。異なる歴史があって、それを行う人々も、参照しているデータも違っている。
本書の第1部には、人種(race)に関して科学がこれまで明らかにしたことを記した。第2部ではレイシズム(racism)の歴史を概説した。そして最後の第8章は、レイシズムという社会問題に対する私なりの回答である。すなわち「レイシズムがどうして現代には蔓延しているのか?」そして「この伝染病に終止符を打つにはどうしたらいいのか?」という2つの問いに対して、一人の人類学者として答えらしいものを提示しようと思う。
私がこの本を書いた動機は、いわば重ね折りになっていた。アメリカ革命の末裔として、レイシズムの喧伝するものに反対していると明らかにしたかったし、そして同時に、文化人類学者の一員として、レイシズムの掲げている似非(えせ)人類学に反論する必要があったのだ。

人種とは何ではないか より

歴史学の発展によって、ヨーロッパ文明の起源はもっと古くまで遡れることが明らかになっている。ギリシャ文明は地中海の東方文化を引き継いだものであったし、この東方文化にしてもエジプト文明の大きな影響を受けたものであった。
現代の私たちがヨーロッパ文明のものと考えている発明物の多くも、その起源を辿ればずっと遠い民族のものである。製鉄はインドないしトルキスタンに始まった技術であるし、火薬は中国に由来する。あるいは印刷機の発明にしても、やはり元を辿れば製紙・活版印刷が共に中国から輸入されている。経済の点かた見れば、大規模な人口集約によって現代の私たちの生活が築かれているとしても、それを可能にした穀物の耕作や畜産は新石器時代のアジアに起源がある。
タバコやトウモロコシを栽培化したのは中央アメリカの先住民族が初めてだった。現代の工業生産に必須の計算術についても、もとは中東で発明されたシステムであって、それをムーア人(北西アフリカのイスラム教教徒の人々)がヨーロッパに持ち込んでいる。代数学も同じように輸入された知識である。ローマ時代に入るまで西欧にはごく簡単な算術よりも高度なものは知られていなかったことになる。
あらゆる領域について、わたしたちの西欧文明は数々の人種が共に作り上げてきたものである。これは観測事実であって、推論ではない。文明を作りだす数ある要素のうちの1つとして人種があるだけだ。白人はかつて、いまの日本がそうであるように、文化を借り入れる側であった。白人が何百年もかけてやったことを日本はわずか数十年でやってみせたわけだが、これをありのままに解釈すれば日本人のほうが人種としてずっと優れているという議論され成り立つ。

原始部族の世界認識

原始部族の世界認識はテリトリーのほんの少し外までしか広がっていないものだし、民間説話がすなわち歴史であって、知識が足りていないために話は誇大的になる。この視野狭窄は、万が一ご立派な学識経験者のお墨付きがあろうとも、やはり幼稚な勘違いであることに変わりがない。
視野狭窄のあまり歴史を書き換えようとしたり、自分自身が属する集団ばかりにスポットライトを当てたりするかもしれない。すべて偽史である。真実の歴史が私たちに教えてくれるのは、たとえ文化的な優位性というようなものがあるとしても、それはある民族からある民族へと、ある地域からまた別の地域へと次々に受け渡されながら今日に至っていることである。
ある時代のある地域に住んでいたエスニック・グループのさらに小さな一部分が、歴史的な経緯からたまたま何らかの役割を演じるようになった、とする方が正しい。そのチャンスに恵まれた人々は生活の水準も上がったし、偉人として名を残す個人も出た。メソポタミア、中国、インド、エジプト、ギリシャ、ローマ、イングランドといった地域がその舞台になった。高度な文明を一手に支配した単一の人種など存在しない。
ここからの章では歴史、生物学、身体計測学についてそれぞれ見ていこう。人種の概念によって人類の偉大な達成をすべて説明しようなどと決して考えないこと。人種は形態的な測定結果に過ぎず、人類の歴史はもっとずっと複雑であるし、文化は遺伝子のように器械的に伝達されるものでもない。